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0022




 Side:橘八重



 木窓はそもそも強いモンスターじゃない。

 なので簡単に勝てるんだけど、上から降ってくるとなれば話は別だ。

 高さ1メートルほどの木製の窓が頭に当たったら流石に死ぬ。

 フードを被ってるから無事かもしれないけど、それを試す気にはならない。


 俺は木窓と戦いつつも後ろを振り返ると、案の定、入ってきた扉は消えていた。

 つまりモンスターを倒さないと、この路地から出る事は出来ないようだ。

 こういうトラップは前回にもあったし、頭が怖い以外は期待が持てるかもしれないな。


 そんな事を考えていたのが悪かったんだろう。

 いきなり背後で「ガンッ!」と鳴り、そのすぐ後に木窓に挟まれた。

 後ろだったので反応が遅れたけど、ローブの御蔭か全く痛くない。

 俺は足に力を込めて前へと出ると、スルっと抜けるように挟まれていた木窓が外れた。


 これに関しては装備に関係なく、こうやって脱出している人が動画に居たんだ。

 その人のを見ていたので、俺もすぐに外す事が出来た。

 俺は前へと出て少し離れた後、右手のステッキで木窓を突いて倒すと周囲と上を確認。


 すると路地の先から「ガンッ!」と音がしたのでそちらへと慎重に進む。

 別に早く倒す意味も無いし、出て来たモンスター自体が囮の可能性もある。

 そう思った瞬間、手前に木窓が落下してきた。


 「だと思ったよ。

 アレに近づくと上から落下してくる。

 よくあるパターンというか、俺でも想像できるような罠だ。

 御蔭で助かったとも言えるけど、本当に木窓が落下してくるのは勘弁してほしい」


 そこからも慎重に進み、手前の木窓の攻撃を下がって反撃。

 そうやって倒し、奥の木窓も同じように倒した。


 その後は警戒するが、音もしないので路地の先へ。

 すると色が変わっていたので引き返す。


 そもそもドアの色も変わっていたけど、あんなの初めて見た。

 他の人の動画でも見た事が無い。


 地面の色が変わってるのは見た事があるが、ドアの色まで変わっているのは本当に見た事が無い。

 というか、そんな所の色が変わってる事そのものを初めて見た。

 普通は地面が続いている場所の色が変わるはず。

 でもさっきのはドアだった。


 流石に不自然と言うか、明らかにあのドアは怪しい。

 とはいえ未だにSDは300も溜まっていない。

 さっきの路地でそれなりに出て来たからか、数で稼ぐ事が出来たので200は超えた。

 でも安全圏にはまだまだ遠い。


 俺は大通りと言える元の道へと戻ると、再び入り口から真っ直ぐの道を歩いていく。

 すると建物が前方にあり行き止まりとなっていた。

 ただしここにもドアがあったので、その先も路地になっているんだと思う。


 ドアを開けて大通りの先へと進むと、そこは大きな円状になった場所だった。

 グルリと円状に建物が立っているのだが、それを見てすぐに後ろを確認。

 やはりドアは消えていた。


 「予想通りにドアが消えてるな。

 そして中には木窓が10体ぐらい居る。

 って事は、おそらく木窓のボスが現れるな。

 とりあえず木窓を倒そう」


 俺はステッキを握り、素早く敵に向かって走り始めた。

 ちなみに前回拾った軍手は左手に着けている。

 右手はステッキを持つからなんだけど、滑り止めもない軍手だから滑るんだよ。

 とてもじゃないがステッキを持って振り回せないので、諦めて左手に着けるしかなかった。


 戦闘中にすっぽ抜けるとか大惨事もいいとこだからな。

 とてもじゃないけど、怖くてそんな事は出来ない。


 俺は木窓に近づき、避けて殴るを続けて全てを倒す。

 すると上から巨大な木窓が降ってきた。

 慌てて回避したから助かったが、デカすぎるだろ。


 「デカッ!! 幾ら何でも限度を考えてくれないか?

 この木窓、俺より遥かにデカいんじゃん!

 高さで言うと3メートルくらいないか?

 最初の地形で出していいボスじゃねーだろ」


 横幅は5メートルくらいあるけど、木窓はそれが2つだ。

 つまり横に10メートルくらいある。

 流石に閉じる時の回避も厳しい、何とか避ける方法を考えないといけないけど、5メートルのリーチは卑怯だろうとも思う。


 俺は悩んだものの正攻法で戦う事にし、ゆっくりと慎重に近づいていく。

 そして5メートルを超えたにも関わらず、巨大木窓はまだ閉めない。

 厄介なヤツだな………


 そう思いながらも進み、もうすぐ4メートルという辺りで動き始めた。

 俺は素早くバックステップを行い緊急離脱。

 不格好だがその御蔭で助かった。


 そして目の前という距離で閉まった木窓を早速とばかりに攻撃。

 今の内に倒してしまおうとする。


 本来ならボコボコに殴って倒してしまうはずだったのだが、それは叶わなかった。

 何故なら一撃で倒してしまったから。

 流石にボスでさえ一撃だと、武器が強力なのがバレかねない。


 「うぉぉぉぉぉ、SPを大量に注ぎ込んだら一撃とか。

 まさかこんなに上手く行くとはなぁ」


 我ながら超嘘くさいが、それでも動画越しではSPを込めた量とかは分からないので大丈夫だろう。

 いや、大丈夫だと思いたい。

 中には動画を物凄く細かくチェックしているヤツとか居るらしいし、怖い気もするが……


 「取得したSDは………計算上おそらく1400ぐらいか。

 あれだけの大きさの敵なのにと言うべきか、それとも最初の地形のボスなんてこんなものと言うべきか。

 ま、安全に倒せたんだから良かった。SPは回復すれば済むし」


 とにかくSPをたくさん注ぎ込んだから、という言い訳は何度も言っておく。

 怪しいが確証はない。

 ならば「SPの御蔭」でゴリ押し出来るはず。


 俺は通路を探すものの無く、代わりに入ってきたドアが出現しているので戻る。


 ………さて、地面の色が変わっていたのは二ヶ所。

 どっちへ行くべきなのか、という悩みは無かったりする。

 SDが1000を超えて脱出できる以上、行くのは怪しいドアの方だ。


 危険かもしれないが、同時に何があるのかの確認をしておきたい。

 本当に別の地形に行くのか、はたまた強いボスの部屋はああなってるのか。

 その辺りは分からないが、行ってみないと答えは出ない。


 次に色が変わっているドアがあったとして、脱出の為のSDが確保できているかどうかも分からないんだ。

 あれを確かめるチャンスは一度しかないかもしれない。

 なら確かめるに決まってる。


 俺は大通りを戻り、そして右に見えるドアに入った。

 そのまま真っ直ぐに路地を進むと、あの色違いのドアが見える。

 俺はその前で深呼吸した後、ドアノブに手を掛けた瞬間、意識を失った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:???



 「新たに来たりしは【精魂の雫】の所持者。

 更なる進化の先は最初から示されている。

 各々方、捻じ曲げるか否か。答えを」


 「「「「「「「「「「否」」」」」」」」」」


 「ならばこの者は【精魂の雫】の先へと進化を始めます。

 更なる進化の先まで生き残る事を期待して、※※※※※に戻しましょう」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:橘八重



 「はっ!? …………なんだ今の?

 訳の分からない白い靄(もや)が話してて、黒いおかしな形の連中が答えてたぞ?

 しかも進化ってなんだよ。

 まさかあのドアを進まないと異界探索者って体が変わらないのか?」


 もしそうだとしたら、体が変わった人達は皆あの訳の分からない光景を見たって事なのか?


 「っ!? それよりここはどこだ!?」


 俺は慌てて周りを見回したが、そこはさっきの路地だった。

 そして俺は壁の前で倒れている。

 ………ん? 壁?


 「もしかして、さっきのが終わったからドアが無くなった?

 だから壁しかないのか?」


 そう考えると分かるものの、あんな事もあるんだな。

 モンスターをしっかりと倒していないと、あのおかしな光景を見ている最中に殺されてしまうぞ?

 それとも全部倒さないと、あのドアは出なかったんだろうか?


 倒した後でしか見てないから、ちょっと分からないな。


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