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0074




 Side:橘八重



 俺は地面の色が変わっている場所から先へと進む。

 景色が一変したので新たな地形となったが、そこは砂漠だった。


 マジかよと思うが、薄い墨の流れている方向に進むしかない。

 しかも出来るだけ早く進まないと、暑さで動けなくなる恐れもある。


 一気に進むべく足を踏み出して歩いていく俺ではあるが、そんな俺を嘲笑(あざわら)うかの如くモンスターが現れた。

 砂漠という地形から蠍(さそり)が現れるのかと思っていた俺を裏切るかの如く、前の方から緑色が走ってくる。


 「サボテンが走ってくるとか無いわー。

 とあるRPGを思い出すから止めてほしいが、あいつ針を飛ばしたりしてこないよな?」


 針千本だけでも十分に人間なら死ぬ。

 それだけの威力はあると思うんだが、ここは異界だ。

 魔力で防げば助かるかもしれない。


 それなりの速さで走ってくるサボテンに対し、俺は盾を前に出して半身に構える。

 そんな俺に大してサボテンは臆する事なく走り、そして跳んで蹴りをかましてきた。


 ドォン!


 「ぐぅ……! ……それにしても何でライ、うぉぁっ!? あぶねぇっ!!」


 ドゴッ!


 サボテンは俺の盾を蹴った後に着地し、即座に抱き着きに来た。

 まさかの攻撃についつい反射的に小角杖で殴ったが、それが正解だったようだ。

 SPは込めてなかったが小角杖の威力が高いので、結果としてそれなりのダメージにはなったらしい。

 サボテンの方が軽快で蠍(さそり)より厄介だと思える。


 俺は起き上がってきたサボテンに対して盾を構えるが、再びサボテンは走りだして跳んだ。

 こいつが何でライダ〇キックをしてくるのかは知らないが、いちいち威力が高いのが腹立たしいな。

 俺はまだ防げてるからいいけど、これは武具が良いからだけでしかない。

 なので本来ならこのサボテンは相当の脅威なはずだ。


 ガァン!!


 「ぐ………! よし、防ぎ切った。

 そして、喰らえぇぇぇぇ!!」


 俺は抱き着きにきたサボテンに対し、小角杖に1SPを込めてブン殴る。

 それだけでブッ飛んだサボテンは砂地に倒れた後、起き上がらずに消えて行った。

 AR表示を確認するとSDが140増えていたので、今までのモンスターの中でも多いのが分かる。


 「SD140は凄いけど、毎回必ず一撃は先制されるのがキツイな。

 とはいえ、あのキックを無理に避けると、その後の抱き着きを多分喰らうと思う。

 あんな針だらけの体に抱き着かれたら………駄目だ。

 あのキックは防ぐしかない」


 あのキックと針塗れの抱き着き、どっちがマシかと言えばキックを防ぐ方がマシだ。

 結構な威力をしているキックだけど、それでも針が大量に突き刺さる事を考えたら遥かにマシ。

 誰もが同じ判定を下すだろう。

 針の方がマシなんて言うヤツは居ない。


 とにかくここのサボテンの倒し方を考えつつ、それでも前提として針を受けない方法を考えていると、他の異界探索者を発見。

 砂丘の頂点だから遠くまで見通せて分かりやすいのだが、最悪の連中が居る事が分かってしまった。

 アレは前回にも会った連中だ。


 俺は今すぐ回れ右して逃げようと思ったが、幸いにも連中はサボテン2体に囲まれている。

 今の内に逃走させてもらおう。


 「中林とかいう連中を発見。

 前回の事でこちらを逆怨みしているかもしれないので離れる。

 俺としては前回のアレなんて完全に盗賊としか思えないが、何をどういう風に逆怨みしてくるか分からないので、関わりたくないところ。

 という事で無視だ無視」


 俺は一応の言い訳をしておき、奴らから見えなくなる位置まで砂丘を下った後、薄い墨の流れてる方向へと進んで行く。

 連中がどうなろうが知った事じゃないし、正直に言って俺からすれば盗賊の仲間でしかない。


 「そもそも仲間の女性は無事だったんだから、あの女性が助ければ済んだ事なんだよな。

 何で俺が助けるのが当たり前、みたいな態度だったんだ?

 今だに謎なんだけど、アレって誰か説明できる人は居るんだろうか?」


 俺は言い訳のように喋っているが、実際に謎なので口から出た事でもある。

 仲間なら最後まで助けろよと思うし、あの当時の男性陣は無理でも女性は一緒に居てやれよと思う。

 何故かあっさりと脱出したし、あの時初めて出会って、しかも助けてやった俺に丸投げだ。

 意味が分からない。


 「いや、本当に分からないんだよな。

 何で俺が丸投げされなきゃならないのか、そして何故あれ以上は助ける義理が無かった俺が助けなきゃいけないのか?

 動画見て好き放題書き込んでるヤツがいたけど、助けるべきって言ってたヤツがここに来て助けりゃいいとしか思えない。

 マジでやってほしい」


 俺はそうやって動画に残るように言いつつ歩いていく。

 俺的には言い訳じゃなくて自分の主張なんだけど、見ている人の中には言い訳と受け取る人もいるだろう。

 だからこそ疑問点はちゃんと声に出して入れておく。


 「実際、自分は安全な所に居て石を投げて来るヤツって、世の中には多く居る。

 テレビのコメンテーターとかいう奴らや、テレビ局の解説員とかいう奴らもそうだけど、あいつら安全な所から喚いてるだけなんだよ。

 危険な所の現実を内包していないっていう、薄っぺらい話しかしてないから信用なんて出来ない。

 動画のコメントの奴らもそれと同じだって、何で分からないんだろ?」


 俺としては本当にそこが分からない。

 異界探索者になって人助けすればいいのに、それもせずに安全な所から文句を言うだけ。

 そんな薄っぺらくて無価値な物に、いったい何の意味があるんだ?

 俺のクソ親もそうだが、そんな無価値な物の為に嘘や捏造までやるんだぜ? 本当に意味が分からない。


 「だからこそ悪魔の人達に殺されるのも当たり前だし、我が親ながら死んで清々した。

 その事で俺をイジメていた奴らだって、結局は安全な所から石を投げてる奴らと変わらない。

 いや、あいつらは俺をイジメる事で自分は正義だとしてたんだから、<正義警察>と何も変わらないんだよなー。

 本当のクソどもでしかない」


 思い出して腹を立てつつも、俺は黙々と次の地形へと歩いていく。

 すると突然大きな声が聞こえて来た。

 どうやら見つかったらしい。


 「おい、待て!! お前ウチの仲間を見殺しにしたヤツじゃねえか!!

 お前の所為で仲間が死んだんだぞ!!」


 「最低のクソが何をのうのうと生きてやがる!!

 今すぐここで腹かっ捌いて死ね!!」


 「てめえふざけてんじゃねえぞ!!

 さっさとここで死んで詫びろ!!!」


 「っていうかー、こいつもココで殺して奪えば良くない?

 迷惑料っつーか、慰謝料としてさー」


 「ああ、やっぱり貴方がたは盗賊だったんですね。

 そりゃ盗賊ならお仲間が殺されたら、それを理由に奪いに来るか。

 分かりやすい理由だ」


 俺がそう挑発すると、みるみる顔が真っ赤になっていく連中。

 実に分かりやすいが、ここから俺が逃走するかもという考えは無いんだろうか?

 この動画が世の中に出回ったら多分だけど終わりだぞ、この人達。

 それすら理解できないのか?


 「お前がオレ達の仲間を見殺しにしたのは事実だろうが!

 それにオレは奪うとかそんな事は言っていない。

 あいつが勝手に言っただけだ!!」


 「えっ? なに? アタシの所為だって言うの!?

 ……散々今まで奪ったり殺したりしてきて、自分だけ逃げようってさぁ。

 アタシの事舐めてんの? 全部警察にバラしてもいいんだけど?」


 そう女が言った途端、他の男達が騒ぎ始めた。

 どうやらこいつら本物の盗賊だったらしい。

 今までどうやってたかは知らないけど、それなりには罪を重ねてきてたみたいだな?


 「おい、ふざけんな! 今はコイツからむしり取る話だろうが!!

 関係ない話を始めんじゃねーよ!!」


 「そうだ! いちいちキレて余計な事を口走るんじゃねーよ!!

 テメーこそ、今すぐここで殺すぞ!!」


 「はぁ? アタシがこんな所で死ぬはず無いんですけどー。

 なに調子こいてんのコイツら、ウケるーww」


 「テメー、マジでふざけんなよ? 本当に今すぐここで殺すぞ。

 いや、テメーの家族含めて殺してやんぞ」


 「あははははは、堂々と人殺し宣言してるんですけどー!!

 マジウケるww」


 なんか仲間割れしてるみたいだから、今の内に逃げるか。

 俺には関係ないし、何より動画にしっかりと映ってるしな。

 後は逃走して映像を持って帰るだけだ。

 そうと決まれば……


リアクションありがとうございます

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