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 Side:マイケル・リフォール



 ユタに帰って来てゆっくりしていたが、やっぱり家族には派手に笑われちまった。

 そして休みも終わったのでソルトレイクにある基地へ。


 今は戦争も無いってんで、海兵隊といえども地元の基地にいて問題ないんだよな。

 まあ、ほとんどの軍人は異界に行ってるから当然だけど。


 空母や潜水艦に乗る訓練も行われているが、オレはああいう訓練は免除されてる。

 人気があるのと、軍が広告塔みたいに使いたいからだろう。

 オレとしては海に行く訓練が無いだけありがたいってくらいだ。

 かつてはやったんだし、何となくは覚えてるけどな。


 「マイケル・リフォール曹長、ただいま戻りました」


 「曹長、短い休暇は楽しかったかね? それではこれからの事を詰めよう。

 まずは異界探索についてだが、二人の助っ人が来てくれる事になった。

 悪魔から装備品を借り受けた二人だがね、その二人も預かる事になって私の胃も五月蠅くなったよ」


 「そりゃ御愁傷様です。

 それよりも二人の助っ人のデータはあるんですか?」


 「その二人もそろそろ来るはずだ。待っていたまえ。

 そもそも異界に行く前に連携訓練は行っておかねばならんだろう?」


 コンコン!


 「連絡のあった二人が来られました」


 「入ってくれ」


 ガチャッ!


 「失礼します。

 カルロス・アドゥガル、ただいま到着しました」


 「失礼します。

 クリスティナ・ヨープキンス、ただいま到着しました」


 入ってきたのは筋骨隆々なスキンヘッドと、なんかモデル体型の美人だ。

 スキンヘッドは分かるんだが、あの美人はどういう事だろうな?

 まさか軍が見栄えで選んだなんて事は無いだろう。

 もし本当ならオレ一人に戻してもらった方がいいかもな。


 「二人ともよく来てくれた。

 それと曹長、明らかにクリスティナ中尉に対して向けていい目をしていないぞ。

 止めたまえ」


 「ち、中尉!? これは失礼いたしました!

 自分はマイケル・リフォール曹長であります!!」


 「普通は中佐である司令に対しての態度だと思うのだけれど………まあ、いいでしょう」


 「俺の事はカルロスと呼んでくれ曹長。

 一応階級は同じ曹長だ」


 「カルロス曹長、よろしくお願いします」


 「堅い、堅い。

 チェリーじゃねーんだから、そんな堅くなってもすぐに力尽きて萎(しな)びれるだけだぜ?

 それじゃあ中尉は喜ばんだろ」


 「あらあら。そんな事を言っていると、つい右足が動いてしまうかもね?」


 「………」


 右足ってどういう事だ?


 「リフォール曹長は分かっていないようだが、クリスティナ中尉は今までに8度、男性兵士の股間を蹴り上げて来た事があってな。

 一部では「ナッツクラッシャー」と呼ばれている」


 「………」


 マジかよ………この美人に鼻の下を伸ばすと潰されるわけね、とりあえず近づかないでおくか。

 どこに地雷があるか分かんねーし、適度な距離にしとこう。

 潰されたくねーしな。


 「下らない事を言ったりしなければ大丈夫よ。

 ただし言った瞬間には右足が動いてるかもしれないけどね?」


 これからの仲間を脅しにきたよ。

 こういう訳アリを連れて来るの止めてくれねーかな?

 オレの仲間ってのは、お払い箱になった奴らなのか?

 だったらカルロスも……


 「曹長、心配すんな。オレは掘られるのが好きであって、掘る側じゃねえ」


 コイツもかよ………どうなってんだ? 人選が明らかにおかしいだろ。


 「どうやら曹長もおかしさに気づいたようだが、カルロス曹長はLGBTQで五月蠅い連中から押され、中尉は女性人権団体の五月蠅いのから押し込まれた人材だ。

 これでも二人ともその辺りを分かってくれているのでマシだぞ?

 最初は真正の危ない連中を押し込もうとしてきたらしいからな」


 「OH………」


 「異界の事を甘く見ている証拠よね。

 私達が全員黒人というのも、どこかの団体が喚いた結果でしょうよ」


 「だろうな。

 オレはそんな連中とは関係ないし、誰にも迷惑はかけてねえってのによ。

 いきなりバラされてこっちに飛ばされんだぜ? やってらんねーっての」


 「まあ、この基地にいるだけマシだろう。

 ここでは特にどうこうと言ってくる者もいないからな。ゆっくりと羽を伸ばしてくれたまえ。

 それより今日は連携訓練だ。細かい事は全て君達に任せるので好きにしてくれ。

 こちらから出来るアドバイスなど無いからね」


 「「「はっ!」」」


 敬礼を司令に返すが、本当にこの2人と上手く戦って行けるのかね?

 とにかく連携の構築と確認だし、その前に個々の身体能力を把握しておかないとな。

 こういう地味な事を無視すると、命の危機に直結する。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ウェルリック・エルモン



 「君に来てもらったのは他でもない。

 傲慢の悪魔達から我々に対して“プレゼント”があった」


 「“プレゼント”………ですか。

 それはそれは面倒臭い物なのでしょうね」


 「あれらの考えは分からぬが、我々としてはその“プレゼント”を十二分に活かす気だ。

 SD濃度で100を超える物だからこそ、進化している君が使うべきであろう。

 北のエルフに負けてはおれぬからな」


 「<湖の精霊の加護>。

 確かに私はそのような言葉の者に進化しましたが、私自身はランスロットではないのですがね?」


 「そんな事は重要ではない、我らが国が遅れている事が問題なのだ。

 アメリカが人海戦術でやっておるが、我々にそこまでの国民はいない。

 それぞれの生活もあるのでな、あそこまで思い切った事は出来んのだ。

 それでも五月蠅い方々は居る。君も分かるだろう?」


 「ええ、それはもちろん。

 こちらにも五月蠅く言ってきますからね」


 「と、いう事だ。

 悪魔どもが何を考えているかなど知らんが、こっちは上手く使えばよい。

 敬虔なる信徒とて、今は黙って耐えねばならぬ時だ。

 彼奴(きゃつ)らを討ち滅ぼすその時まで、我らは何であっても利用せねばならん」


 私は目の前の男に頷きを返すが、心の底では呆れ果ててしまった。


 未だに悪魔に対して排除を求めている者は居る。

 特に敬虔な連中は未だにそうだ。

 だが社会構造の変化は宗教の教義など容易く押し流す。


 かつての環境破壊が正しいのか?

 戦争や紛争が治まらなかったのが正しいのか?

 燃料の奪い合いをしていたのが正しいのか?


 かつて宗教が力を持ってから数千年、世が正しくなった事があったかを考えれば分かる。

 当初は悪魔に対して強く反発していた信仰者も気づくのだ。

 今の方が世は平和で豊かになっていないか? とな。


 そして豊かになっていく社会を見て愕然とする。

 自分が信じていたものとは、いったい何だったのかを。


 そして歴史を紐解けば理解する。

 信じていた教義が、神への信仰が、争いを起こしていた事に。


 では守るべき教義とはなんだ? 神への信仰とはいったいなんだ?

 悪魔が来てそれを突きつけられた者は非常に多い。


 皆、妄想の中では生きていけないし、それ故に現実に生きている。

 現実を生きながら夢に浸れる者は多くないというのに………


 目の前の“首相”という肩書の者は、未だに夢を見ているようだ。

 神への信仰と大英帝国という2つの夢をね。


 器用だなとは思うが、愚か者とはこんなものだ。

 動物園の白い猿だと思えば、腹も立たない程度でしかない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:リュウ・リンシェン



 「よく来たな、歓迎する。が、すぐに用件を言わねばならん」


 「お伺いしましょう」


 「日本に潜伏している工作員どもは派手な失敗をしているようだ。

 まあ、“あの者”にまともな情報を上げれば始末されるのでな。

 誰もまともな情報など上げんし、何より側近が変えてしまう。

 とはいえ、そんないつも通りの事はどうでもいい」


 私は黙って聞く姿勢を維持しているが、いちいち前置きが長いのにはうんざりする。

 私に愚痴を溢(こぼ)さず、さっさと用件だけ言えばいいものを……


 「君には怠惰の悪魔から貰った武具を持って、更なる深い所まで進んでもらう。

 厄介な事に我々には契約をしてはくれんそうだ。

 何でも契約というものをすれば身体能力が上がるそうだが、東夷の倭人が良くて我々が駄目などとは意味が分からん」


 まだこんな事を言っている者が居る事に眩暈(めまい)がしてきそうになる。


 確かにあの島国は後塵を拝していたであろうが、それは何百年も前の事でしかない。

 我らが祖先が怠惰であった所為で追い抜かれたのであろうに、未だに我らの方が上だと思っているとは……


 「なので必ずや我らの方が早く深奥へと行き、中華ここにありと示さねばならん。

 分かったかね?」


 「はっ! 命、拝領いたしましてございます」


 「うむ。我らこそが頂点であり中心なのだ。

 それを今一度、世界に見せつけねばならんからな」


 そんな愚かな妄想を見せびらかしたいのか?

 だから我が国は愚か者の集まりだと笑われるのだ。


 己が裏の頂点として国や人民を操っておると思っておるのであろうが……所詮は失敗した祖先の焼き直しか。

 今の時代に中華思想など、呆れて物も言いたくなくなるわ。


リアクションありがとうございます

ハイファンタジーに「元奴隷闘士のおかしな狩猟生活」という作品を投稿しました。宜しければご一読下さい。

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