0011
Side:橘八重
俺の目の前には2人のサキュバスの人達がいる。
一人はここ救護所の責任者でリティオルさんという人だ。
見た目は典型的なサキュバスで、ボン、キュッ、ボンな人。
特に胸の大きさが凄い。
もう1人は貴族令嬢らしい、ウェルモネヌさん。
この人は控えめなそうだが、そもそもサキュバス基準で控えめなだけで、日本人女性の平均と比べたら十分に大きい。
もちろんグラビアとかではウェルモネヌさんより大きい人はいるけど、それでも平均よりは大きいと思う。
悪魔の人達って物質寄りじゃないと聞くんだけど、その割には物凄く鍛えられている人だ。
何というかムキムキでムチムチ? そんな感じの見た目をしてる。
っていうか、下は薄いピッチリしたパンツで後はブーツを履いているだけだから、下半身のラインがハッキリ見えすぎてる。
リティオルさんという人はなぜかドレスを着ているんだけど、ウェルモネヌさんは露出が激しい。
せめてジーンズなり何なりを履いてほしいところだ。
上も薄いシャツにスポーツブラなので目のやり場に色々と困る。
「おおー……! まさか少年が<ちっぱい>側だったなんておも」
ゴスッ!!
「~~~~~~~ッ………!!」
ウェルモネヌさんが頭の頂点付近を殴りつけたけど、それでリティオルさんが悶絶している。
それもしゃがんで頭を押さえてるので、相当に痛かったらしい。
といっても自業自得だと思う。
そもそも人間に当てはめると、全然<ちっぱい>じゃないし。
むしろサキュバスの人たちが大きいだけだと思う。
「うむ、少年の言う通りだ。
そもそも私達サキュバスにとって、体は誘惑できればいいのだ。
食事にとって必要なのであって、大きければ良いという訳ではない」
「負け惜しみぎぃっ!?」
またもや「ゴスッ!」という音がして悶絶するリティオルさん。
この人いちいち余計な事を言わないと、気が済まないんだろうか?
たまにこういう人いるけど、何故なのかは未だに分からない。
世の中には言わない方が良い事も沢山あるのにさ。
「少年の方が余程よく分かっているのはどうなのだ?
幾ら何でも駄目すぎる気がするぞ」
「………ふぅ、まったく何度も殴らないほしいわ。
ちょっとした冗談じゃないの。
それはともかくとして、少年はこういう方が好みなの?」
「救護所の責任者の質問か、それが。
ちゃんと少年の具合を調べてやれ」
「貴女はいいわよね。
少年からむき出しの性欲を向けられてるんだもの。
あーあー、私にもそんな性欲を向けて来る少年が居ないかしら」
「!」
「ああ………お前が言うから無くなったではないか。
せっかくいい心地だったのに!」
「だから邪魔するんでしょうが! サキュバスとして当然よ!!」
この人たちはいったい何をやってるんだろうか?
後、既に体調も治ったっぽいので、そろそろ帰りたいんだけど……
「あー、うむ。
ゴホン! こんな事をしている場合ではないな。
私はちょっと聞きたい事があって、君の体調が戻るまで待っていただけだ。
こいつが襲おうとしているのを見て、慌てて止めたがな」
「ちょっとぐらい、つまみ喰いしたっていいじゃない。
せっかく役得があると思って立候補したのに………」
「ある訳ないだろう。
それはともかく、異界に行って何か手に入れなかったか?
なんでもいいのだが、手に入れた物があれば見せてほしい」
「手に入れた物はありますけど、それはこの棒と軍手だけですよ?」
「………まあ、見て分かる通り兄の手がかりでは無いな。
すまない、ありがとう」
「ちなみに言うとね、第四位魔性貴族ってその名前の通り、【魔法】を使うのが得意な貴族家に与えられるものなの。
それぞれにあるんだけど、第四位って結構上なのよ?」
「へー………」
「まあな。
特に兄上は炎の【魔法】を得意としていて、強力な【火炎嵐】の【魔法】が使えたのだ。
普通は一本の炎が吹きあがるところ、兄上は最高で五本の炎が吹きあがり、本当に嵐のような炎を顕現させるのだ」
「………あれ? それって、もしかして………」
俺がそう言った途端、いきなり手が伸びてきて首を掴まれ持ち上げられた。
「ぐっ、がっ、ごぶっ」
「何か知っているなら、さっさと話せ。
死にたくなければな」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!
この子が何かしたとは考えにくいでしょ!
何より首を掴んで持ち上げてるのに、どうやって喋るのよ」
「ん? ああ、すまん。ついやってしまった」
そう言うと同時に俺は解放されたが、手を放しただけなので下に落とされた。
「ゴホッ! ガハッ! ゲホッ!!」
「さて、さっさと話せ。
下らぬ情報なら覚悟せよ」
「だから駄目だって言ってるでしょ。
私にあんな事を言っておきながら、何を言ってるのよ。
食べるならともかく、何もしていない子を殺していいはずがないでしょうに」
「ハーッ! ハーッ! ………ふぅ」
何がなんだか知らないが、俺が思っている情報がそのお兄さんの情報かも分からないのに、これお兄さんの情報じゃなきゃ殺されるのか?
シャレになってねえよ。
「いやいや、そんな事は無いわ。流石に無いから。
貴女もちゃんとそう言いなさい、流石にやっている事が理不尽に過ぎるでしょう」
「話を聞いてからだ。事はアロハヌス家の相続に関わる。
兄上が居なければ次に相続権があるのは長女なのだ。
つまり正妻である私の母の系譜では無くなってしまう」
「ああ、それで………
もしそうなれば、今日から貴女は貴族とは関わりのない道を選ぶしかなくなる?」
「その可能性が高い。
暗殺して潰せば別だが、まあ上手くはいかぬだろう。
あの長女は、その辺りの手練手管が得意だからな。
言葉は悪いが、兄上はその辺りが下手だった。
代わりに魔性貴族としては正しい魔力の強さと【魔法】だったのだが……」
「えーっと、俺の言っている事が正しいかは別にして聞いてください。
俺は異界で<記憶の宝珠>を得ました。
そして迷って使ったところ、肉の塊というか内臓の中のような地形に居たんです。
それも肉と骨で出来た戦車と戦っている男性悪魔でした。
喋り方が男性でしたので」
「それで?」
「その人は仲間を率いていたみたいですけど、魔力を拳に篭めて殴ってもダメージが碌に出ず、その後で【火弾】の【魔法】を使いました。
しかし碌に効かなかった為、次に【火炎嵐】の【魔法】を使ったんです。
それも五本の火柱が渦巻いて吹きあがるものでした」
「!?」
「どうやら間違いないみたいね。それで?」
「その【魔法】で肉と骨の戦車は倒せたんですけど、別の戦車の大砲を受けて上半身だけで吹き飛んだ事までは追体験しました……」
「…………そうか」
そう言ってウェルモネヌさんは去って行った。
俺としては使った<記憶の宝珠>がそうだったので、何とも言えないんだが……
「それは彼女だって分かってると思うわよ?
とはいえ正妻の系譜が後継者から外れるって、貴族にとっては大きな屈辱だもの。
仕方ないわ」
「そうなんですね。
かつて似たようなのはありましたけど、今や貴族制度なんて無いのでイマイチ分からず……」
「ああ、それはそうでしょうね。
ここ日本には、確かに貴族制度は無いもの。
それじゃ分からないし、唯の理不尽にしか思えないのも仕方ないわ」
その昔の貴族制度もあんな感じだったのだろうか?
機嫌を損ねたら殺されるって表現されるけど、マジでそうだとは思わなかった。
平安とか鎌倉の貴族や武士と考えた方がいいかな?
いきなり町中で射殺されたりしたらしいけど……
「いやいや、流石にそれは無いから。
というより、町中でいきなり射殺すって正気じゃないわ。
私達のような悪魔の基準でも狂ってるとしか思えない」
流石は平安や鎌倉の武士、悪魔より頭がおかしいらしい。
あの当時の人達にとったら多分、誉め言葉にしかならないだろうけど。




