0076
Side:橘八重
座って休むなんて事は出来ないが、立ったまま周囲を警戒しつつ休憩する。
さっきのヴァンパイアはシャレにならなかった。
正直に言ってSDを100も篭めたから勝ったに過ぎない。
それとSDを篭める方法を知っていたのと、それだけ篭めても問題の無い武具。
それらが上手く噛み合ったから勝っただけだ。
「それにしても厳しかったなぁ。冗談じゃなくヴァンパイアは強すぎる。
トップ層の人達はどうやってあんなのに勝ってるんだろう?
だいたい…………うえっ!? SD4000?
正確には分からないけど、SDで4000ぐらい手に入ってるぞ!」
それぐらい相手がバケモノだったのがよく分かる。
勝てて良かったと思うしかないな。
そもそもギリギリの反応しか出来ないような相手なんだ。
慣れればもう少し何とかなるかもしれないけど、あんな速く動く相手は初めてだし、あれだけのパワーで殴られてよく盾が潰れなかったよ。
本当に助かったとしか言えない。
マジでエルトアリアさんから融通してもらわなかったら死んでたな。
………いや、この装備が無ければこんなに早く奥まで来ないのか。
そんな事を考えつつ、俺は先程ヴァンパイアに血を吸われていた連中に近づく。
すると案の定……
「「「「うー………あー………」」」」
まるでゾンビのようになっている3人が居た。
ヴァンパイアに血を奪われたんだから当然だと思うけど、血を吸われてヴァンパイアになる作品もあれば、ゾンビみたいになる作品もあるんだよな。
どっちが本当なんだろうと思うけど、どっちの作品も創作か。
中には儀式をしないと仲間が増えない、なんていう作品もあるしな。
どれが本当なのかと首を傾げるが、そもそもヴァンパイア自体が創作と言えば終わる話かとも思い直す。
ゴスッ! ドゴッ! ガスッ!
俺はさっさとゾンビの頭を3つ潰して倒しておいた。
だって既にゾンビになってるし、治す方法なんて俺は知らない。
ついでにゾンビになっても俺を襲おうとしてきたんだ。
そりゃ倒すに決まってる。
「いや、そもそもゾンビになる前から盗賊なんだし、最初から殺しても文句を言われる筋合いは無いんだよ。
結局さっきの奴らがどういう方法で犯罪をしていたかは分からないままだけど、あの女性が「こいつも」なんていう言い方をしてたからなぁ」
間違いなく他の人達に対しても犯罪を行っていただろう。
ついでに悪魔の人達が調べれば確実に何をしていたかは分かるんだ。
どこかで死んでたら不明だけど、生きて日本に戻った時点で明るみに出る。
そういう意味では、あの女性の動画だけで逮捕案件だな。
警察的に言えば「自らゲロってる」訳だし、自分から言っている以上は逮捕されるだろう。
問題はあの女性が日本に戻ったかだけど………戻ってる可能性は高いと思う。
なんか一番仲間を置いて自分だけ助かろうとする感じだったし、男性陣を仲間とも思っていない感じだった。
犯罪仲間というか、汚い事を男達にやらせる為に一緒に居る? そんな風に見えたんだよ。
だってわざわざ「警察にバラす」なんていう言い方をしてたぐらいだ。
自分だけは大した被害を受けない、そう考えていないとあんな事は言わないだろう。
となると自分の手は汚していなかった可能性が高い。
「それにしても盗賊もそうだけど、碌でもない連中が異界探索者になってるんだなぁ。
異界探索者になる前が厳しくて、なった後が甘いのか?
それとも素人を探索者にして、そういう犯罪をさせている組織がある?」
闇ブローカーというか、最初から借金塗れとかそういう人間を集めて探索者にする。
最初は綺麗な言葉だけで近寄り金を貸し、そして探索者になったら法外か限度いっぱいの利子を上乗せしてくるとか?
そんな利子は払えないので犯罪をするしかなくなる……。
「その割には、さっきの連中は喜んで犯罪をしていたみたいな感じがするし、なんかザルな感じがする。
もしかしたら警察のデータベースを照合して、犯罪歴が有るかどうかのチェックしかしてない?
悪魔の人達がきちんと調べてるなら、おかしなのは入り込めないはずだ」
にも関わらず入り込んでるって事は、そこまで詳しい事は調べていない。
もしくは現場が適当な事をしてる。
もしくは合法的に虚界に連れて行って食い物にする為にワザと……
でもそうなると何度も犯罪を犯している奴らを連れて行っていないのがおかしい。
あんな奴らが野放しになっている時点で変だ。
SCCには色欲の悪魔の人達以外にも居た。
だったらその人達がワザとスルーさせてる?
エルトアリアさんは悪魔同士の抗争は人間を代理にしてあると言っていた。
となると、こういう奴らを野放しにするのもその一環か?
だとすれば、今後も同じ事があると見做すべきなんだけど……本当はどうかが俺には分からない。
「っと、そろそろ体力も戻ったし、歩き出そう。
このまま居続けても後は疲れるだけだ」
俺は口に出してから気持ちを切り替えて歩き出し、いつ戦闘になってもいいように警戒しながら進んで行く。
帰った方がいいという自分と、せっかくここまで来たんだからという自分が鬩ぎ合っている状態だ。
もう少し先が見たいという気持ちがどうしても湧いてきて、なんだか帰るという感情が無くなっていく。
そんな感じだろうか?
どのみち次の地形に行く気は無いからここで帰るのだし、それならもうちょっと見て行こうという思いが強い。
実際には良い事じゃないんだけど、どうしても………っていうか、また現れた。
ここは狼男が主体で、ヴァンパイアは特別というかボスなんだろうな。
その狼男ですら790SDもくれるんだけどさ。
「グルゥァ!!」
ガン! ……ドゴッ!!
SD3ぐらいのシールドバッシュで迎え撃ち、後ろに倒れさせると小角杖で頭をカチ割る。
そちらもSD3で余裕だった。
ヴァンパイアはともかく、狼男はこの程度で十分らしい。
SPが回復するまではSDで戦おう。
気持ちを新たにして前に進むと、Y字になった道が続いていた。
薄い墨は左に流れているので、俺は右へと行く事にする。
何かある可能性があるのは右だし、俺は次の地形に行く気が無い。
狼男を4体ほど倒しながら進むと、その先には広場があるだけだった。
そしてその中央には墨の流れが渦を巻くようにして集まっている地点がある。
というかハッキリ見えているが、あれは<記憶の宝珠>で間違いない。
最初に手に入れた<記憶の宝珠>がどうだったかは分からないが、あそこにあるのは薄い墨が渦を巻くようにして集まっている物だ。
もしかしたら相当の物の可能性がある。
正直な気持ちで言うと欲しいんだけど……
俺は葛藤し悩んだ挙句、広場の中へと踏み出した。
すると途端に後ろが塞がれ出られなくなり、狼男が複数こちらに近づいてくる
「やっぱりこうなるのか。
でも、こんな所にある<記憶の宝珠>だ。
出来るならば欲しい、そして使いたい」
俺は盾を構えて半身になって待ち、向かって来た狼男に対してSD100のシールドバッシュを行った。
ドォォン!!
派手な音を出して吹っ飛び、後ろを巻き込む狼男。
その左から迫ってきた狼男にSD100を込めた小角杖で突く。
ズドォッ!!
狼男の胸を貫通してしまったが、無事に一撃で倒せたようだ。
とはいえ突きは使わない方がいいな。
抜けたとはいえ、次も綺麗に抜ける保証が無い。
突きを放った後ろから狼男が迫って来ていたが、そいつはSDを100篭めたシールドバッシュで弾き飛ばした。
どれだけ狼男が居るかは知らないが、SDを100も篭めれば一撃で倒せるのは知っている。
なので盾で吹き飛ばしたヤツも死んでいるが、巻き込まれただけのヤツは死んだかどうか分からない。
起き上がってくるところを見るに、死んでいるとは思えないな。
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