0024
Side:橘八重
氷の騎士を倒しつつウロウロするものの、なかなか次の地形への場所が見つからない。
真っ直ぐに歩いているだけじゃ駄目なんだろうか?
そう思った俺は、どうしようかと迷う。
途中で道を変えるのも、それはそれで迷路に迷い込みそうだしな。
そう思うものの、真っ直ぐ言っても埒が明かなそうだし……。
そう思っていると、突然俺の前方を中心にして氷の大地が隆起し、遠い所と比べて10メートルほどせり上がった。
御蔭で低い所に降りる事も出来なくなっている。
というか、後ろに飛ばされると落ちて死ぬので、せり上がった中央に行かないと危ない。
と思うのだが、そう簡単に行くわけがなかった。
せり上がった大地の中心が更に隆起し、氷の騎士が5体も出て来た。
完全に殺す満々じゃないか。
「これは幾らなんでも卑怯じゃないか?
いきなりせり上がって逃げられないわ、氷の騎士が5体も現れるとかさ。
反則だと思うよ、俺は?
こんなの、もっと後で出て来るトラップだろ」
思わず愚痴を言ってしまうが、流石にこちらから攻めないとマズい。
講習でも習ったが、4体以上だと逃げるのが正しい。
しかし脱出しろという教えじゃないんだ。
4体以上敵がいる場合は、確実に一対一の状況を作って倒していく。
その為に逃げるんだ。
なので俺は左の端にいる氷の騎士に近づき、相手が剣を振ってきたので走りながらステッキで弾く。
そして返す刀で一撃を入れたら走って離脱。
これで1体。
と思ったら中央が隆起して新たな氷の騎士が現れた。
確実に5体の状態をキープするらしい。
思わず「ふざけんな」と言いかけるも、止めて敵を倒す事に専念する。
こちらが逃げる事のみを考えている場合、そう簡単には捕まえる事なんて出来ない。
俺はチャンスが来るまで逃げ回り、そしてチャンスが来たら剣を弾いて倒していく。
左からくる時には盾で防ぎながら一撃を加えて離脱。
とにかく氷の騎士と追いかけっこをしながらも、確実に1体1体を仕留めていく。
俺が疲れ切るか、それとも敵が先に尽きるか。
多分だけどそういう勝負になっている。
実は新しく増援が出て来る度に氷の大地が下がっていってるんだ。
となると地面に着くまで下げるという戦いなんだと思う。
そうなるまでに逃げられるだろうけど、なんだか逃げちゃいけない気もしている。
逃げると損しそうな感じがさ。
なので疲れながらも必死に足を動かして戦い、やっとのことで全ての氷の騎士を倒した。
多分だけど、その数は40体を超えていたと思う。
全て倒すと「ズゥン!」という音と揺れが起きたので、地面に戻ってきたのが分かった。
「あーー、疲れたーーーっ!!
やっと終わったけど、流石に氷の騎士の数が多すぎるだろ!
おそらくだけど40体ぐらい倒したぞ。
幾らなんでもトラップとして酷すぎないか?
2つ目の地形で出てきていいモンスターとトラップじゃねーよ!」
口から愚痴がどんどん出てくるが、それも仕方ないと言えるほど酷かった。
流石にあの氷の騎士は駄目だろ。
幾らなんでも無いわ。
俺が座って休憩をしつつ愚痴を言っていると、先程の隆起した大地の中心に何かが出て来た。
なんだろうと思い、疲れた体で立ち上がり確認に行く。
そしてソレを見た時に何とも言えなくなった。
「これが貰えるって事?
コレって確か<オペラ座の怪人>か何かが着けてる仮面じゃなかったか?
顔の半分で口元近くまである仮面。
そんなのだったと思うんだけど、違ってたっけ?
ま、帰ったらネットで調べよう」
そう言いつつ確認すると、ARにはSD濃度11、異界浸食率44%と出ていた。
SD濃度っていうか魔力は少ない癖に、逆に異界浸食率が驚くほど高いな?
仮面で高いってどういう意味があるんだろう?
ちょっと気になるものの、俺は意を決して着けてみた。
すると顔の右半分にピッタリと吸いつくように張り付く。
そして外そうとしても外れなかった。
「おお、凄い。この仮面、吸い付いて離れないぞ?
どうなってるのか知らないけど凄いな!
引っ張っても取れないって、どういう材質ででき………
あれ? コレもしかして取れないんじゃ……」
俺は慌てて仮面を引き剥がそうとするも取れず、「取れろよ!」と念じたら簡単に取れた。
むしろ引っ張っていたので弾き飛ばしてしまい、慌てて取りに行ったくらいだ。
「あぶねー、あぶねー。
まさか「取れろ」って念じるだけで取れるとは思わなかった。
便利だけど分かり難いな。
ま、とにかく顔の半分とはいえ守れる物が出て来たんだ。
着けておこう」
俺は改めて仮面を着け、そして再び出発する。
するんだけど、明らかに何か変な薄い墨みたいな物が右に流れているのが見える。
さっきまでこんなもの見えてなかったのに、変だな?
となると仮面か?
そう思い仮面を外すと薄い墨の流れは見えなくなった。
なので仮面を着けているからで正解のようだ。
ただ、その墨の流れが何を表しているのかサッパリ分からない。
試しに仮面を着けたまま右へと行ってみる。
氷の騎士が出てきたが倒し、更に先へと進むと今度は左に流れている。
なのでそちらへと進むと、次は右斜め前。
いったいどこに連れて行かれるんだと思うも、その先には地面の色が変わっている場所があった。
薄い墨の流れは何かの流れを示していて、その方向に行くと次の地形へと行けるのか。
………さて、どうしよう? もう結構な時間、中に居るしな。
このままだと、また倒れるかもしれない。
後の事を考えたら今帰っておく方が無難なんだよな。
「…………よし、帰ろう。
氷の騎士も沢山倒したし、今日の収支は確実にプラスだ。
命あっての物種と言うし、帰れるうちに帰った方が良い」
俺はそう決め、視界のAR表示から<帰還転移>を実行して戻った。
虚界へと出ると、ようやく安全になったという意識が芽生えて、体の力が抜けて安堵する。
唯でさえ氷の騎士が出て来るような地形だったし、相当程度のストレスが掛かっていたらしい。
あのまま先に進まなくて良かった。
さっきの判断は間違ってなかったみたいだ。
俺はゆっくりと歩いて戻ろうとすると、何故か目の前に無表情メイドが立っていた。
………なんでここに?
「私が居てはいけませんか?」
「なぜ微妙に怒っているのかは知りませんけど、帰って来て安堵した途端に最高位悪魔の方に出会ったらこうもなります。
命あっての物種だと思って帰ってきた途端、なぜか命の危険に晒されるわけですからね」
「私は命の危険に晒したりはしません。
それより行きますよ」
「えっ? どこに?」
ガシッ!
「ルヲンヌ」
有無を言わさず肩を掴まれ転移させられた俺は、気づいたら地球のどこかに居た。
その瞬間、俺の視界はブラックアウト。
またもや倒れてしまったようだ。
「こ、こ、どこ、で……」
「ああ、心の中で思えばいいですよ。無理に口を開く必要はありません。
ここは私が来た事のある日本の場所です。
確か中央区とかいうところのはず。
築地とかいう所で美味しい海鮮を食べた記憶がありますので」
ああ、築地なんだ。
っていうかそれより、最高位悪魔ともなれば鳥居を使わなくても地球に転移できるんですね。
「それは勘違いです。
そもそもあの門そのものが転移の道具でしかありません。
転移が出来なければ門を作製する事も出来ないのですよ。
ですので一定以上、というよりも高位悪魔であれば地球への転移など可能です。
できないのは下っ端どもぐらいでしょう」
その下っ端の方が圧倒的に多いのでは?
「そうですね。それはともかくここで少々休みましょうか。
貴方が回復するまでは動けませんし」
すみません、ご迷惑をおかけします。
リアクションありがとうございます




