0078
Side:橘八重
「…………またこの景色か」
これで3回目? もしくは4回目かもしれないが、またもやエルトアリアさんのベッドの天蓋だ。
何かあったのかもしれないが、俺は………ってそうだ! あの訳の分からない記憶!!
あれの所為でいきなり頭痛と吐き気が凄くて意識が遠のきそうになったんだ。
それで慌てて外に帰還転移を………したんだっけ。
おそらくそれでエルトアリアさんが駆け付け、そして俺を運んでくれたんだろう。
本当にありがたいが、あの人の記憶………は、あるな。
もう頭痛と吐き気は無いが、いったいどれぐらい寝てたんだろう? あまり迷惑をかけても駄目だから起きよう。
「やっと起きましたか? 随分と寝ていましたね?」
「へっ? うわっ!!!」
俺はいきなり飛びのいてしまったけど、隣ではエルトアリアさんが寝ていた。
それに気づかなかったからビックリして飛びのいたんだけど、エルトアリアさんは急に機嫌が悪くなったようだ。
「その反応はいったいなんですか?」
「すみません、いきなりだったんで驚いたんですよ。
今まで起きた時にエルトアリアさんが横に居る事なんて無かったんで」
「ああ、そういう事ですか。
今は夜ですからね、私がベッドに居るのも当然です。
それよりも、こんな時間に起きてしまった以上は向こうに戻りますか?
戻るなら送りますけど……」
「いえ、考えたい事もあるのでいいです。
どれぐらい寝ていたかは知りませんけど、座って起きています」
そう言ってベッドを出ようとすると腕を掴まれて引きずり込まれた。
力では勝てないんだけど、凄いパワーだったな。
「そもそも貴方は【共魂の契約印】の力を使えるようにならないといけないのですよ?
忘れたのですか?」
「あっ………そういえばそうでしたね。
となるとベッドに入っていた方がいいか。
確か近くに居ればいいんだったかな?」
「!」
俺は女王に言われた通りエルトアリアさんに近づき、そして魂を重ねるようなイメージを持つ。
何というか、魂というのがよく分からないが、とりあえず練習をするしかない。
そう思っていると手が当たったので手を握ってみた。
これぐらいなら問題ないはずだし、俺だって出来る事でもある。
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Side:エルトアリア
何を考えておるのだ、我は!!
これは手だぞ? そう、たかが手を繋いでいるだけだ!
下級のサキュバスどころか、生まれたてのヒヨッ子ですら何とも思わんような事でしかない。
何とも思わん事なのだ!!
ええい! 五月蠅いわ! 少し黙れ!!
どうしてこうも落ち着かんのだ! どうしてこんなにも鼓動が五月蠅いのだ!
我は生娘ではないのだぞ、最高位悪魔の一柱にして最強の悪魔と呼ばれる者。
それが、なぜ、こんな………!!
あ、温かさが流れ込んでくるうえに、た、魂の繋がりが僅かだが感じられる。
しかしだな、たかがその程度であろう!
しっかりしろ、エルトアリア! お前は最高位悪魔であろうが!!
ギュッ
ひあっ!? つ、強く握ってきおった!
何という事をするのだ、手から鼓動が聞こえてきそうではないか。
それに暑い、なんだか無性に暑くなってきたぞ?
我が興奮しているのか? そんなバカな!!
散々敵対してきた者を残酷に殺し、素材として活用してきた我がこんな事で狼狽えるなど……
ピタッ
ふわぁっ!? く、くっついてきただとぅ?
何と言う事をするのだ、我を殺す気か!!
お、おのれ~……いつからこのような攻撃をするようになったのだ。
それに魂が近いのだ、明らかに先程から急速に魂が近くなってきておる。
このままでは我がマズい! 耐えられぬかもしれぬ!!
ああっ!? 本当にマズい!!
これ以上に魂が接近すれば、我は、我は………!!!
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Side:橘八重
なんかエルトアリアさんがゴソゴソするので集中しづらいが、なんとかそれでも近づく事が出来た気がする。
俺が<記憶の宝珠>で見た人の記憶と経験、その中には魂に関する事があったのか、ふとした拍子に噛み合った。
その御蔭で一気に上達した気がするんだよね。
感覚的にも相当近づいているのが分かるし、もう少しで重ねられるような気がする。
そうすれば何かが分かるようになるはずだ。
女王陛下は【共魂の契約印】でお互いに齟齬なく分かり合えると言っていた。
だから何かしら分かると思うんだけど……
そう思って何度も重ねてみようとするものの、重なったかどうか分からない。
何というかスカされてる感じがするような気がする。
そんな事を感じた俺は、目を開けてエルトアリアさんを見た。
すると、どうやら目を閉じて寝ているようなので、おそらくはその所為でスカされているように感じたんだと思う。
相手の意識が無いから綺麗に重ならない。
おそらくだけど、それが正しいんだと思う。
俺は仕方なく魂を重ねるのを止め、代わりに記憶の精査を始めた。
あの記憶がいったい誰の物なのかは既に分かってる。
あれはピグニャブ第七星系の技師兼指揮官の記憶だ。
おそらくだけど地球の軍に当てはめたら少佐か中佐あたりだと思う。
日本だと三佐か二佐だ。
そんな人が前線に出て指揮をとってたわけだけど………既に戦いは絶望的で、勝てる要素は無かった。
にも関わらず、いきなり異界に呑み込まれてしまったわけだ。
その後がどうなったか分からないけど、おそらくあの時の艦隊と宇宙怪獣みたいなのは全て呑み込まれたんだと思う。
虚界も中心に突然出来て、今ではかなりの部分を浸食している。
それが異界なんだけど………なぜ虚界に突如できたんだろう?
たとえば記憶の星系に出来たのはまだ分かる。
放っておくと繁殖し続ける宇宙怪獣を全て呑み込む為だと考えれば納得できるんだ。
そういう宇宙の自浄作用? 的なものが働いたとしたらだけどね。
しかし虚界に出来たのは何故なんだろう?
虚界の中心にはヤバいものでもあったんだろうか?
それとも何かの危険な力が渦巻いていたのかもしれない。
もしくは何かの力に引き寄せられて異界と繋がるとかかも……。
結局は想像だけで不明だけど、あの記憶の人は相当に高度な文明の人だと思う。
人っていうか、腕が四本で上半身がヒョロ長く、下半身は逆に太いという変わった姿をしていた。
更に足の先は猛禽類みたいな形だったし、色々と人間とは違ってたのは、ある意味で当然なのかな?
宇宙人が地球人と同じ見た目をしているのも不自然だし、普通はあれぐらい変わって当たり前だろう。
その割には知識としては普通のものも多い。
名称が違うだけで、そっくりな物も多数あった。
そういう意味では分かりやすいし認識しやすかったとも言えるかな?
それと戦い方も色々とあったし、一番は彼らの種族が魂の操作に長けていた事だ。
だからこそ俺も途中からスムーズに重ねられるようになったんだしね。
色々な意味でも自分で<記憶の宝珠>を使って良かったとは思う。
反省する点があるなら、戻って来てから使えば良かったというぐらいか。
まさかあんなに強い頭痛と吐き気に見舞われるとは思ってもみなかったし、あれは完全に予想外だった。
流石に今度からはしないけど、本当に無事で良かったよ。
もし狼男が出てきてたら、間違いなく死んでいた。
それだけは間違いない。
ちょっと怖くなってきたから記憶の精査を再び始めよう。
その途中で寝られるなら寝てしまうか。
今は夜中だって言ってたし、戻る事は当分無理だろうからな。
それに朝になったら眠たくなってるとか、色々と駄目な人間になりそうだ。
流石に昼夜逆転の生活はしたくない。
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