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 Side:マイケル・リフォール



 「ハッ! 自分が異界で出会った日本人はこの2人で間違いありません!」


 オレは今とある場所に来ている。

 まあ、とある場所っつーか国防総省なんだけどさ。

 なんでオレみたいな現場の下っ端が、こんなお偉いさんの居る所に来る羽目になるんだか。


 アメリカは広いからか、州に一つ異界に行く為の門がある。

 だから異界に行く為にわざわざ一ヶ所に集まる必要は無い。

 何故か日本はそうなっているが、アレは意図的に制限していると聞く。


 利便性よりも、入り口を制限する事でのセキュリティ強化が目的だ。

 他の国の連中が入れない、向こうで悪さをさせない為だと言われれば分からなくもない。

 悪魔を怒らせるのは、どこの国だって恐れてる。

 まあ、銃弾やミサイルが効かない相手だからな。

 当然だ。


 「この2人組のうちの一人、男の方は重要人物だ。

 最高位悪魔の一柱と契約をしている人物であり、世界中の情報機関が注目している。

 我々も悪魔から聞き出せたが、契約をした段階で何かしらの身体能力の向上はあるそうだ。

 問題はどれほど向上しているか分からない事にある」


 「身体能力の向上って、そんな反則な事が?

 じゃあ、こいつはこんな優男なのにスーパーマンみたいに?」


 「流石にそこまででは無いだろうし、ソンゴクウみたいにもならんだろう。

 それはともかくとして、その身体能力の向上もどこまでかは分からんそうだ。

 我々の所は憤怒系の悪魔だからな。

 色欲の契約に関しては詳しくないらしい」


 「色欲の契約ですか……」


 「それぞれの悪魔にそれぞれの契約印があるそうだ。

 もちろん悪魔に共通した契約もあるそうだが、例の彼、ヤエ・タチバナが施された契約は、色欲の悪魔に伝わる非常に古い契約だと聞いた。

 それ故に詳しい効果までは分からんらしい」


 「なるほど。

 それぞれの悪魔によって契約が違うのなら分からないのも仕方ないですね。

 彼が重要人物なのは分かりましたけど、それが自分に関わりある事なのでしょうか?」


 「残念ながら関わりが出来てしまったのだよ、もちろん君自身の所為でね。

 彼が重要人物なのは契約をしたからだけではない、彼が悪魔から武具を融通してもらったからだ。

 つまり、我々も手助けを受けられる可能性がある。

 それを話したところ、似たような物なら構わないとの事だった」


 「おお! という事はあのバカみたいな装備からは解放されるのですね!!」


 オレが装備していたのはマスク、ズボン、刀……だけじゃない。

 実は肉襦袢(にくじゅばん)とかいう、裸に見せる為の訳の分からん防具もあったんだ。

 何故か白人が着ると白い肌に、黒人が着ると黒い肌になるという訳の分からんものだがな。

 しかしアレのSD濃度は186もあるという、使わない訳にはいかない代物だった。

 それからやっと解放されるのか。


 「残念ながら曹長、君の装備は変更無しだ。

 他の2名に装備を渡し、君に同行させる形となる」


 「ちょっ!? ちょっと待ってください!

 あの上半身裸に見える訳の分からない物だけでもなんとかなりませんか!!」


 「残念ながら曹長、君の装備は変更無しだ」


 「NO………」


 「嘆いても無駄だし、既に人気が出ているのだから諦めろ。

 リアルNINJAとして人気を博している以上は、君以外に着けられる者が居ない。

 素直に諦めろとしか言えんな」


 「………」


 声にならない音が漏れそうになる。

 どうしてオレがこんな目に遭わないきゃいけないんだ?

 海兵隊員として優秀な成績だったはずだろう?

 なんであんな訳の分からない装備で異界の探索をする羽目になったんだ。

 オレの人生どこで狂っちまったんだ!


 「君は勘違いしているかもしれないが、君は恵まれているぞ?

 幾つかの会社からオファーがあり、オフの日に仕事をしていたのを知らないと思っているのか?」


 「ゲッ!?」


 「服務規程により決められているはずだが、そこを見逃してやっているのだ。

 こちらとしては感謝してほしいところだがね?」


 しまった。

 カレンダーのモデルだったりしたから大丈夫だと思ってたのに、まさか見逃してもらえないとは……


 「あれが軍の売り出しているカレンダーなら何の問題も無かったのだが………ま、軍のカレンダーでは大した金も出ないか。

 だから民間の仕事を受けたのも分からんではない。

 上は軍のイメージを損なわない事と、多くないのであれば見逃すとの事だ。

 だからあまり大量に受けんようにな」


 「流石に自分も休まねばならないので、そう多くを受ける事は出来ません。

 なので多くの仕事を受ける事にはならないでしょう。

 流石に異界の中で死ぬのは御免ですからね」


 「それならいい。

 そこまで金が欲しいなら、曹長も配信したらどうかね?

 例の彼は何故かコンピューターゲームをプレイしている様子を配信しているらしいぞ。

 何が面白いのかサッパリ分からんがね」


 「コンピューターゲームを?」


 「どうも、そういった類の物に触れて来た事が無かったそうだ。

 そんな素人がプレイしているのを眺めるものだな。

 大半は雑談をしているだけだったが、それを確認しなければならんこちらの身にもなってもらいたいよ」


 あの少年が重要人物だというなら、動画の確認は必要だろうな。

 もちろん配信も。


 向こうは適当にゲームして雑談しているだけでも、こっちは真剣に情報収集をしなきゃいけないわけか。

 仕事だとしても大変だな。


 「ま、コンピューターゲームはともかく、何かを配信していたらスポンサーぐらい付くだろう。

 軍の方で精査はするが、それなりの額を出してくれると思うぞ?

 おそらくそちらの方が儲かるだろうし、おかしな事にもならん」


 「でしょうね。

 そして軍は勝手な仕事をされるよりはコントロールしやすいので助かると」


 「当然だ。君はもう少し自分の影響力を自覚した方がいい。

 ここは自由の国アメリカ。

 その自由を担保するのは暴力か金なのだよ。

 曹長、君はそのうちの暴力を持っているのだと自覚したまえ。

 暴力でも力は力、そこに憧れる者も多くいる」


 「悪い事に使えば犯罪者、良い事に使えば兵士。

 力は力でしかなく、制御下にある力は金になる。

 という事ですね」


 「その通りだ。

 人類の古き歴史より、力のある者は人気があり信奉される。

 それが人類の歴史であり、人類そのものなのだよ。

 君の力にあやかりたい者が群れをなしてやってくる。

 それが作られた虚像であってもな」


 「では基地に戻り次第、司令と相談させていただきます」


 「うむ。ではこれで終わりだ。

 戻ってよい」


 「ハッ! 失礼いたします!!」


 そう言って部屋を出るが、やっと終わったか。

 周りから監視されている感じがしたから、隠しカメラか何かで撮影されていたんだろう。

 それにしても、ここからいつもの基地まで戻るのは面倒だな。

 呼び出されたし、航空機の手配も国防総省持ちだから文句も言い辛いんだが……


 早く基地のある田舎に帰りたいもんだ。

 どうにもオレには都会の空気ってのが合わねえ。

 こう……何か痒くなってきやがる。

 都会に出たいヤツが多いらしいけど、オレには全く理解できないね。


 やっぱり人間、故郷が一番だ。

 早くユタに帰ろう。


 国防総省前で手配されていたタクシーに乗り、行先を告げた後でネットの確認を行う。

 さっき例の少年がコンピューターゲームの配信をしていると言ってたんで気になってたんだが、それよりも少年の動画を確認してなかったのを思い出したんだ。


 そもそもオレは子供の頃近くに住んでた日本人から日本語を教わってるんで、日本語はネイティブだ。

 だからこそ子供の頃からオリジナル版のアニメを楽しめたし、そこが他の奴らと違うとこなんだよ。

 それはともかくヤエ・タチバナだったな。


 やえなんていう名前の漢字は多くない。

 おそらくは八に重ねると書くはず………っと、あった。

 検索も漢字を知っているとすぐに出てくるから助かる。

 どれどれ……


 うん。思っていた以上に、オレの見た目が酷い。

 それだけはハッキリと分かったが、こんなにも酷い見た目だったのかよ……。

 マジであの装備止めたいんだが、何とかならないか?


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