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Side:橘八重
昨日グッスリと寝た俺は、東京都新宿区にある<虚界門>へと行く。
実は虚界に行くのは誰でもタダで行く事が可能だ。
しかしSCCで魂魄にSCSを埋め込まれないと行く事が出来ない。
虚界はそもそも物質と精神と魂魄が入り混じる世界であり、自分の魂を強く保てない者は消滅して栄養にされてしまう。
七大罪と言われる悪魔達が食事にしているのも、そういう精神性や魂の波動らしい。
なのでイージェルさんは俺の事を“食事”と言ったんだ。
まさしくサキュバスにとって、俺達男は食料でしかない。
ま、サキュバスに殺される男は滅多に出ないらしいけど、稀には絞り殺されている。
ニュースに普通に流れるし、だから怒らせるのは止めようと繰り返し放送されてる。
なのにやらかすバカは居なくならないんだよ。
それが人間なんだろうと15のガキでも分かるってもんだ。
ちなみにSCSは、悪魔達の技術であり人間には全くサッパリ理解できないんだってさ。
なんでも【魔法】と機械を組み合わせた物らしい。
それをどうやって魂魄に埋め込むのかは知らないが、出来るから技術として使われてるんだろう。
俺も埋め込まれてるし、更にSCSを利用した情報化端末も体に埋め込まれている。
これは物質系なので日本の技術者も関わっているらしいけど、肝心要の部分は悪魔の技術なんだそうだ。
何でもこれの御蔭で何十世代も技術がブッ飛んだらしい。
この情報化端末はナノマシンに近く、体の中にコンピューターを埋め込んでいるもののようだ。
しかもスーパーコンューターとかいうチャチなレベルじゃないらしく、情報処理能力も何もかもが異常なほど高レベルにあるそうだ。
過去のスーパーコンピューターが全てガラクタになるレベルだそうだから、そのトンデモ性能がよく分かる。
例えが分かり難かったが、今の情報端末が高機能なアンドロイドだとしたら、過去のスーパーコンピューターはブリキの玩具レベルらしい。
俺はブリキの玩具を画像で見た事はあるけど、実際に触った事とか無いので分かり難かった。
まあ、なんとなく言いたい事のニュアンスは分かるんだけど、もうちょっと分かりやすい例えにしてほしかったと思う。
新宿区まで電車で来た俺は、虚界門まで歩いていく。
ちなみに虚界門は堂々と歌舞伎町の歓楽街に聳え立っている。
ちなみに門は荘厳さの欠片も無いピンク色だ。
多分に色欲の悪魔の感性で作られてるし、なにより歌舞伎町ってところがピンポイント過ぎる。
門の周りのそういう店どころか、今や日本全国のそういう店は全て悪魔の傘下にあるらしい。
悪魔以外がそういう店を始めると叩き潰されるので、地上げよりも悪質なレベルで乗っ取られている。
でも暴力団は排除されて代わりに悪魔が牛耳ってるだけなので、裏の人達からすると支配者が代わったってだけらしい。
ついでに警察以上に徹底して管理しているので、やっぱり人間だけの時より治安がいい。
本当、人間ってどうしようもないって思うわ。
マジで。
俺は門の前に居る悪魔に話しかけて許可を貰い、虚界門から虚界へと進む。
門は何故か鳥居の形なんだけど、これはサキュバスの女王様が気に入ったからなんだそうだ。
普通の門はつまらないと言ったらしく、そこで鳥居に形を決めたんだってさ。
イージェルさんが「あの形は装飾なんかに拘らなくていいから助かったのよぉ」とか言ってたっけ?
やっぱり最初は荘厳な感じにしようとしてたんだなぁって思ったのと、やっぱり作るの面倒臭いんだなって思ったよ。
鳥居の中心部分にピンク色の波紋が現れた。
あれに飛び込めば虚界なんだけど、波紋までピンク色とは………妙な拘りを感じるのは気のせいだろうか?
波紋が揺らいでいる所が虹色なんだけど、これは「アレ」な人達向けの色なのかも。
少し躊躇してしまうけど、男は度胸だ!
俺は一気に波紋の中に飛び込んだ。
即座に別の場所に出たが、そこは様々な建物が立っている場所だった。
なんだか石造りの家が多いなと思うけど、ここが色欲の悪魔の領域の最前線なんだろう。
虚界にはそれぞれの系統の悪魔の国があったんだけど、その中心に異界が出来たらしい。
異界はどこからでも入れるけど、中に一度入ると、出る為には一定量のSDを集める必要がある。
ダストってゴミとか埃って意味だったと思うけど、西洋的な名前がついているのは悪魔が西洋の物語に出て来るからかな?
本当の悪魔と物語の悪魔の違いも、講習で散々教えられたから覚えてる。
そもそも悪魔は物質的な部分は極僅かで、ほとんどは精神と魂魄で構成されているそうだ。
なので人間より遥かに長生きだけど、代わりに数がなかなか増やせない。
そういうデメリットもあるんだそうな。
そして異界を狭める為にも、彼らの繁殖の為に必要なのもSDとなる。
あくまでもそう名づけられてるだけで、悪魔的には食料の一種なんだそうだけどね。
ただ英語にするとソウルダストが正しいと聞いた。
石造りの建物を見回してキョロキョロしていると、前から戦士の恰好をした女性が歩いて来る。
目当ては俺なんだろうけど、目のやり場に困るな。
っていうか、あれビキニアーマーじゃん。
なんであんなの着てるんだよ。
「うむ、新しく来た異界探索者のようだな。
ついでにこの格好に反応しているようで何よりだ。
君のような少年に欲望の目を向けられると、ついつい食べたくなるが控えよう。
異界の入り口は向こうにある。
どこからでも入れるとはいえ、場所は守ってくれ。
でないと何かあっても責任は持てんのでな」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
「ああ、気にしないでくれ。これも私の仕事だからな。
…………ヌいていくか?」
「い、いえ、結構です!」
「あははははははは! だったら行くといい。
ただし中では慎重に立ち回るようにな。
でなければ、すぐに死ぬぞ?」
「分かりました。それじゃ!」
俺は早歩きで異界の入り口と言われた方に行く。
サキュバスの人達は欲望に敏感どころか、自身に向けられた欲は一瞬で察知するらしい。
更には相手の心を読めるんだから、悪魔っていうのは本当に凄いと思う。
でも、揶揄うのは止めてほしいもんだ。
というかビキニアーマーと兜と剣だけって、昔そんなアニメのキャラクターが居たような……?
そういうのも浸透してるんだろうか?
それはそれで微妙な気分になってくるなぁ。
なんかコスプレみたいだし。
俺は異界の入り口まで来たけど、どうにも見ていると気持ち悪い。
色々な色に変化しながら、点滅したり歪んだりを繰り返している。
何というか、SAN値が減りそうな感じがするな。
あまり長く見つめるのは止めよう。
「あまり長く見るのは良くないから止めるようにな。
長く見つめた所為で、一時的にトチ狂った人間も居たんだ。
あんまり見ていいものじゃない」
「すみません。
忠告ありがとうございます」
「いやいや。
ところでキミ、尻の穴に興味はないかい?」
「ないです!!」
俺はそう言ってすぐに異界の入り口に飛び込んだ。
危ない危ない、インキュバスの中には当然そっち系の人も居るからな。
怖い怖い。
無理矢理にはされないって聞くが、その道に引きずり込まれた人も結構いるって聞くし……
勘弁してほしいよ、本当。
流石に俺にはその趣味は無い。
断じて絶対に無い! と反応すると危ないらしいので、緩やかに無いと言っておこう。
強固に反対する人ほどポッキリ折れてあちらの住民になるらしいし、俺は御免なので柔軟に拒否しよう。
柔軟に。




