0077
Side:橘八重
それなりに残っている狼男の相手をしている。
盾で吹き飛ばし、小角杖で水平に薙ぐ。
そうする事で横に吹き飛ばしているんだけど、これが一番楽で敵を巻き込みやすい。
狼男の手足は長いけど、真っ直ぐには使えないのか思ったほどの長さを感じない。
おかげで小角杖でも対処出来ている。
そして対処できるなら、最後には必ず俺が勝つ。
何故なら一撃で相手は死んでいるので、時間が経てば経つほどに俺が有利になる。
そして既に残っている狼男は2体。
ドコッ!!
これで残りは1体だ。
そしてそいつも同じように攻めて来る事しかしない。
最後の1体にSDを100篭めたシールドバッシュをお見舞いし、俺の勝利となった。
「何度も思うけど、本当に装備の良さで勝ってるだけだな。
勝ちは勝ちだけど、果たしてコレを勝ちと言っていいのやら……」
そんな事を口にしながら<記憶の宝珠>に近づくと、「ダッダッダッダッ!!」と凄い音が聞こえて来た。
どうやらまだ終わってはいないらしい。
「そうだよなー。
ヴァンパイアが出てきて無いんだから、アレで終わりのはずが無いか」
案の定ヴァンパイアが現れて殴りかかってきたので、SD100のシールドバッシュとSD100の小角杖で頭を潰してやった。
それでヴァンパイアは消えて、広場の入り口が元に戻ったようだ。
とんでもなく厄介だったけど、やっと手に入ったか。
俺は小角杖とスパイクシールドを地面に置き<記憶の宝珠>を手に取ると、流れ込んでくるものを受け入れた。
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Side:???
何という事だ。
ここまでの事になるとは思ってもみなかった。
我ら第38宇宙軍がここまで追い込まれるとはな。
アレはいったい何だというのだ? いったいどういう存在なのだ?
中央深光法演算装置ですらアレを解析する事はできぬと聞くし、となると我らが星系は終わりかもしれぬな。
アレらに侵略され、やがてはアレらの住処に変えられてしまうのであろう。
悔しいが、アレらは生物のようなものでもある。
蟻が爆発的に増えるかの如く繁殖するのだ。
既に我が国の星のどれだけが奴らの繁殖地に変えられたかを考えれば………もはや滅亡の未来しか見えぬな。
それに………
「私の中で私を視ているモノよ、そなたが何者かは知らぬ。
しかし私が伝えられるのは、そなたしかおらぬであろう。
願わくは、あの者どもを駆逐してくれ。
私の知識と経験の全てをくれてやる」
私の中に在る者よ、突然の来訪者よ。
アレは存在を許してはならぬ。
許してはなら、なんだアレは!?
「アレはなんだ!? 恐ろしい速さで何かの空間が侵食してくる。
いったい何がこ!?」
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Side:橘八重
「ぶはっ!? はー……はー……」
おそらくはまた死んだんだと思うけど、さっきの最後の光景………。
あの迫って来てたのって、おそらくだけど異界だよな?
異界の入り口と同じ、見ていると狂ってしまいそうなおかしな空間だった。
そしてそれが気持ちの悪い生き物と船を呑み込んでいっていた。
「あの船って間違いなく宇宙船だよな?
しかも戦ってた相手は宇宙怪獣みたいな奴らだったぞ?
星系とか言ってたし、もしかしたら遠い宇宙にはあんな星系があったんだろうか?」
とはいえ最後には異界のようなのに呑み込まれて滅んだっぽいんだけど、だからここに記憶の宝珠として残ったんだろうか?
それに、あの人は俺が内側から視ていたのを知ってたというか感知していた。
そしてあの感覚もそうだけど、それ以外の様々な知識なども俺の中に新たに出て来た。
その所為で急に凄まじい頭痛と吐き気が止まらなくなり、俺はその場に蹲って耐えるしか出来ない。
これは、色々とマズい。
「ぐぅ……はや、早く、帰還転移を……」
俺は落ちていた小角杖とスパイクシールドを掴むと、AR表示から必死に帰還転移を探し出す。
なんとか1000SDを使用して帰還転移を開始する事が出来たものの、外に出るのを確認できぬままブラックアウト。
意識を完全に失った。
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Side:エルトアリア
「??? ……これは意識がありませんね? ルヲンヌ」
「えっ、ちょ!?」
女王が何かを言いかけましたが、私にとってはどうでもいいこと。
しかしまた彼は何かに巻き込まれたのか、意識を失っているようです。
今度はどのような人間が襲って来たというのか……
私が彼の下に転移すると、彼は異界の入り口で倒れていました。
把握は出来ていましたが、本当に気絶しているだけのようです。
私は彼が落としたであろう小角杖と盾を持ち、さっさと屋敷の私の部屋へと転移。
そして寝かせます。
「起きてから聞くしかありませんが、いったい何があったのやら……」
私が首を捻っていると、女王が私の寝室に転移してきましたね。
流石にこの邸の転移妨害でも女王は防げませんか。
「厄介な防御してるわねえ。
ここに直接転移しようとするの、物凄く大変なんだけど?
なんでここまで厳しくしてるのよ」
「それは余計な愚か者どもが気軽に来るのを防ぐ為ですよ。
私以外の最高位悪魔など面倒臭いだけでしょう」
「それは私の事も含めて言ってるの? うん?」
「面倒ですね、いちいち突っかかって来なくていいです。
それよりも彼が何故こうなったかは、起きてから聞くしかないでしょう。
命の危険は無いようですし、このまま寝かせておけば目を覚ますでしょうし」
「何かに巻き込まれたのか、何かから攻撃を受けたのか。
とはいえ外傷が無さそうなのが気になるところかしら?
精神攻撃を受けた可能性も否定できないわね。
どこまで深く潜ったのかは分からないけど、なんとか自力で帰って来れたみたいで良かったわ」
そこは確かにそうですね。
意識は無いものの帰還転移は使用できている。
となると気絶する前に使用する余裕があったという事になります。
無ければそもそも戻ってくる事も出来ませんし、中で殺されていたでしょう。
「なによ急に?
いきなり怒りと殺意を撒き散らすの止めてくれる? 迷惑だから」
「それは申し訳ありませんね。
とはいえ彼が中で殺されていた可能性を考えると、ついつい……」
「貴女もアレねー。
あんまり言っていい事じゃないとは思うけど、たかが人間に大してそこまでなのは危険よ?
相手は人間だという事を認識しなさい」
「彼の頭を撫でながら言う貴女には、一切の説得力がありませんよ?」
「はっ!? ………え? どういうこと?」
どうやら本人は意識していなかったようですね。
そういう意味では失敗だったかもしれません。
女王は私よりも経験豊富ですから問題ないと思っていましたが、どうやら私よりも耐性が低いのかも……
「それが【精魂の雫】の力ですよ。
伝説にもある通り、正しく“サキュバスキラー”な訳です。
一度彼の精を受けるとこうなるという事ですが、私よりも耐性が低いのは、私よりも経験豊富だからですかね?」
「つまり生娘のサキュバスの方が効きが薄い?
私みたいのだと意識も無いままに操られる?」
「操られるというより、彼を保護するという方向に向くのでは?
先程の貴女には間違いのない慈愛がありましたし」
「お、恐ろしいわね………流石は伝説の存在……」
サキュバスキラーと言われるだけはあるという事でしょうが、これで女王の独占欲は働いていないようなのですよね。
その辺りも【精魂の雫】の精が制御している可能性が考えられますが……そうなると【精魂の雫】とはいったい何なのでしょう?
ちょっと気になりますし、それも調べてみましょうか。




