↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/189

0003




 Side:橘八重



 異界にようやく入ったが、見た目は洞窟っぽい場所だった。

 薄ボンヤリとしているが、十分見える程度の光で照らされている。

 なんか本当にゲームみたいだな? 親切に照らしてくれてるとは。


 異界に入ると様々な見た目の場所に飛ばされる。

 あくまでも見た目であって、異界の本質は、あのねじ曲がって歪んでいる空間ならしい。

 単に入ってきた者が認識しやすい地形に変化するんだそうだ。

 その割には、その地形はランダムに決まるそうだけど。


 それでも時空間が歪んでいるらしく、後ろに歩いても戻れない。

 戻るにはSCSにSDを補給して空間を強制的に転移するしかないそうだ。

 ただしどこからでも帰る事は可能で、帰還は一瞬で終わる。


 ならその方法を使って中心に飛べばと思うだろうが、出る場所は空間座標が確定しているから出られるそうで、逆に入るのは空間座標が安定していない場所となる。

 異界の中とはそういう場所なので、言うなれば異界の中に転移するのは、混沌に身を委(ゆだ)ねるのと同じらしい。


 どの時空間に吹き飛ばされるか分からず、そんな危険な事は出来ないそうだ。

 やれば一瞬で塵になる可能性すらあるので、悪魔でさえも怖くて出来ないとイージェルさんも言っていた。

 自殺するのに等しいらしく、そんなバカは居ないとのこと。


 まあ、それはそうだろうなと思いつつ、俺は日本で買ってきた金属バットと盾を手に歩いていく。

 持っているのは右手が金属バット、左手はポリカーボネートの盾だ。

 確かこういうのってライオットシールドって言うんだったかな?

 初心者はコレでいいって教わった。


 ちなみにだけど、異界のモンスターは物理攻撃じゃ倒せない。

 あくまでも武器はリーチの関係上持っているだけだ。

 異界のモンスターを倒せる武器は一つしかなく、それこそがSP(ソウルパワー)と呼ばれるものになる。


 それを武器に廻(めぐ)らせて攻撃する事で、初めてモンスターにダメージを与えられるんだ。

 これ、自力で習得しなくちゃいけなくて、物凄く苦労した。

 理由は気合だからであり、それ以外の説明のしようが無い。


 理屈とか理論とかなくて、気合と根性で出すものなんだよ。

 頭の悪い少年向けのスポ根漫画みたいな感じ。

 そう言えば分かるだろう。


 御蔭で意味不明かつ感覚的な事だけなので、ひたすら必死にSP(ソウルパワー)が使えるようになるまで練習した。

 ちなみに、この攻撃であれば悪魔を傷つける事も可能だ。

 ただし向こうは数百年も当たり前に使ってきて、非常に高い戦闘技術を持っている。

 つまり人間如きじゃ勝てませんってわけだ。


 そんな事をして殺された人も一人や二人じゃない。

 そもそも悪魔の支配って言ったところで、人間の支配よりもマシなぐらいなんだけどな。

 悪魔の人達って遊んでる事も多いけど、なぜか不正とかはしないし。

 そこら辺を考えても人間より遥かにマシだろう。


 「おっと、初めてのモンスターだ。

 下らない事を考えている場合じゃないな」


 俺は目の前に出て来たモンスター。

 針金で出来たような体を持つ人型に対峙する。

 コイツは針金人形とかいう、まんまな名前で呼ばれているヤツだ。

 針金っぽい物で体が出来ているが、それを伸ばして突き刺してきたり、鞭のように叩きつけて来る。


 身長は80センチぐらいだが、決して侮っていい相手じゃない。

 異界探索者の3割は、初めての探索で死ぬって言われてる。

 その全てがおそらく慎重に戦わなかった結果だとも言われているので、俺はバカ達と同じ末路を辿(たど)る気は無い。


 講習で受けた戦い方の基本は……


 ガンッ!!


 敵の攻撃を盾で受けてから、反撃!!


 ドゴッ!!


 よし、当たった。

 次はどっちだ? 突くのか叩くのか………叩きだ。


 バンッ!


 そら、受けろ!!


 ドゴッ!!


 二発目のバットを喰らった針金人形は、崩れ落ちるように倒れて消えた。

 すると俺の視界の右上端に<SD12>と表記される。

 さっきまでゼロだったから、針金人形一体で12SD(ソウルダスト)を入手できたようだ。


 これも体に情報化端末を入れる理由の一つで、AR(拡張現実)を使って今現在の様々な情報を取得、表示が可能になる。

 出てくるモンスターの情報も表記されるので、戦う為の情報は与えられるんだ。


 とはいえイージェルさんいわく、その情報を使い熟せるか否かは本人によるらしい。

 幾ら情報が表示されても、それを使えない者は死ぬだけなんだそうだ。

 ようするにマヌケから死んでいくって事だな。

 当たり前だけどさ。


 俺は深呼吸して落ち着き、先へと進む。

 まるでダンジョンゲームだと言ったヤツが居たらしいけど、そんなものじゃない。

 自分の命が懸かってるんだと、改めて分かる。

 さっきの敵の攻撃の重さと殺意は本物だ。

 間違いなくこっちを殺しに来てた。


 これをゲームだと思えるヤツは、頭のネジが完全にブッ飛んでると思う。

 俺は慎重に行くぐらいで丁度いいと思い、改めてゆっくりと進んで行く。

 帰還の為のSDが溜まるまで帰る事も出来ない。

 強い人達なら楽勝なんだろうけど、俺みたいな初心者じゃ大変だ。


 ちなみに一律で1000SD掛かるそうなので、どれだけ針金人形を倒せばいいのやら。

 そう思うけど頑張るしかないな。

 何度も何度も異界に繰り返し突入していると、人間の体にも変化が生まれるそうだ。

 それぞれの人によって変わるらしいけど、全員が確実に強くなると聞いている。


 おまけに肉体が変化した人も居るんだ。

 狼男みたいになった人もいれば、腕が一本増えたという人も居る。

 あるいは変質しすぎて小さくなった人もだ。

 ちなみに小さくなった人は羽も生えて、見た目がフェアリーみたいになっていた。

 動画で見たけど、身長100センチのフェアリーは割とデカいなという印象しかない。


 他にもエルフみたいな見た目になった人とか、リザードマンみたいな見た目になった人もいる。

 誰がどういう姿になるかは分からないらしい。

 俺も通っていたら、そのうちに変化するんだと思う。

 そうして強くならないと儲からないし、それまで死なないように頑張らないとな。


 「おっと、まさかの針金人形二体か。

 こういう時に悪魔の人達のように【魔法】が使えればいいんだけど、俺達人間にはSDを使う【疑似魔法】しか無理だからなぁ」


  ガンッ! ドゴッ!


 「くそ、交互に攻撃してきやがって。

 御蔭で反撃する隙が無いじゃないか。

 仕方ないな」


 俺は再び交互に襲ってきた針金人形の攻撃を防ぎ、二度目に攻撃してきた針金人形に盾ごと体当たりを繰り出す。

 俗に言うシールドバッシュだが、こうやって敵を分断しないと勝ち目が無い。

 俺は左の針金人形の突きを防ぎ、そして反撃で殴りつける。


 ドゴッ!!


 すると右の針金人形が立ち、再び交互に攻撃をしてきた。

 それが二体の有利を使う方法だけど、同じ攻撃ってのは流石に人間を舐めすぎだろ。


 俺は再びシールドバッシュで右を転倒させ、左への反撃を行って倒す。

 その後は一対一なので反撃であっさりと勝利した。

 今持っているSDは31と出ているので、どうやら弱い個体が混ざっていたみたいだ。

 とはいえ俺的にはほとんど変わらなかった気がするんだけどな?


 なんだか強さと報酬が合ってない気がする。

 SPをもっと込めて殴れば一撃で勝てるかもしれないけど、SPが無くなると戦う事も出来なくなる。

 休憩していれば回復するけど、安全に休憩できる場所なんて異界のどこにもない。


 なので俺としては休憩無しで戦い続けられる形が望ましい。

 金属バットを振るにも体力は使うから、どのみちどこかで休憩するしかないんだけど、なるべくなら回数を減らしたい。

 虚界や異界にいる間は物質としての自分が希薄になるから疲れにくいし、生理現象もほぼ起きなくなる。


 とはいえ起きない訳じゃないので注意は必要だ。

 糞を漏らしながらでも戦うしかないのはアレだけど、それでも命が懸かってるんだから仕方ない。

 中にはその動画を出されて異界探索を止めた女性も居る。

 俺もそうならないように注意しないと。


 動画はなぁ……無理矢理に提出っていうか、異界に来た際に自動で録画されてる。

 そして何も言わないままに、日本に戻ったら引っこ抜かれるんだ。

 なので渡さないとか、ここは切ってほしいとか成立しない。

 だって悪魔達の娯楽でもあるから。

 そういうところは悪魔なんだよ、あの人達。


 悪魔が運営している<せきらら動画>という所にアップされるや、大量の弾幕を付ける奴らがいるし、そいつらが煽り散らかすからなぁ。

 酷いもんだと思う。

 そういう意味でも慎重に探索しないと……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。