0016
Side:橘八重
急速に集まっていた白い冷気が霧散し、俺は悪魔の【魔法】から助かった。
入り口を見るとそこには無表情メイドが居たが、どうやら彼女が助けてくれたらしい。
「お前………いったい誰に断って部屋に入ってきたの?
外には私の側近がいたはず」
「ああ、あの役立たずですか。
あのような者など私の相手にはなりませんので叩き潰しておきました。
もっと良い者を雇う事をお薦めします」
無表情で淡々と排除したとか言い出すメイド。
やっぱりこのメイドはおかしい、明らかに実力が変だ。
先程の【魔法】だって一音節だけで発動したし、それでこの長女の【魔法】を潰してる。
明らかに高位悪魔だとしか思えない。
なんでそんなのがメイドをやってるんだ?
「ふふ」
「何がおかしいというのかしら?
それより次期当主の側近に対する暴行を含めた事、まさか許されると思っているの?
たかが一メイドの分際で」
「許されるも何も、そもそも私は罪には問われませんし、その事を考える意味もありません。
そのような無意味な言葉にとりあう理由もありませんね」
「なっ!?」
「その通りだ」
その言葉と共に、シャルヴィオさん始め、多くの人がゾロゾロと部屋に入ってきた。
俺のオンボロアパートの部屋より広いけど、この部屋そこまで広くないのに多くきたな?
ちょっと狭い。
「御当主様! なぜここに………!?」
「そもそもだが、私がお前の浅はかさを知らないとでも思っていたのか?
今までは上手く誤魔化してこれたと思っているようだが、甘すぎるわ。
その程度の精神防壁で読心されぬと、本気で思うておるところが嘆かわしい。
彼のように人間ならば分かるがな、お前は悪魔なのだぞ」
「そ、そんな………では、今までの事は」
「全て筒抜けに決まっておろう。だから彼には囮になってもらったのだよ。
そして今回はここ……………ここに地球から取り寄せた監視カメラという物を忍ばせた。
つまりお前の暴行は全て映像として映っておる。
………何が言いたいか分かるな?」
「そ、それは…………」
「お前は元々からして当主になれる器ではなかった。
それも知らずに継げると思うておるのだからな、頭が悪すぎるわ。
暗闘が得意だと思い込んでいたのであろうが、お前のいう暗闘など子供の浅知恵よ。
貴族の暗闘とはもっと欲に塗れた狡猾なものぞ」
シャルヴィオさんが問い詰めるように言うと、長女はプルプル震えるだけとなった。
「…………ああーーーっ!!!!」
「遅いですよ」
ズダァン!!
何がどうなったのか知らないが、俺を襲おうとした長女を無表情メイドが割り込み投げ飛ばした。
っていうか、柔道の達人みたいな早業だったな。
このメイドってなにも………?
ドサッ!
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Side:シャルヴィオ・アロハヌス
「むっ? やられ過ぎていたか。
人間の体は脆いと聞くが、あの程度の攻撃でも倒れてしまうほどだとは」
「私がお客様をお連れいたします」
「ああ、すまぬが頼む。
おい、愚か者を捕縛して地下牢に幽閉しておけ。
こやつは最早アロハヌス家の者ではない」
「ハッ!!」
「は、放せ! 私は次期当主。
次期当主なのよ!!!」
「愚かな。妄想に逃げ込むとは………」
「申し訳ございません。
愚かな者を生んだ私の所為でございましょう」
「我の半分も使われておる以上、我の中にも愚かさはある。誰の所為でもあるまい。
……っと、もう彼を連れて行ってしまわれたのか?
まったく、御先祖様も余程に飢えておられた様子」
「「「「「御先祖様!?」」」」」
「そうか、教えておらなんだな。
あの方こそ初代アロハヌス家当主である、エルトアリア・ウェル・デヌートゥラ・アロハヌス様だ。
つまり女王陛下と一対一で殴り合ったという、最高位悪魔の御一柱となる」
「「「「「えぇーーーーっ!?!?!}」」」」」
「な、なぜそのような方がメイドなどに………」
「愚か者が必死なのが面白いからだそうだ。
ちなみに最高位悪魔であらせられるので、我の精神防壁すら通用せず筒抜けだ。
我は当主になった際に教えられ、ガックリしたのを覚えているよ。
何もかも歯が立たなかったからな。
その後は色々と葛藤もあったが、今は御先祖様がおられて恵まれていると思っておる」
「その御先祖様は先程………」
「ああ、彼が気を失ってしまったのでな。
これ幸いと若い果実を貪っておられよう。
こういった機会に恵まれる方でもない故にな。
だからそっとしておくように」
「「「「「………」」」」」
「羨ましいのは分かるが諦めよ。
邪魔立てすれば、どんな目に遭わされるか分からんぞ。
そして我は命が惜しいからな、御先祖様とは敵対せぬ。
邪魔するのであれば覚悟してするようにな」
「「「「「………」」」」」
まあ、これで納得するであろう。
とはいえ、我も羨ましい事に変わりはないのだがな。
とはいえ御先祖様の邪魔は出来ん。
本気で滅ぼされかねんのだ。
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Side:橘八重
「知らない天井………じゃないな」
ラノベの有名なセリフが吐けると思ったんだが、それは甘かったようだ。
ここはおそらくだけどアロハヌス家の屋敷の中だろう。
何故かベッドの上で寝ているが、天蓋付きの異様に大きく豪華なベッドで寝てるぞ?
これが客用のベッドなんだろうか?
「流石にこんな豪華なベッドが客用であるはずがないな。
だとしたら貴族スゲーどころじゃないし」
「そうですね。ここは私のベッドです」
「へっ?」
上半身を起こして左を見ると、そこには椅子に座っている無表情メイドが居た。
っていうか、メイドのベッドが天蓋付きなの?
それってどう考えてもおかしいだろ。
この人は多分アロハヌス家の関係者だ、しかも相当に重要な立場の。
もしかしたら当主の妹とか、そんな感じじゃないのか?
「残念。そんなに下っ端ではありません」
「いやいや。
心を読まれないようにしているはずなのに、自然に読むの止めてくれる?
あと当主の妹を下っ端扱いって色々おかしいから」
「ですが下っ端なので仕方ありません。
私の名はエルトアリア・ウェル・デヌートゥラ・アロハヌス。
アロハヌス家初代当主であり、虚界に十三柱しかいない最高位悪魔の一柱ですよ」
「妹が下っ端じゃないじゃん!
当主でさえ下っ端じゃんか!!」
「そうですね、とはいえ表に出ないので気楽な立場です。
自分で興した家の中で、当主争いという娯楽を見ているぐらいですし」
「娯楽!? 当主の座って娯楽なの!?」
駄目だこの人、色々とブッ飛び過ぎてる。
突っ込んでも疲れるだけだし、早くかえ…………
「あのー…………俺、裸なんですけど?」
「ええ。そうですよ。
私が美味しくいただきましたので。
やはり童貞は素晴らしいですね」
「………」
あれ? って事は、俺って寝ている間に襲われたの?
まったく記憶に無いんだけど……。
いやいや、それより何より普通に犯罪じゃね?
だってこれ強姦でしょうよ?
「問題ありません。私達サキュバスにとっては唯の食事です」
「いや、そうかもしれないけど、俺は人「食事です」間、あ、はい」
なんだか有無を言わせないという一言が飛んできたので黙ろう。
逆らっちゃいけない気がする。
というか最高位悪魔なんだから、そんなレベルじゃないな。
おそらくだけど逃げられないレベルだ。
「ええ、よく分かりましたね。
今までに味わった事が無いぐらいに美味だったので、これからもちょくちょく食べさせて頂こうと思っています。
あと、拒否権はありませんので」
「おぉぅ………マジか」
どうやら逃がしてくれない最高位悪魔さんは、拒否権も与えてくれないらしい。
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