0112
Side:エルトアリア
「イージェルめ、余計な事を……」
まさかイージェルがインタビューとやらを受けるとは思っていなかったが、己の本性を晒すとは思わなんだな。
あの者は温和な姿を見せてはいるが、実際の中身は苛烈な者なのだ。
そもそも我の前に村での期待を一心に背負っていた者だからな。
だからこそ、あの年寄りどもの醜さもよく知っている。
「彼がこの場に居なかった事は、良かったのか悪かったのか……。
ちょっと微妙なところですね。
それはともかく主様、本気で耐えられないようですけど大丈夫ですか?
流石に笑っていられないようなのでお聞きするのですが」
「駄目だ。耐えるとかいう以前の問題であろう。
何と言えばよいか………こちらがどれだけ魂を守ろうとしても、それらが全て無かった事にされるというか、無防備にされてしまうのだ。
まるで<魂壁破壊鎖>を使われておるような気分になる」
「それは………あまりに危険なのではないですか?」
「危険と言えば危険だが………」
しまった、話の持って行き方を間違えたか。
先程からグラドウェムが「してやったり」という顔をしておるし、エギルターサは「ニヤニヤ」しながら聞いてきておる。
こやつら分かったうえで聞いてきておるな?
相変わらずだが、諦めた方が早いか。
多少は我の事を案じてもおる故にな。
「お前達が期待している通り、充足という意味でのみ無防備にされるのだ。
おそらくは<精魂の雫>の影響であろう。
己の魂の喜びや快楽に関しては、全く防ぐ事が出来ん。一切だ。
これは明らかにおかしい」
「つまり………あれ? 悪い事は何一つ無いのでは?」
「ですね? 魂を喜ばせるのは、健全な魂を持つうえで何より重要なこと。
それが毎日得られるとは………凄まじい効果としか言えません」
「ですよね? それでまずます深みに嵌まっていくのでしょうけど、元々は自分が襲ったのが原因です。
そこは甘んじて受け入れねばならないところですよ」
「分かっておる。
そもそも<精魂の雫>とは分かっておらなんだが、我とて喰った相手だ。
責任ぐらい持つが…………どうしてこう、毎回生娘のようにされてしまうのか。
そこが納得いかん」
「それこそ良い事ではありませんか?
主様の積もりに積もった魂の穢れも、日に日に少しずつとはいえ減っておりますよ。
お綺麗になられております」
「まあ、元々からしてやり過ぎていましたからね。
彼の御蔭で綺麗になっているなら、それは悪い事ではありませんよ。
もしかしたら、あの女王も綺麗になるんですかね?
最高位悪魔なのに魂が綺麗というのも凄いですけど……」
「最高位に至れる方というのは、良い悪いは別にして相応に穢れますからね。
それを嫌ってならないイージェル殿みたいな方も稀に居ますけど」
「あやつはな………村の中でも唯一と言っていい、我と分かり合える者であった。
我はイージェルがおらねば、もっと早くに行動していたであろうよ。
それは間違いのない事だ。イージェルも苦労していた故にな」
「辺鄙な村で期待を掛けられるというのも厳しいですね。
昔ながらの思考に凝り固まっているからこその結果ですが……」
「強い者を生む、ですもんね。
流石に時代錯誤が過ぎるというか、動乱と言うか混沌の時代のままの考えで居られても………って感じです」
本当にあの村の年寄りはそうだった。
かつての混沌のままに生きておった所為か、とにかく強き者を、という思いが強すぎる連中であった。
だからこそ我が滅ぼす時にすら連中は笑っておったのだ。
我らを滅ぼして更に先へ行けと、笑いながら死んでいった姿は今でも忘れん。
だからこそ我は怨みと憎しみで素材にしてやったのだからな。
最後まで我の心も何もかもを、強くなる為のモノとしか見ていなかったのだ。
ならば己らもモノ扱いされればよい。
既に滅ぼした後であったが、それでも残った肉体は素材に変えてやったからな。
そこまでせねば我の留飲は下がらなかったとも言えるが、そもそもあの当時で考えても頭のおかしい連中なのだ。
あの当時は既に強い個を生み出すより、数多くの者の連携に変わっていた時代だ。
個の力では数の力に対抗できぬ故にな。
そのような時代において、怨みや憎しみで最強の個を作り出そうとした。
流石に頭がおかしいし、その個に殺されて笑うなど狂っておる。
そうとしか思えぬ連中であった。
流石に長老を皆殺しにしてからは、おかしな事をやる者は居なくなったが……。
今でも何故あれほど異常だったかは分かっておらん。
あの村でも年寄りだけが狂っておると言えるほどであったからな。
それ以下の年代は普通なのだ。
明らかに変であろう。
「確かに冷静に考えると変ですけど、もう一人も残っていないので聞けませんし、仮に生きていてもまともな答えが返ってくるかは……」
「おそらくまともな答えは返ってくるまい。
もしかしたら他の悪魔どもに何かをされていたのかしもしれん。
精神的な何かをな」
「その可能性はありますね。
かつての混沌の時代であれば、何をされていても不思議ではありませんし」
そうなのだ。
我も知らぬ混沌の時代は何でもアリだったと聞くしな。
その時代こそが古代悪魔の最後の時代とも言われる年代だ。
メチャクチャな事をしておった可能性も否定できん。
「っと、朝食が終わったか。
そろそろ我は向こうの部屋へ行くかな。
何かのゲームでもしておるのであろうし」
我は立ち上がると、さっさと移動する事にした。
今は特にする事も無いゆえ、我も暇なのだ。
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Side:エギルターサ
「主様はいそいそと移動しているのを分かっていないのでしょうか?
どう考えても彼の下に早く行こうという感情が隠しきれていませんよ」
「さっきも言いましたけど、魂が綺麗になってきていますから猶更では?
あんな効果が<精魂の雫>にあると知られたら、尚の事ヤバいと思うんですけど……」
「魂が穢れすぎると壊れますからね。
私達もそうならないようにと色々気を揉んできましたけど、その甲斐はあったという事でしょう。
まあ、私達が苦労していた事、それ以上を一瞬でされると腹立たしさも無いではないですけどね」
「分かりますが、その時は私達がどうこうなる前に少し頂けばいいだけです。
主様も嫌とは言われないでしょう。
既に女王にはお認めなのですし」
「でしょうね。私達もお零れに預かれるのは、そう遠くないと思います」
良くも悪くも彼を中心に回る。
流石は<精魂の雫>であり、サキュバスキラーだと思います。
本人が意識していないというか、理解していないところが何とも言えませんが、理解していないが故に悪用しませんからね。
御蔭で助かっているとも言えるでしょう。
それこそ力を使って年寄りどもを扇動されたりしたら、禄でもない結果にしかなっていませんからね。
年寄りには地味に面倒なのが多く、相手をするのも嫌な連中が多いですから。
そういうのが関わって来ないようにしておかないと……
「それって大丈夫ですか? 私は絶対に関わってくると思いますよ。
あの面倒な連中が何もしないなんて事があるとは思えないですし、既に下らない事をしている可能性もあります」
「それが何なのかは………事前に分かれば苦労はしませんか」
だからこそ面倒で厄介な連中なのですし、今までも面倒な事に巻き込まれてきたのです。
そう考えると動いていないというのはあり得ませんし、案外と女王の所などに行っている可能性もありますね?
<共魂の契約印>を彼にと言っていた割には、その後に動きがありませんし……
何となく政務が大変になっただけでは無い気がしますね。
リアクションありがとうございます




