↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/191

0015




 Side:橘八重



 俺が一通り話し終えると、この場に居る人達は一応納得したようだ。

 その後も少々の質問を受けたが、それも終わって俺は一息吐いた。

 やれやれとは思ったものの、まだ全てが終わっていないのを忘れていた。


 「それでは話は終わったし、後は【火炎嵐】を見せてもらうだけだな。

 屋敷の庭でいいだろう」


 「あの、あれって思っているよりも強力なのですが、大丈夫でしょうか?」


 「ああ、貴族の屋敷は基本的に魔力耐性の高い作りになっている。

 なので何も問題は無い」


 「そうでしたか。それは良かったです」


 「ふっ」


 さっきから長女はずっとコレなんだよなぁ。

 こっちをバカにしているというか、見下しているのが丸分かりなんだよ。


 なんというか、本当にこんなのを当主にすんの? ってしか思わない。

 俺が腹が立つかどうかじゃなくて、態度に出しちゃいけないはずだろ。

 貴族なんだし。


 俺はそうとしか思わないんだけど、悪魔の世界の貴族は違うんだろうか?

 その割には他の人は態度に出してないんだよなぁ。

 だからどっちかって言うと、あの長女がポンコツなだけな気がする。

 それとも当主の座を継げる余裕の現れだろうか?




 「さて、庭に出て来たので………ここ。

 ここを中心にして【火炎嵐】を使いたまえ。

 あの子の【火炎嵐】には独特の癖がある。

 それを見ればすぐに本物かどうかが分かるからな」


 「分かりました」


 俺は指定された庭の中心を見据えて【疑似魔法】を放つ準備をする。

 視界の右上端をチラリと見ると、SDは1612と出ていた。

 脱出で1000SD使うから、減った端数は心を守るのに使った分が減ってるんだろう。

 さて、ここからどれだけ減るのやら。


 「では、行きます。

 デウ・オスム・ディ・アオグ・ガ・ソレイ・テス・オルアグ!!」


 俺が魔力を篭めるようにして発動すると、庭の中心から五本の炎が渦を巻くように吹きあがった。

 それを見て「おぉ! 兄貴のだ!!」と喜ぶエージュラさん。

 この人にとって次期当主だったジュデアルさんは良い兄だったみたいだ。

 当主の座が関係ないからかな?


 俺はある程度の所で【火炎嵐】の【疑似魔法】を終えると、当主であるシャルヴィオさんが拍手をしながらこちらへ歩いてきた。


 パチパチパチパチパチ!


 「よくあの子の【火炎嵐】を使ったよ。君が見た記憶は我が愚息で間違いない。

 炎が吹きあがりながら、全体が渦を巻くのが正しい【火炎嵐】の【魔法】だ。

 しかしあの子は一本一本を独立させて渦を巻かせる。

 何故ならその方が威力が高いからだ。しかし制御が難しくてね。

 あれは高難度なのだよ」


 「それだけではありません。

 あの子の訛(なま)った独特の発音の仕方。

 そこまで完全に再現されては、間違えようはずもありません」


 「え、訛(なま)ってる………んですか?」


 「君達人間には使えないだろうから分からないだろうが、あの愚息の詠唱は思いっきり訛(なま)っているのだ。

 ワザと恰好を付けようと、愚かな練習を繰り返していたからな。

 その所為でおかしな発音になってしまっているのだよ。

 それを格好いいと言い続けていてな」


 「本当に兄上の【火炎嵐】だったとは………。

 真に申し訳なかった」


 ズガン!!


 頭を深々と下げて謝ったウェルモネヌさんの後頭部に、容赦なくシャルヴィオさんの左肘が直撃した。

 とはいえ凄い音が出たけど、大丈夫なのか?


 「~~~~~~っ!!?!?!」


 「申し訳ないで済むか、愚か者めが。

 アロハヌス家の名を持ちながら無礼な事をするとは情けない。

 世が世なら即刻処刑ぞ」


 「も、もうし、わけ、ござい、ません………」


 地面でorz状態なり、後頭部を両手で抑えて足をバタバタさせながらも必死に謝るウェルモネヌさん。

 俺は音が凄すぎて何一つとして笑えない状況だ。

 マジでとんでもない音がしたしな。笑うよりもドン引きだ。


 「相手が人間であるからな、性欲の捌(は)け口にでもなれとも言えん。

 それを言うと、お前が悦ぶだけで何の罰にもならんからな。

 それよりも屋敷の中へと戻るか。まだ話の全ては終わっておらん。

 とはいえ少々の自由時間とする」


 そう言われたので、俺は近くに居た無表情メイドの案内についていき屋敷へと戻る。




 何故か先程とは違う小部屋に通されたけど、ここで待つ必要があるらしい。


 「少々の自由時間という事は、ドレスの着替えなど色々あるのです」


 「はあ、そうなんですか。

 色々と着替えなければいけないって、貴族の方って大変なんですね」


 「それが普通です。

 そちらには貴族位の方が居ないので分からないでしょうが、場面が変われば着る物も変える。

 それが当たり前なのです。

 ドレスの色や柄に丈の長さなど、全てが貴族家当主からのメッセージなのですよ。

 貴方には読み解けないでしょうが」


 「すみませんが、サッパリ分かりません」


 そんな事を無表情メイドと喋っているが、実はこの部屋に来てすぐに紙を見せられている。

 俺はそれを読みながら適当に話し、そして無表情メイドに紙を返した。

 そこにはシャルヴィオさんからの指示が書かれていたからだ。


 「それではこちらに呼びに来るまでお待ちください」


 そう言った後、無表情メイドは俺の顔に自分の顔を近づけて来た


 「メイドとして生きていくには無表情が一番なのですよ」


 「へ?」


 ガチャ………パタン


 …………あれ? 俺SDを使って心を守ってたはずだよな?

 ………読まれてたの?


 ………いや、変だ。

 あの長女に対して失礼な事を考えていたし、肘打ちにドン引きしてたのに無反応だった。

 となると無表情メイドがおかしいというか、高位悪魔って事になる。


 メイドが高位悪魔? って思うも、武装メイドとかアサシンメイドとかアニメに居るしな。

 それが現実でも変ではないと思う。


 思うが………マジかよ。

 あのメイドが一番の要注意人物だとは思わなかった。

 参ったなぁ……。


 ガチャ………パタン。


 いきなりドアが開いて誰かが入ってきたと思ったら、さっきの性格の悪い長女だ。

 いったい何しに来たんだ?


 「時間が無いからすぐに用件だけ言います。

 お前は私の物になりなさい」


 「え? 嫌ですけど」


 「そう。素直でよ………今、なんて言いました?」


 「嫌ですけど。

 だって俺は異界探索者ですし、今日明日と休んで、明後日には異界に行かなければいけないんです。

 貴女の物になっている暇なんてありませんので」


 「そう。

 まったく愚かしいにもほどがあるわね」


 「ガッ!?」


 ウェルモネヌさんよりも遅いが、それでも反応が間に合わなかったくらいに速い。

 でも何で首を鷲掴みにするんだよ。またコレか。


 相変わらずだけど、悪魔って反則的に強い。

 これなら地球の軍が負けたのも納得する。

 そもそも銃とかミサイルとか、全くと言っていいほど効かなかったらしいし。


 「ぐっ、がっ、ごほっ!」


 「ほらほら、早く私の物にならないと死ぬわよ?

 それともここで死にたい?

 お前が無礼を働いたと言えば、殺しても問題ないのだしね」


 「こ、とわる!

 おま、え、なんぞ、みりょく、なしだ!

 ハハッ!」


 ドゴン!!


 「ぐぶぅぉえ!!」


 「まったく、人間如きが何様のつもりなのかしら?

 己が羽虫程度であるとも知らないようね」


 「その、はむしに、ほんきで、おこってるおまえ、はなんだ?」


 ドゴォ!!


 「ごぶぉっ!!!」


 さっきから殴ったり膝蹴りだのと好き放題やってくれやがって……!!


 「はあ、ここまで人間というのが不愉快な生き物だとしりませんでしたわ、ね!」


 ダン! ズドン!!


 「ガハッ!?!?」


 壁に押し付けられた後、逃げ場なしに蹴りやがった。

 くそ、ふざけすぎだろ、この女。


 「よほど死にたいみたいですから、最後にもう一度だけ聞いてあげましょう。

 お前は私の物になるわね?」


 「はぁ、はぁ。

 喧嘩は同じレベルの者同士でしか起きない。

 羽虫に喧嘩を売ってるお前は程度が知れるなぁ?」


 「そう、では死ね。

 ヴルズ・アルム・ゲ・ウィズム・オグ・スル・ディグラ!!」


 突然俺の周りに白い冷気が集まってきた。

 これマズいんじゃねえの!? マジで死にかねないぞ!!


 ガチャ


 「ヲルヌ」


 パキィン!!


 その音と共に急速に集まっていた白い冷気が霧散した。

 俺はどうやら助かったみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。