0027
Side:橘八重
(そもそもアロハヌス家の人達と繋がってないって、どういう事ですか?
人間と同じ方法でなくとも繋がりはあるはずですよね?
今の御当主もそう言っていましたし)
(根本的な話になりますけど、悪魔が因子を受け渡し合って子を成すには、己の器を満たす必要があるのです。
先ほど許容量の話をしましたが、その許容量いっぱいになければいけないわけです。
ですが私は一度も器を満たした事が無かったと言いました。
つまり……)
(器を満たせなかったエルトアリアさんは、子供も成す事が不可能だった)
(ええ。
ですので今のアロハヌス家の系譜は、私の妹の系譜です。
単純に言えば、私は妹の系譜を見て娯楽として楽しんでいるだけですね。
妹も私の御蔭で良い暮らしが出来たのですから、それぐらい赦すでしょう)
「すみませーん、追加でコーラ下さーい。
何か要ります?」
「そうですね。このパフェをお願いします」
「あ、はい。ジャンボパフェもお願いしまーす」
「分かりましたー。少々お待ちくださーい」
女性店員はこっちを見ていたみたいだけど、変な二人と思われてるだろうな。
ただジッとしているだけで何も喋らないし、おかしなヤツだと俺でも思うからな。
(そんな事はありませんよ。
お互いに見つめ合ってどうこうとか、赤くなって視線を逸らしてどうのこうのとか。
娯楽みたいに見ていますね)
(激しく恋愛脳だった。
そんな想像をして楽しいのか知らないけど、変に思われてないならよかった)
(せっかくですから、キスしたり抱き合ったり、お互いの唾を交換したりしますか?)
(なんで急にやたらディープになるのか知りませんけど、それ多分サキュバスでも普通じゃないでしょ。
揶揄ってるのは分かりますけど、恋愛脳の前に餌をあげなくても……)
(いえ、本気ですよ?
ヤりたいなら、今すぐここでヤっても構わないぐらいです。
出来れば襲われる形が好みなので、襲って下さい)
(そんな事したら警察に捕まりますから、絶対にお断りです。
サキュバスの国なら許されるのかもしれませんが、日本では公序良俗を乱す行為として捕まるんです)
(我が国でも捕まりますよ?)
「だったら言うなし!」
「!?」
「あ、すみませーん。こっちの話でーす」
(声に出すとは、まだまだ甘いですね)
(そもそも今日契約するまで心で会話なんて出来るとは知らなかったんだ。
初めてなんだから、こういう事もあるだろ)
(確かに言われてみれば童貞だったのでしたね)
(わざわざその言い方をしなくていい!
それはともかく話を戻すけど、そこまで器が大きく子供を成せなかったって言うけどさ。
無理して10倍集める事って出来たんじゃないの?)
(やってやれなくはありませんよ? 変わりにどれだけの者が犠牲になるか分かりませんがね。
そういう事もあって無理なのですよ。
流石にインキュバスどもをそんなに大量に集めるわけにもいきませんし、それをすればどんな悪評が付くかも分かりませんでしたからね。
当時は高位悪魔であり最高位ではありませんでしたから)
(それで妹さんに頼んだってわけか)
(正しくは妹とその妻に頼んだという事です。
で、二代目のアロハヌス家当主を擁立したという事ですね。
後見が私なのですから特に問題も無くすんなりといきましたよ。
その後も継承されていますしね)
「お待たせしましたー。コーラとジャンボパフェでーす」
「………デカ」
「そうですか? そこまで大きいようには思いませんが」
「そうですか……」
俺は見ているだけで胸焼けしそうだよ。
クリーム、アイス、チョコ、クリーム。
他に色々と入ったり乗せてあるけど、クリームとアイスとチョコの層を見ただけでゲンナリしてくる。
これが唐揚げとかなら多分思わないんだろうけど、甘い物だとなぁ……半分でも多いかな?
目の前でバクバク食べ始めた美人さんは横に置いておこう。
見ると本当に胸焼けしそうになる。
(ところでサキュバスの女王に話したって言ったけど、俺は今の装備で十分過ぎるよ?
あまりに威力が高くて、言い訳が上手くいったか分からないくらいだし。
動画を見た奴らから疑われると思う)
(動画………そういえば、そのような物があったのでしたね?
虚界では見られないので知りませんでしたよ。
………ふむ。
もしかしたら地球に居を構えた方が娯楽は多いですかね?)
(どうだろう? 悪魔の人達が面白いと思うかどうかだと思う。
既存のテレビ局も結構ブッ壊されてるし、代わりに電波が自由契約になってるんで、チャンネル数は異常に増えてるけどね。
あと悪魔の人達の御蔭で漫画やアニメは大量になったよ。
もちろんゲームも)
(ほうほう、こちらに居た方が娯楽は多そうですね。
私はこちらに攻め込んだ時に居ただけで、少し居た後ですぐに戻ったのですよ。
ここ日本の民は別に何もしませんでしたからね。
ならば私が居る意味も無いので)
(なるほど。
それで日本の事をほとんど知らなかったのか。
まあ、知っている意味も無いから、そんなものだとも思うけど)
(適当に向こうで武具を作り、こっちに持って来て売ればいいですね。
異界探索者どもは日本の金銭を大量に持っているようですし、私がそれを吸い上げれば済むでしょう)
(全くもって容赦の欠片もねえ。
とはいえSD濃度42、異界浸食率11%の鎌が、一つで372万3000円でしたよ。
それ二つ売れば中小企業のサラリーマンの年収を軽く超えます。
なのでSD濃度100なら一つ売れば十分じゃないですかね?)
(あんなもの一つで余裕で暮らしていけるとは、何ともボロい商売ですね。
それらを元にして色々とやっていきましょうか。
こう見えて作るのは得意なのですよ、私は。
魔性貴族と魔製貴族で迷ったくらいですから)
(魔製貴族……)
(主に物作りをする者達の爵位です。
特に魔力の多く篭もる武具というのは、悪魔との戦いの際には重要な物でしてね。
それ故に魔製貴族として爵位が与えられているのですよ。
こちらで物作りをしている者の中にも居るはずです)
(なるほど、確かに物作りって国家にとって大事ですからね)
「さて、そろそろ食べ終わりますし、話も終わりですので出ましょうか?」
「分かりました。
すみませーん、お会計をお願いします」
「はーい」
立ち上がってレジに行き、女性店員にお金を支払う。
貴族家の初代当主に変な店で飲み食いされるよりは十二分に安いので問題無し。
築地の時価しかない寿司屋とか行かれた日には、ドン引きするくらい支払う羽目になるかもしれないんだ。
それに比べりゃね。
支払ったら店を出て、そのまま分かれて帰ろうとしたんだけど、何故か一緒になってついてくる。
まだ何かあるんですか?
「貴方の住んでいる所に行かないと直接転移が出来ませんからね。
何かあった時に困ります」
「………それを言われると拒否できないんですよねえ。
本当にヤバい時には頼らないとどうにもならないでしょうし」
「ですからついて行っているわけですね。
さっさと行きますよ」
「あ、はい」
周りからジロジロ見られてるからそれだろう。
俺は急いで最寄りの駅に向かうのだった。
電車に乗って文京区へ戻ってきた。
俺は歩いてオンボロアパートに戻るのだが、ちょうど七尾さんが掃除しているところにでくわした。
別に何も問題ないんだが、なんか気まずいな。
「こんにちわ。今戻りました」
「はい、お帰りなさい。
………サキュバスの方と一緒という事は、何かしたんですか?」
「いえ、この方は少々の縁があって知り合った方です。
ですので問題を起こしたとか、そういう事はありません」
「そうですか。それならいいのですが……」
エルトアリアさんは何も語らず会釈だけで済ませた。
俺はなんだか微妙な雰囲気から逃げ、さっさと家の鍵を開けると中へと入る。
当然エルトアリアさんも入ってくるんだけど、部屋の狭さに驚いているみたいだ。
「………ここは家畜小屋か何かですか?」
「言い得て妙ですけど、間違ってはいない気がします」
異界探索者なんて、悪魔の人達の家畜と言っても間違いじゃないしなぁ。
ただし一攫千金という、夢のある家畜だけど




