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 Side:橘八重



 ゆっくり休んだ次の日。

 俺は貰った装備品を持って歌舞伎町へと移動する。

 お金は稼げてないのでマイナスだが、これはもう仕方がないと諦めるしかないね。

 【疑似魔法】で相当に消費したし、SD1500の代わりにここまでの装備なら、むしろ差し引きプラスだよ。


 昨日SCCの取引所を覗いたけど、SD濃度42、異界浸食率11%の鎌が372万3000円で売られてた。

 あれを見た時、改めてSD濃度98がどれだけバカげた武器かが分かったよ。

 驚くしかない。


 とはいえ異界浸食率が全くないから、その部分はマイナスなんだよね。

 異界浸食率が高いほど、異界のモンスターにはよく効くようになるんだ。

 ゲーム的にいうと防御無視というか、異界のモンスターの魔力抵抗を打ち破る力が異界浸食率になる。


 異界に何度も持っていくと、地球の物でも異界浸食率は付く。

 ただし15%以上には上がらないという情報もある。


 だから15%以上は異界の中で見つけた物にしか付いていない。

 俺が前回手に入れた軍手は異界浸食率19%だ。

 だからこれは確実に異界で手に入れた物となる。


 ちなみに昨日手に入れた棒は、予備としてアパートに置いてきた。

 最悪はアレで戦う事になるだろうけど、なるべくなら戦いたくないなと思う。

 アレで戦うって事は装備を失くしたって事だし、となるとアロハヌス家の人に何を言われるか分からない。

 流石にそれはなぁ………


 おっと、歌舞伎町についたんだし、さっさと鳥居に行こう。

 そう思って進むと、朝も早くから異界に行く人で溢れていた。

 異界探索中は地球の時間が止まっているので、別にいつから行っても構わないはずなんだけどな?

 それでも朝が多いのは国民性か?


 そんな下らない事を考えながら俺は順番を待つ。

 混雑しているものの、どんどん波紋に入っていく訳にはいかない。

 向こうで将棋倒しになったら危ないしね。

 なので前の人が入ってから5秒待って、次の人が入っていく。

 そういうルールが出来ているんだ。


 「おら、さっさと行けや。いちいち待つんじゃねえよ!」


 こういう人も居て面倒臭いなって思うけど、こういうヤツも五月蠅く言い続ける事は出来ない。


 「だから早く行けっつってんだろ! いつまで待たせる気だ!」


 「そこのお前、あんまり五月蠅いと事情を聴く事になるが?」


 「あ、いや、別に五月蠅くするつもりはなかったんです………」


 「お前みたいなクズでも役に立つから許してやってるだけだと理解しておけ。

 調子に乗っていると、お前の命はここで無くなるぞ」


 「………」


 ま、こうなるわけだ。

 当たり前だけど、異界探索者は悪魔にとって大事ではある。

 だけど面倒で鬱陶しいなら始末されるんだよね。

 他に優良な異界探索者が居るんだし、そっちの為にゴミを切り捨てるのは当たり前でもある。

 そこら辺はシビアだ、悪魔だけあって。


 俺の順番が来たので5秒待ってから波紋に入る。

 そしてすぐに異界へと歩きだし、後ろからくる人の邪魔にならないように移動。

 異界の前まで行ったら装備などを確認し、問題が無い事を調べたら異界へ。

 これが2回目のアタックだ。




 中に入ると今回は町中? みたいな場所だった。

 建物が左右に並んでるんだが、密集しているというか、建物と建物の隙間が全くない。

 なので路地とかがなく、壁が左右に並んでいるのと変わらない印象を受ける。

 しかも建物には入り口のような扉も無かった。


 なので建物っぽい壁としか言えない。

 そんな中を進んで行くと、早速とばかりにモンスターが現れた。

 ここでのモンスターは窓の形をしたヤツだ。

 西洋によくある下が四角で、上がアーチ状になった木製の窓。

 あの形のモンスターとなる。


 木窓と呼ばれるまんまなモンスターだが、大きさと挟んでくるので結構な威力の攻撃をしてくる。

 高さ1メートル程度の木製の窓が「バタン!」と大きな音が鳴るほどの力で閉まるんだ。

 そう考えると危険な攻撃だというのが分かると思う。


 そんな攻撃をしてくる敵だが、こいつも針金人形と同じぐらいに弱い。

 何故なら………


 バタン!


 「かーらーのー、ふっ!!」


 ドゴッ!!


 相手に近づけば閉める攻撃をしてくるので、それを後ろに下がってかわした後に一撃入れればいい。

 そしてSPを使わなくても一撃で勝った。

 流石はSD濃度97だ、本当に凄い威力をしてると思う。

 もちろん口には出さない。何故なら動画で流れるから。


 俺みたいな新人が良い武器を持ってたら、誰に奪われるか分からないからな。

 それを考えたら絶対に口を滑らせるわけにはいかないんだよ。

 嫉妬の悪魔じゃないけど、嫉妬から何をしてくるか分からないし、余計な事は言わないに限る。


 視界の右上端に出ているSDを見ると、67と出ていたので10前後はくれているようだ。

 昨日インターネットを使っていたので、それでSDをそれなりに消費している。

 なのでこの数字なのは仕方ない。

 家に居ても暇だしな。


 それでもSDを消費してインターネットに接続できるだけマシだと思おう。

 使えない時はもっと暇だったんだ。

 暇だったのと暑いので、ずーっとファミレスで粘ってたよ。涼しいから。


 おっと、また思考が逸れて危ない状態になってるな。

 装備が良いからって余裕でいるのは危険だ。

 しっかりと敵に対処しよう。


 そう気合を入れ直して進むと、右の建物に入り口のようなドアを発見した。

 アレがここの通路なんだけど、ドアを開けて通路に進むってのもなぁ。

 という気はする。


 普通はドアって部屋とかに入る為の物なはず。

 それが通路に行く為のものだから、ちょっとだけ微妙な気分になる。


 とはいえ通路も調べないと何があるか分からないしな、前回みたいな事もあるからしっかりと調べよう。

 できれば強いモンスターが居てほしい。

 ここまでの装備があるなら多少強いモンスターでも勝てるはずだ。


 ドアを開けて通路の先を見ると、どうやら路地っぽくなっているようだ。

 俺はその路地を慎重に歩いていく。

 色が変わっていないかは、特にしっかりと調べないといけない。


 ボス的なモンスターが居るのに先に進んでしまうのは勿体ないからな。

 ここ異界は先に進むか脱出かの二択しかないので、しっかり調べて行かないと損をする。

 ベテランになれば違うんだろうが、俺達みたいな新人はしっかり調べないと収支がマイナスになる事も多い。


 そういう人の動画も見るし、中には寄付というか援助して貰ってる人もいる。

 自分の推し探索者を持っている人も居るので、世の中って不思議だなーって思うよ。

 ちなみにアパート管理人の七尾はるさんも、元は大人気探索者だった。

 だからこそ漏らしたのは最悪だったわけだ。


 ファンが離れたわけじゃないんだけど、それだけ多くの人に推されてたからこそ、アンチがここぞと叩きまくったらしい。

 結構な人数が悪魔の人達に始末されたらしく、それで強制的に鎮火したとネット記事にあった。

 本当アンチって碌な事をしない。


 「おっと、地面の色が変わってるのを確認。

 どうやらこっちは別の地形に行くところみたいだ。

 という事は戻って先へと進むか」


 右の路地は別の地形に行く為の場所だったようだ。

 ただし一つの地形の中に何ヶ所もある場合があるので注意が必要となる。

 地面の色が変わっているのを見つけたからといって、安心しておざなりになるなと講習でも習ったからな。

 地面も慎重に確認していこう。


 そういえばこの路地、全くモンスターが出てこなかったな?

 たまたまなのかワザとなのか、そこがちょっと気になるところだ。

 休めるようにしてあるのかもしれないし、そう思って休むといきなり大量に出てきかねない。


 異界の先へと進むと、モンスターハウスがある場所も出て来るので、実際に大量のモンスターと戦える実力がないと先に進む事は出来ない。

 とはいえ、そんなのはトップ層の行っている場所ぐらいだけどね。


 路地から戻った俺は、再び真っ直ぐの道を歩いていく。

 するとモンスターを倒した後で、左の建物に入り口を発見。


 俺はそのドアを開けて路地を確認。

 先程と変わらない路地だったので中へと入る。

 そして進んで行くと……


 ガンッ!!


 「あっぶねえ!!

 っていうか、モンスターが上から降ってくるのかよ、ここ!!」


 目の前に降ってきたから良かったものの、もし頭の上なら死んでたぞ。

 最初の地形にしては厳しいトラップじゃないか?

 文句を言っても始まらないから戦うけどさー。


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