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第7話『全然想像と違うんですけどーー!!』

王国ギルドを後にして街へ帰ってきたソーン。


…ふぅー


充実した達成感と緊張の緩和から、気持ちのいい疲労を感じていた。


(父さんが推薦状まで持っていたなんて、ホントに危なかった)

(でもなんとか危機を乗り越えられて良かった)


体をほぐすように伸ばしながら一人のんびり歩く。


(見えてきた!)

(ここが俺を最高の人生へと導いてくれるオアシス!街のギルド!!)


先程のモノと比べるととても小さく寂れているように見えた。


ギィー。


(この音いいな)


木製のドアを開け中へとはいる。


「こんにちわーっ!」

「ようこそこの街一番の強者が揃うギルドへ!」


入ってすぐの受付から威勢のよい声が広がった。


程よい距離感。

入ったらすぐに見える。

奥に修練場などない。

重厚な鎧をまとった冒険者も居ない。


すぅーーーはぁーーー


なんてちょうどいいところなんだ!


「お兄さんは見ない顔ですねぇ?初めてですか?」


こちらの反応を待たずして話しかけてくる受付嬢。


「あ、はい。初めてです」

「ここで冒険者登録をしたいんですが」

「はい!冒険者登録ですね!」

「ではいくつか確認をさせていただきます!」

「こちらのご記入をよろしくお願いします」

「はい、ありがとうございます」


確認事項の載った書類を受け取った。


ーー確認事項

・現在、他のギルドでの登録がないか。

・一人か複数人パーティーで登録か。

・冒険者としての実力はあるか。または称号はあるか。

・任務中の危険承諾への同意。


(うん、どれも問題なさそうだ)

(実力の有無は…まぁ薬草を取るくらいなら誰でもできるしな)


必要事項を書き込む。


(これでよし)


「お願いします」

「はい!ありがとうございます!」

「では確認させていただきますね」


ーーー

ーー


「はい、問題ありません!」

「…ええと、ソーン=クリーガーさん。正式にここのギルドの冒険者として登録完了です!」

「初めてでしたら概要説明とかお聞きになりますか?」


(概要か…)


ピキーン!!


ソーンが閃く!


(概要の中に禁止事項や即追放、今後一切の冒険者としての資格を剥奪する!みたいなのがあれば聞いておいて損はなそそうだな!!)


「はい、お願いします」

「はい!それではご説明いたします」


ゴホンッ


「まずは依頼の受け方からです!」


ーーー

ーー


「以上が概要になります!ご質問はありますか?」


(く、何も有益な情報は得られなかった…)

(他にないかやんわり聞くか…)


「あの、何か禁止事項みたいなのってあるんですか?」

「追放されちゃうーとか、今後一切冒険者としての資格を剥奪ーみたいな?」

「良いところに目を付けました!」

「最初は分からなくて、やっと始まった冒険者人生を失いたくないですもんね…分かります!」


(いや、失いたくないどころか始まりたくなかった…)


「端的に言うと」


ゴクリ


「ありません!」


(うそだろー!!何か一つくらい合っても罰は当たらんぞ!)


「いや、でも流石に何もないってことは…」

「うーん、そうですねぇ。強いて言うなら犯罪とかですかね!」


可愛くウィンクしてくる。


「そんな事を“しないと”ダメなんですか!?」

「しないと、と言うか普通はしませんよ!」

「だから特にないんです」

「王国のギルドとかだったら厳し〜〜ルールとかいっぱいありそうですけどね!」


(ハッ!その手があった…かもしれない…)


「まぁ、そういう事ですのでご安心ください!」

「クリーガーさんの冒険者人生は私共々ギルド全員で守りますから」


キラリンッ☆

と再び星を飛ばすウィンクをしてくる。


「あはは…」


(守らないでーーー!俺は追放されに来たのにーー!!)


「それではクリーガーさん!以上となります」

「立派な冒険者の旅へ行ってらっしゃいませー!」


この言葉と共にとてもとても遠くへ突き放されたような感覚に陥った。


(いや、落ち込むな…ここに来れたじゃないか)

(それだけでも今日は万々歳だ!)


自らを肯定し鼓舞する。


ぐぅー

そして腹も減る。


(そろそろ何か食べるか)

(こんな時はとりあえずお腹を満たそう。久々にあの店に行くか)


この街には幼馴染の仕立て屋があり、度々訪れたことがあった。


(今日は濃い日だな〜、やっと一息つける)


この街のメイン通りには人通りが多く色々なお店が並んでいる。


ご飯と言ったらここと!言うほど、大きな構えと大きなおにぎりとビールの看板が目を引くお店がある。


どの時間もかなり賑わっている。


ここは《七福亭》街の人の憩いの場でもある。


そのお店の入り口のドアを開けると、


チリンチリン♪


と、ドアの開閉を知らせる合図が響く。


「いらっしゃーせー!!」

「「いらっしゃーせー!」」


よく通る1人の店員さんの声に続き、他の店員さんが一斉に歓迎の挨拶と笑顔をくれた。


ご飯を黙々と食べる人。

既に顔が真っ赤になって楽しそうに飲み食べをする人。

少人数から大人数、年齢も様々。


「一名様ご案内でーす!!」


通された席に腰掛け一息き、オススメメニューを頼む。


「これからどうするかな」


そんな事を考えていると少し離れた席に、かなり大きく盛られたご飯を豪快に食べる髪をツンツンに立たせた男が目に入った。


「うめぇー!やっぱり七福亭の飯はいつ食ってもうまい!」

「いい食いっぷりだねー!!」

「あんちゃんこれも食べてくんねぇ!」

「ありがとうございます!遠慮なくいただきます!」


ここの店主は気前が良くこういう客が好きらしい。


「これも最高だ!箸が止まらない!」


ガツガツと目の前の大盛りを頬張る男。


「あんちゃん最近よく来てくれるねぇ!」

「この辺に越してきたんか?」


ガツガツ。

ゴクン。


「いや、最近ここのギルドに登録したんだ!」

「冒険者かぁ!いいねぇ!ならもっと食って力を付けないとな!」

「ははは、間違いねーや!」


(あの豪快っぷり…店主にハッキリ言える心。理想だ…)


ーーー「お前みたいな居るだけの奴はいらねぇー!首だ首!二度とギルドにも顔を出せないようにしてやる!!」ーーー


(見えた!!!これだ!!これを俺は求めている!)


見ず知らずの男に理想を重ね、これからを考える。


「俺も早いことパーティーを結成して、より高い依頼へ進まないといけないからな」

「おじさんこれとこれも追加で!」

「あいよー!!追加オーダーいただきましたぁ!!!」


(パーティーか…)

(俺もそうした方がいいかもしれないな…)

(もしあんな人と一緒なら…)


「お待たせいたしました!角豚のメガ盛りチャーハンです!!」


!?


「えっと、普通のサイズを頼んだと思ったんですが…」

「当店はお昼時はオススメメニューは無料でサイズアップさせていただいております!!」

「あ、そうなんですね…ありがとうございます」

「どうぞ!ごゆっくり!!」


ーーー

ーー


「ご、ごちそうさまでした…」


(何だこのメガ盛りは…お腹がはち切れそうだえ…)


「あんちゃん!全部平らげたのか!こりゃすげーな!!」

「ええ、何とか…とても美味しかったです」


(って!あなたが出したんでしょーよ!)


「間違えて2人分多く盛っちまって食べきれるか心配だったが、そんなのいらなかったな!」


(やばい、このままだとさっきみたいにご飯が追加される可能性がある…出よう…)


重いお腹で何とか立ち上がり店を後にする。


「ありがとうございました!!またお待ちしております!!」

「「ありがとうございましたぁ!!」」


最後まで元気で賑やかなお店だ。


気付くとさっきの豪快な男はもう居なかった。


(ふぅー。お腹もかなり満たされて、今日はもう何もしたくない気分だな)


家路へと向かおうとするソーンの背後から声がした。


「よう」


振り向くとさっきの豪快ツンツン男が腕を組み壁にもたれて立っていた。


「その細身であれを食べきるとはな…」

「お前…何もんだ?」


(え?フードファイター的な?いや、さっき冒険者登録を済ませた冒険者って返しで合ってるよな?)


「えーっと、さっき普通の冒険者です」

「そうか!あれを食べてやっと普通ってか!」

「やはり俺の目は間違いなかった」

「俺の直感が運命を呼び寄せたなぁ!兄弟!」


(運命?兄弟?あれちょっと想像したタイプと違うかもしれない…)


「なぁ、あんた名前は?」

「ソ、ソーン=クリーガーです」

「ソーン=クリーガー…いい名前だ」

「俺は《ルドル=マフティス》見ての通り拳闘士だ」

「いずれこの拳で世界を制覇する男だ!ルドルでいいぜ!」

「は、はあ」

「ソーン、俺と一緒に新時代の幕を開けないか?」


(もう名前呼びだ…)


「それはつまり…」

「おう!天にも名を轟かすパーティーの結成よお!どうだ?」


拳を出す。


想像とは違ったが、このルドルと言う男となら追放が早まるのではないかとそう思えた。


「そうだな、よろしく頼むよ」

「ん」



「ん!」


あ、あぁ拳か…


コツンッ


差し出していた拳に拳を軽くぶつけた。


「パーティー、結成だ!」

「この七福亭で出会った俺たちが、天にも轟く日は近いな…」


太陽に手をかざしまぶしそうに呟く。


「そして、パーティーには名前が必要だ」

「安心してくれそれはもう考えてある」


(パーティー名か…)

(天とか轟くとか、兄弟とか言葉のチョイスが独特だから何か凄そうなのがきそうだな)

全金筋肉ゴッドタフネスとか超炎神龍ウルトラファイヤードラゴンとか…)


そんな変な名前を想像した。


「パーティーは多すぎても少なすぎてもダメだ」

「黄金比は七!そしてその七人でどこまでも突き進む。その名は……」



《セブンスヘブン》!!



「どうだ?カッコいいだろ?」


(やっぱりそっち系の人だーーー!!)

(俺も傷が疼いたり、体に龍を飼わなきゃいけなくなってしまうのか!?)


「カ、カッコイイトオモウヨ」

「そうだろそうだろ!流石俺が見込んだ男だ!よく分かってる!」

「これから一生よろしくな!相棒!」


(一生!?相棒!?全然想像と違うんですけどーー!!)


ルドルが太陽に拳を掲げる。


「セブンスヘブンの時代が来るぜ!」


ソーン、空を見上げる。


(……俺はただ、平穏に生きたかっただけなんだけどな。)


まぶしそうに目を細めるその横顔は、やたらと満足げだった。


(……とんでもない奴に捕まったかもしれない。)


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