第8話『薬草って奥が深い…』
ソーンとルドルは一つの依頼を受けていた。
「うおーー!!あの受付嬢め!驚かせてやるぞー!おりゃー!!」
モサモサモサッーー!
「まだ根に持ってるのかー?あれは優しさだよ」
プチッ。
「いや、伸びしろだと思ってる!!」
「うおーー!!この腕が幾重にも千切れても取り尽くす!!」
モサモサーーー!!
「幾重にもは千切れないでしょ」
プチッ。
ーーー
ーー
ー
最近分かってきた事がある。
ルドルと言う男は向上心の塊だった。
物をズバズバ言うがそこに悪意や敵意は一切なく、自分の感情に則って良いことを言っているらしい。
依頼がどんなものであれ最上を目指す。
これは俺にとってもいい誤算だったのかもしれない。
最上を目指すと言うことは、その邪魔をする奴は要らないはずだ。
依頼を怠けるわけじゃないがそーっとアイツがいなくても変わらないだろ?を目指す。
今まさにその作戦の最中だ!!
ー
ーー
ーーー
「はぁはぁ…よし、もういいか…なぁ、ソーン」
「薬草採取ってこんだけあれば余裕でSSランクだよな…?」
受付嬢から渡された網籠には溢れんばかりの薬草の山。
「ん?」
「おぉーー!すごー!!」
プチッ。
「どうだぁ…こんなに採取したやつは居ねぇだろぉ…」
「ってぇ!ソーンそれだけかよ!!」
(ふふ、気付いたか)
(ルドルはもう俺の術中にハマっているのさ!)
(さぁ、来い!パーティーの解散ではなくまずはちょっとした亀裂を産む!)
「そーなんだよ。俺にはこれくらしか取れなくて」
「これでも精一杯なんだがな…」
(よし!さりげなく限界をチラつかせたぞ!)
「そうか…まぁ気にすんなよ!」
「これはいにしえから続く俺と受付嬢の戦いだ!」
(いにしえってさっきの依頼を受けたんだがな…)
「おらーー!!ソーンの分ももぎ取ってやるー!!」
………
……
…
「はぁはぁ…」
「どうだ…!これだけあれば最上だろ!見てくれ!」
二人は依頼の量を終え、
ギルドに帰ってきていた。
ドンッ!
採取した薬草が積もりに積もったカゴを置く。
「あと一応これも」
コトッ
「お疲れ様でしたー!」
「マフティスさん、クリーガーさん!それでは確認させていただきますね!」
街のギルド内が少しザワつく。
ーーあの量凄いな。
ーーツンツンの彼が一人で集めたのか?
ーーそうでしょ、横の人は少量しか出してないもの。
ザワザワ
ルドルが担いでいた量に関心が飛ぶ。
受付嬢は重さを量り質を見る。
「おぉ!これは凄いですね!」
「だろ!」
「えー、それではセブンスヘブンのお二人の今回の依頼の評価です!」
ーー量 : A
ーー質 : S
ーー依頼をこなす速さ : A
「以上です!お疲れ様でした!」
「報酬は隣の換金所でお受け取りください!」
「ちょっと待てー!これだけあって量がA!?せめてSくらいくれても!」
「この評価は妥当です!」
「量とは単純に大量の物があれば良いということではないんです!」
「質があまり良くないものが混ざっているとそれだけでもアイテム化した時や、回復にかかる時間など差が出てきてしまうのです!」
「だったら、この質がSなのはどういう事だよ?」
ルドルは息を荒くする。
「はい!この質に対する評価はこの大量の中にも勿論ありますが、特質すべきはこちらです!」
受付嬢が指をさす方向を見ると、そこにはソーンがゆっくりと取っていた少量の薬草があった。
「これはソーンが取っていた薬草…?」
これっぽっちがどうした?と言わんばかりの評定をする。
「その通りです!」
「こちらは根から優しく採取されており、葉へのダメージもほぼゼロ」
「そして何より選定された薬草の質がそもそも高い!」
「これを選びながらでもこの量を持ってこれる人はそうそういません!」
再びザワつく。
今度はその内容はソーンに向けられていた。
ーーそんな高等な技術だったのか…
ーーあの少量で質 : S…マジかよ…!
ーー今度やってみるかぁ…
(いやいや、ただ大きく元気そうなのは根がしっかりしていて、抜くのに時間がかかりそうって言う理由を付けて怪しまれないようにゆっくり引っこ抜いただけだぞ!)
「いや、そんな事ないですって!ほらここ見てください!この葉の部分虫食いか何かで欠けてるでしょ?それにここ!根の下の部分折れちゃってるじゃないですか!これは選ぶの失敗したなーー!それに焦って折っちゃったんですよ!」
焦って早口になるソーン。
「…ソーン」
「どう考えても、こんな俺の少量よりルドルの大量の方が凄いですよ!」
良さを転換させる。
「いえそれは違います!この葉の欠けてる部分は良質な薬草だけを食べる《食薬虫》という虫の跡です。この跡があるだけで質は一目瞭然!そしてこの根の折れですが薬草の生命力は凄まじく、根に一番栄養を蓄えていて、土の圧力と引き抜く時の力で自然と地に残りまた芽吹きます!そのギリギリで折れているのは、自生している薬草を殺さずに出来ているんですから、むしろ良いことです!」
受付嬢も早口になる。
「な…!」
膝から崩れ落ちそうになる。
「ソーン…」
そんなソーンの肩に手を置くルドル。
「違うんだ、ルドル…」
「ソーン!すまなかった」
(え?)
「俺はその丁寧さに気付けず、お前の採取の邪魔をしていたかもしれない」
「量があればいいと思い込んでいた…」
(いやいや!俺も想定外だってば!)
「くそ!!隣でこんなに完璧にこなしてくれているソーンがいたのに!!」
「ただ依頼をやるだけ、こなすだけの男になっちまってた…」
(やるだけって何!?それでいいじゃん!)
(俺は居るだけになりたいのに、完璧とか言わないでーー!!)
「俺もまだまだだ!!なぁ、ソーン」
「今度その選定と取り方こんな俺にも教えてくれるか?」
「も、もちろんだ!」
(いやー、教えられるかなー。薬草をゆっくり取っただけだからな…)
「それでは結果にご納得いただけた様なので、こちらが報酬となります!」
「換金をよろしくお願いしますねー!」
「お疲れ様でした!またいつでも来てください!」
キラリンッ☆
ウィンクで星が飛ぶ。
「はぁー、今日は驚いたぜー」
「はは、俺もだよ」
二人は報酬を手にギルドを後にした。
「まだまだ学ぶことが多いな!ソーンと組んで正解だぜ!」
「俺もだ」
(今度はもっと慎重に依頼をこなさなくては。評価Cくらいが丁度いいんだ…)
(薬草をちょうど良く採取するだけでも、奥が深い…)




