0038
Side:橘八重
エルトアリアさんから新しい武器と盾を貰ったんだが、小角杖の方はSD濃度124でスパイクシールドはSD濃度152だった。
前のステッキと円盾以上のSD濃度になっているが、それより何より拷問に使われていたというのが色々とアレ過ぎる。
流石に口には出さないが、少々でないほどに引いた。
ドン引きではないものの、自分でも思っている以上に引いていたみたいだ。
まあ、ホラー展開だと思えば引くのは当然だと自分でも思うけどね。
その手前がエロ方向だっただけに落差が思っている以上にキたみたいだ。
それはともかくオンボロアパートまで転移で送ってもらった俺は。
再び新宿歌舞伎町へ行き、そこから鳥居の波紋へと入った。
流石に異界の入り口前には悪魔の人達が居るので、その人達に見られたら女王に報告が行ってしまう。
なのでエリトアリアさんは俺を自宅に送ってくれたってわけ。
でもなー………歌舞伎町前での事は報告されているだろうし、あんまり意味が無い気がするんだよ。
あそこまでの騒ぎになった以上、報告が行かないはずが無いしさ。
それにエルトアリアさんが駆け付けてるんじゃ完全にアウトでしょ。
どう考えても報告が行ってるだろうし、目を付けられてると思う。
なので、その前提で居た方が良いんだろうというのは俺でも分かる。
分かるんだけど、相手はエルトアリアさんと同じで逃がしてくれない最高位悪魔なんだよなぁ。
ま、考えてないでさっさと異界に入ろう。
俺は何かを振り払うように、逃げ込むように異界に入ったのだが、目の前には池が見えている。
それも大きな池で、遠回りをしなくちゃいけないらしい。
流石に水場は何が起こるか分からないし危険だ。
なので近づく気は無い。
まだ最初の地形だからモンスターは弱いはずだけど、地形を舐める訳にはいかない。
水の中に引きずり込まれたら、それだけで死にかねないしな。
そういう事をするモンスターだと、弱くても侮れないんだ。
実際、探索者動画の中には水の中に引きずり込まれそうになっていたものもあって、そういう恐ろしさは既に学習済みでもある。
迂闊な事をすれば死にかねない場所で、危険な事をするほど俺はマヌケじゃない。
そう思いつつ池の外側を進んで行くと、さっそく池からモンスターが出て来た。
…………が、コイツどっかで見た事があるな?
っていうか、体が魚の癖に顔が人間じゃないか。
しかも髭の濃いむさいオッサン顔だ。
昔流行った人面魚なのか、それともシ〇マンとかいうゲームがモチーフなのかと言いたくなる。
実際には濃い髭のむさいオッサン顔の魚が空中を泳いでるんだけどさ。
ドンッ!!
「……………自分から体当たりに来て死ぬってなに?」
スパイク部分には当たらなかったけど、ぶつかった魚は地面に落ちてビクビクした後に消えて行った。
なんと言うかなモンスターにガックリ来つつ、俺は池の周りを更に進んで行く。
周囲を見るとどこまでも進んで行けそうだけど、行ったところで意味は無い。
これは講習で習うんだが、ここのように異界の中にはどこまでも進んで行けそうな地形というのがある。
しかし、実際にはどこまでも行ける訳ではなく、無限ループする仕様になっているんだ。
なので進んで行ってもあまり意味は無い。
悪魔の人達には馴染みが無かったらしいんだけど、日本人のそれもゲーマーには馴染みがあり過ぎる仕様だ。
だからこそ、すぐに無限ループだと特定したらしい。
中には一歩ずつ歩いて記録した猛者もいたほどで、やたらに真剣に検証している動画を見て俺は呆れた。
それは横に置いておくとして、だからこそ進んで行く意味は無いのが分かってる。
無限ループのギリギリを突く仕様の地形もあるらしいけど、最初にそんな地形が現れたりはしない。
そして俺には薄い墨の流れがマスクの御蔭で見えている。
このマスクって次へ進むのには便利だけど、何かが手に入れられる場合には損になるな。
そういう場所は分からないし。
「とりあえず先へと進んで行くか。
ここの地形には流石に何も無さそうだ」
そんな事を言いつつ薄い墨の流れについていき、入り口から見て対岸の辺りに地面の色が変わっている所を見つけた。
俺は迷う事なくそこへと進み、新たな地形へと足を踏み入れる。
そこは道の上? のような場所だった。
道とは言ってもアスファルトではなく土の道。
そのうえ車輪で出来た轍が幾本も見える。
そんな道が目の前に見えている。
周りは林みたいな場所で、真っ直ぐ前に道があるだけだ。
よく分からないなと思いつつ進んで行くと、突然女性の叫び声が聞こえた。
「キャーーーーーーッ!!!!」
俺はその声が聞こえた方向へと行かず、そのまま真っ直ぐ前に歩いていく。
実はコレ系の罠というのはあって、助けに行くとそれっぽい場面に出くわすのだが、全てが敵という状態に陥るんだ。
つまり襲われている側も襲っている側も敵ってこと。
まあ、異界の中で襲われている人が居るとおかしいしね。
仮に襲われるとしても、それは異界探索者だ。
そして異界探索者の場合は、救助を求める方法が決まっている。
それは大きな声で色々と口走る事だ。
正しくは場にそぐわない意味不明な言葉を叫ぶこと。
なぜこんな決まりになったのかと言うと、襲われている人を救助するのが罠だからだ。
だからこそ意味不明な事を言ってくるのは罠ではないという事になり、だからこそ場にそぐわない言葉が聞こえたら救助に向かうようにと言われている。
動画の中にはド〇ゴンボールの名場面を口走っていたヤツも居たので、そういう意味ではこの方法は日本に合っているのかもしれない。
ちなみに「お前はもう死んでいる」とか口走っていたヤツもいて、動画のコメント欄でも「大笑い」したと書き込まれていた。
なのでさっきの悲鳴なんかは絶対に罠であり、救助を呼ぶ声じゃないんだよね。
異界探索者なら誰もが知っている事であり、常識的な事だ。
「昨日の夕食の焼き魚、小骨が多くて食べにくかったのよーーー!!!」
「!?」
おい、マジか!? 本当に救助者だとは思わなかったぞ!!
っていうか、俺はまだ二つ目の地形なんだけどな。
なんでもう他の異界探索者と合流する場所まで進んでるんだよ。
明らかに奥に進む速度が早い。
一気に進んでるのは、やはり装備の所為か?
「大丈夫かーー?
今行くから、それまで持たせてくれーーーっ!!」
「早く来てーーー!
なにかすっごいヤバいのが居るからーーー!!!」
ヤバいのってなんだよ。
逆に行く気がなくなったんだけど?
そう思いながらも俺は走り、そして林の中へと突っ込んで行く。
っていうか、何で林の中なんかに入ってるんだ?
道の上なら危険な事にもなってないだろうに。
「早くーーーー!!」
俺は声の聞こえてくる方に走っていき、そして林の中にポッカリ開いたような場所を見つけた。
そこに居たのは男女5人と、複数のどう見てもヤバい存在だった。
「なんでブーメランパンツ一枚で腰をクネらせてるんだよ!!
どう考えてもおかしいだろうが!!」
「そんな事言ってないで早く助けてよ!!
コイツ攻撃をかわすのがメチャクチャ上手いの!!」
どうやら向こうは切羽詰まっているらしく、声に全く余裕が無い。
しかたなく俺は走っていき、ブーメランパンツで腰をクネらせているイケメンに体当たりをする。
当然スパイクシールドごと体当たりをするのだが、これは避けられないらしく直撃した。
「ごふん♪」
「………」
体当たりした後に止まったんだが、思わず回れ右して帰りたくなってきた。
なんなんだよ、コイツ。
色々な意味で相手をしたくねえ……
でも異界探索者の男女のうち、男3人は倒れたまま起き上がろうとしない。
なので俺は残っている女性2人に話しかける。
「とりあえず起き上がって戦ってくれ!
なんで3人の男性は倒れたままなんだ!?」
「そんな事知らないわよ!
そのヤバいのに組み付かれてから、倒れて動かないの!!」
「毒か何かなのか知らないが、厄介な……」
俺は小角杖を構えながら近づいていく。
小角杖は先の方3分の1にトゲが付いている、長さが1メートル20センチほどの杖だ。
なので片手でも振り回せるし、使い勝手は割といい。
戦いでない時は、本当に地面を突いて歩いている。
俺はその小角杖を構え、ジリジリとヤバいヤツに近づいていった。
リアクションありがとうございます




