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0023




 Side:橘八重



 なんだかよく分からない光景を見た後に意識が戻ってきたが、ここは入り口から見て左のドアの先だ。

 戻って右のドアの先に進まないと次の地形には行けない。

 視界の右上端のSDを見ると1741と出ているので、SDは全く減っていないらしい。


 その事に安堵しつつ、俺は戻って別のドアを開ける。

 そのまま路地を進んで行くと地面の色が変わっている場所があったので、深呼吸してから先へと踏み出す。




 次の地形は氷の大地だった。

 明らかに寒いが、それでもローブを着ているのでマシな方だ。

 これが無かったら寒さで帰っていた可能性が高い。

 異界には暑さも寒さもあるが、その暑さや寒さがキツい場所があるのも知ってはいた。


 ただ、実際自分が進む事を考えるとキツいと言わざるを得ない。

 暑さ対策や寒さ対策を用意していないと、とてもじゃないけど先に進めなくなる。

 もちろん知識としてはあったんだけど………些(いささ)か以上に早すぎる。


 まだ2つ目の地形だっていうのに、もはや寒さの厳しい地形に当たるなんて運が悪いとしか言いようがない。

 それでも進めるだけマシだと思いつつ、俺は氷の大地を慎重に歩いていく。


 登山靴というか、ゴツいブーツを履いているので滑る事は無いようだ。

 それだけでも十分にありがたい。

 踏ん張れずに滑るとなったら、寒さを含めて二重の苦しみに陥(おちい)るところだったよ


 「それにしても寒いなぁ。

 氷の大地で一面それしか見えないんだけど?

 せめて何かの目印ぐらいはないものか……」


 遠くに山とかすら見えず、氷の大地と空しか見えない。

 空には太陽すらないので、ここが異界だとよく分かる。

 先程の町の中のような場所もそうだが、洞窟と違って明るくしっかりと先まで見えている。

 にも関わららず何も目印が無い以上、歩くしかないんだろう。


 一応地面を確認しながら歩いていると、突然氷の大地が狭い範囲で隆起し、それが氷の騎士のような姿になった。

 どうやらここのモンスターはそういう風にして出て来るようだ。

 相手は氷の騎士なので、持っているのは氷の剣と氷の盾となる。


 氷の騎士は右手に握っている剣を躊躇(ちゅうちょ)なく振ってきたので、俺は左腕に着けている円盾で防ぐ。

 円盾ではあるけれど内側に反っている形状ではなく、丸い形の鉄板みたいだと考えれば分かりやすいと思う。

 なので敵の剣が自分の方に流れて来る事は無い。


 その円盾で防いだ後、右手のステッキで殴るも氷の騎士は盾で防いだ。


 ドゴッ!!


 氷の騎士は防いだが、防いだ盾ごと吹き飛ばされた。

 SPも込めてないのに、あんなに威力があるのか。

 通りで巨大木窓が一撃で倒れるわけだよ。


 そして氷の騎士は一撃で倒せなかった。

 まさかとは思うが、SPを使わないと無理っぽい。


 氷の騎士は吹き飛んだものの、そこまでではなく立ったままだった。

 そしてすぐにこちらに走ってくると、再び持っている剣で切り込んでくる。

 俺はそれを再び円盾で防ぎ、反撃としてSPを1ほど込めたステッキを右から左に振り抜く。


 ドガァン!!!


 そんな大きな音と共に、氷の騎士は上下二つに分かれて地面に倒れると消えて行った。

 SD濃度97にSPを1込めただけでコレかよ。恐ろし過ぎるだろ。


 どんだけ強いんだと思うも、流石は貴族の家の倉庫の物だと思う。

 スゲー強い。


 これが埃を被っていて大した事がない物と言えるのは、絶対に最高位悪魔だからだろ。

 最高位の人達にとったら大した事が無いんだろうけど、新人にとったら凄い武器だ。

 というか、ここまでの武器はトップ層でも持ってるかどうかってぐらいでしかない。


 それほどの物をあっさりとくれたんだから、SD1500以上の得は確実にしている。

 俺はチラリと視界の右上端を見ると、SD1851と出ていた。

 前が1741だったんだから、1体でSDを110もくれてる?

 だとすると氷の騎士って本来メッチャ強いじゃん。


 マジかー………気づいたけど、絶対に口に出すとマズい。

 しかも俺一撃で倒しちゃったよ。


 新人が倒せないか、倒せても大苦戦する相手だろコイツ。

 にも関わらずSP1だけ込めれば一撃だもんなぁ。

 相当にヤバい映像になってないか? 嫌な予感がするぞ?


 とはいえもう手遅れって感じがするし、あまり隠そうとしても意味が無い気がする。

 脱出して地球に戻った段階で引っこ抜かれるし、虚界にずっといる訳にもいかないんだ。諦めた方がいいな。

 ………それでもギリギリまで抵抗するけどね!!


 歩き出してすぐ、再び氷の騎士が出て来たので反撃で始末。先へと進む。

 そして次の戦闘には2体の氷の騎士が出てきた。

 流石に一対一なら楽勝なんだけど、2体同時となると色々と変わってくる。

 どうしたものかと考える事も出来ず、敵は即座に襲って来た。


 俺は左から襲って来た氷の騎士の剣を円盾で防ぎつつ、右から突いてきた氷の騎士の剣をステッキで弾く。

 するとあっさり氷の剣を砕く事が出来たので、一旦バックステップで距離をとる。

 少し経つと氷の剣を再び作り出したが、すぐに剣を作り出す事は出来ないらしい。


 「なるほど。

 コイツは2体以上の場合こうやって戦うのが正解なのか」


 俺は再び切り付けてきた左の騎士の攻撃を円盾で防ぎ、右から突いてきた剣をステッキで跳ね上げるように破壊。

 そしてそのまま頭に振り下ろす。

 氷の騎士は振り下ろしの斬撃をかわす事が出来ず頭に直撃し、その一撃で地面に倒れて消えた。

 どうやらSPを使わずとも頭への一撃なら勝てるらしい。


 左の氷の騎士は切れなかったからか一旦離れたが、俺は残った左の騎士に向き直って相対する。

 1体になれば後は反撃で倒せばいいだけだ。

 そう思い慎重に間合いを詰めていると、相手が一足飛びで突いてきたので、円盾で受け止めてなんとか防ぐ。


 「前に跳ぶ突き、お前もするのかよ!」


 俺は驚きつつも騎士に対してステッキを振るう。

 盾で防がれる事も込みで最初からSPを込めていた為、盾ごと氷の騎士を破壊。

 一撃での勝利となった。


 「ふぅ……やれやれ。

 予想以上に強いというのもあるけど、あの前に跳んでくる突き。

 いきなりやってくるから厄介なんだよなぁ。

 とにかく突っ込んでくる攻撃は厄介にすぎる。

 フェンシングの技みたいだ」


 突っ込みながら突いてくるって非常に厄介だけど、アレが来ると分かっていたら対処は出来ると思う。

 氷の騎士は体が重いのか機敏に動けないようで助かったけど、フェンシングの選手みたいに動かれたら殺されてたかも。


 ローブがあるから大丈夫だと思いたいけど、顔は全く守れないから危険なんだよな。

 フードがあるから頭の上とか後頭部は防げるだろうけど、顔の前が危険だ。

 仮面か何かが手に入ると助かるけど、ここじゃそんなに良い物は手に入らないかな?


 敵が強いものの、まだ2つ目の地形なんだよ。

 その2つ目でSDを110もくれる氷の騎士が出て来るんだから呆れる。


 ………今ふと思ったんだけど、もしかして良い武具を持ってると、いきなり強いモンスターの所に飛ばされる?

 なんだかそんな気がするのは気のせいだろうか。

 だからアロハヌス家の次期当主の人は、あんな肉の内部みたいな地形に居たんじゃないかな?


 それに悪魔の人達が帰って来なかったのも、元々持ってる魔力が高いからかもしれない。

 魔力を持ってないし使えない人間だからこそ、簡単な地形から始まるのかも。


 この推論が当たってるなら、進化したら最初からモンスターが強い場所から始まる恐れもあるのか。

 それはそれで嫌だなぁ。

 最初からモンスターが強いとかシャレにならない。


 とはいえベテランだって最初の地形は敵が弱い所から始まる。

 となると人間は最初から敵が弱いのかな?

 その辺りを気にして動画なんて見た事がなかった。


 次に見る時はその辺りも注意して見よう。


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