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Side:ナレーション
時は1999年12月31日。
恐怖の大王は来なかったが、しかし虚界と呼ばれる所から悪魔がやってきた。
この世には天使などおらず悪魔しかいなかったとされ、世の中の宗教者と信徒は大混乱。
後に暴動なども起きたが悪魔によって鎮圧。
その後には悪魔との戦争になっていく。
とはいえ悪魔はいわゆるところの【魔法】を行使し、世界各国の軍は悪魔の前に叩き潰されるしかなかった。
なお、幾つかの国はそもそも悪魔と争う事をしておらず、その結果として悪魔に潰される事もなく残っている。
特に悪魔を酷く罵り攻撃したのは、キリスト教系とイスラム教系の国々。
そして覇権を狙っていた中国や共産主義や社会主義の国々が軒並み叩き潰されている。
そんな中、戦争する力も碌に無く、そもそも悪魔に対して悪いイメージが他の国より無い日本は無事であった。
それだけではなく悪魔達は日本を気に入り、相当に優遇し始めたのだ。
その理由は日本のサブカルチャーにあった。
その豊富さに呆れるよりも感心した悪魔達は、日本をAクラス国家に指定。
他にも幾つかの悪魔に対して恨みや憎しみを持たない国々もAクラスとした。
それ以外の国々はBクラス以下とされ、特に悪魔に怒りと憎しみを向けた国は最下層に落とされた。
それがFクラスだ。
特にアメリカやヨーロッパ、更には敬虔なイスラム教徒の多い中東諸国は軒並み最下層のFクラスとなっている。
そんな中でも逸早くEクラスに上がったのが、三枚舌とも言われるイギリスだ。
相手を騙してでもという気概を気に入ったのか、実に悪魔らしい理由でEクラスに上がっている。
今やそのような形で混迷する地球情勢だが、そもそも悪魔達が虚界から地球へやってきたのには理由がある。
それが虚界の中心に突如出現したという異界だ。
そこは混沌としており、内部が異常な空間となっているという。
恩恵もあるのだが、その恩恵を得ようとして多くの悪魔が挑み、そして帰って来なかった。
そこで目を付けたのが、現実世界における野蛮な劣等種。
つまり地球人類の事だ。
悪魔がこの地球に現れたのは、数だけは大量に居る野蛮な劣等種を異界に送り込むためである。
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Side:???
俺は教育用の動画を見ながら嘆息する。
自分達が利用する相手に野蛮な劣等種という言葉をいちいち使わなきゃならないのか?
どうせ死ぬなら、せめて良い気分にして送り出せばいいものを……
「ゴメンねぇ。
この動画は傲慢の悪魔達が作製してるから、こんな感じなのよぉ」
「ああ、いえ。
こっちこそ、心の中で愚痴ってすみません」
「いえいえ、心の中で愚痴ぐらいはねぇ、言えないと息苦しいだけでしょう?
私達のような淫精魔も心を読みたくて読んでいるわけじゃないのよぉ」
「それは知っています。
色々と勉強しましたので」
「まあ、それはお利口ね。
それじゃ、これで異界の勉強は御終い。
とはいえ、最後はなぜ私達が地球に来たかっていう核心部分なんだけど、ここがある意味で一番重要なのよ。
虚界の半分もが異界に呑み込まれたから、私達も困ってるってわけ」
「でしょうね。
俺達の住んでいる地球が半分狂ったってなったら大混乱するでしょうし、それなら他に活路を求めるのも普通だと思いますよ。
背に腹は代えられませんし」
「そう言ってくれると助かるわ。
本当、私も日本担当で良かったわよ。
民は穏やかで犯罪者が少なく、大人しい割には性欲旺盛なのが多いもの。
御蔭で“食事”に苦労しなくて済むのよね。
色欲の私達にとって日本は当たりの国なの」
「まあ、何となくは分かります。
アメリカには憤怒系の悪魔が、ヨーロッパには傲慢系の悪魔が、中東には強欲系の悪魔が、そして中国とロシアには怠惰系の悪魔が主に行ったと動画にありましたからね」
「それぞれ支配したい好みの国に行ったからね。
私達は断然日本だったし、女王様が殴り合いで勝って奪ったのよぉ。
本当にあの時の女王様ってば容赦なかったわ。
親衛隊の強精魔が、おっ勃てて興奮しまくってたぐらいだもの」
「なんで女王様が殴り合いしてて興奮しているのかは横に置いておきますが、これで全て終わったから、明日から異界に挑戦していいんですよね?」
「ええ、そうよ。
貴方も私達にとっては美味しい“食事”なんだから、無理はしないようにね?」
「はははははは………分かりました、気を付けます。
それじゃ、俺はコレで」
「はい。
色々とあるんだろうけど、明日から頑張りなさい」
俺は講師役のイージェルさんに挨拶し、そして異界講習室を後にした。
ここは東京都台場にある、SCCだ。
かつてはとあるテレビ局があったのだが、当時のノリで悪魔を撮影し嘘情報を流したらしい。
そして悪魔から報復を受けて更地にされたという。
話してみたら気の良い人達だけど、本質的には武士に近いと言われている。
つまり「舐められたら負け」だ。
だから舐めて来た相手は何であろうが潰す。
それは全ての悪魔に徹底している事なんだ。
だからこそ誰も怒らせたりはしないし、言動と行動には注意する。
そうしなきゃ殺されるし滅ぼされるからだけど、人間だけの時より劇的に治安が改善したっていうのは笑い話にもならないと思う。
ネットなんかでは冗談交じりに「人間は悪魔以下なんじゃないか?」と言われているのもそれが理由だ。
俺はいつも通りに東京の文京区にある家に帰る。
といっても俺の家じゃなく、ここには俺のような異界に挑む人間を集めて寝泊りさせてくれる所がある。
俺は実家に居るのが嫌で家を出た。
嫌な理由は一つだけで、それは迷惑を掛けたくないからだ。
親がいないからな。
俺の親はテレビ局ではないが、ゴシップを書く雑誌社で働いていた。
そして悪魔の襲撃を受けて皆殺し。
とはいえ俺は悪魔を親の仇だとは思っていない。
なぜなら、子供心に親の事を悪魔だと思っていたからだ。
むしろ死んでくれて清々したと思っている。
俺が子供の頃どういうイジメを受けていたかも、あいつらは知らなかった。
俺がイジメを受けていた理由だって両親の所為だ。
あんな嘘ばかり書き立てるヤツが親だなんて、今風に言うと親ガチャに失敗したとしか思えない。
本当に死んで清々した。
政府からお悔やみとして結構なお金が貰えたし、悪魔からの襲撃なので生命保険も下りた。
俺はまだ15歳だが、それなりにお金を持ってるんだよ。
あいつら絡みの金だというのが腹立たしいが、金に色は付いていない。
なので俺は自分の為に使う。
橘の名字はあまり言いたくないが、八重という名前は祖父母が付けてくれたものだ。
そして橘姓も祖父母と同じなので、そこまで嫌な訳じゃない。
あまり言いたくないというだけでな。
それはともかく、この三年は勉強しながら異界探索の為の準備をしてきた。
今や異界探索者は<なりたい職業ランキング>で常に一位を取るほどの人気職業だ。
その理由は殺し合いだけで儲かるから。
つまり余計な学歴云々は一切必要ない、強く生き残れる者だけが大金を稼げる世界。
それが異界探索者となる。
祖父母には止められたが、俺はあれ以上世話になりたくはなかった。
あのクソ親の産んだ子供が俺だ。
これ以上は迷惑を掛けられない。
むしろクソ親絡みの色々な金を祖父母に渡さなきゃいけないくらいなんだ。
とはいえ異界探索には金が掛かるから仕方ないんだが……
儲かるようになったら祖父母に仕送りをしようと思ってる。
今まで世話になったし、恩を返せてもいないからな。
男、橘八重。
恩を受けて返さないなんてあり得ない。
なので明日から頑張らないと……




