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第6話『これが俺の意思!』

いくつかの施設を軽く見て歩き、とうとう目的の場所が見えてきた。


冒険者登録や騎士団への応募、依頼の全てを一括で管理している大理石に囲まれた受付。

そこには街の喧騒とは違う、静かな威厳があった。


横には依頼が載っているいくつもの掲示板。


その前では強そうな人達がどれにするかを悩み見ている。


(やばい、とうとう受付来てしまった…どうしようとりあえず掲示板を見て時間を稼ぐぞ!)


ソーンも遠目から覗いてみた。


ーー北方国境・異常気象調査および原因排除

ーー古代遺跡“封印核”再固定任務

ーー天魔教幹部捕縛または討伐

ーー六番隊合同模擬戦参加者募集

ーー南方海域・巨大海獣討伐


(長文で漢字が多すぎて読めないですけど!!)

(スライムとかゴブリンとか迷子探しとかないんですかー!)

(こんなの絶対にやりたくないし行きたくない!どれも強すぎでしょ!!)


「何か面白そうな依頼はあったか?」


ワクワクした面持ちでソーンに尋ねる。


「全然」

「ガハハハ、こんなくらいじゃワクワクもせんようになってしまったか!こりゃ先が楽しみだなぁ!おい!」


(こんな内容で面白いとか父さんもいよいよやばしでしょ!)


ソーンの感情とは逆の解釈で豪快に笑うマクラウル。


「さ!いよいよ登録だ。少し時間を食っちまったが準備はいいか?」


思えば見学をしたりしていたせいで、時間が少し経ってしまっていた。


父さんの母さんに会う予定が少し遅れてしまう。


母さんは忙しく今日を逃すとまた次はいつになるか分からない。



コツ


コツ



先ほど聞いたような音が近づく。


大理石に反響して響き渡る。


コツ


俺達のそばでピタッと止まる。


「マクラウル殿。先程はお恥ずかしい所をお見せした」

「王のため国のためにご尽力いただいた貴方にはもう少し良い所をお見せしたかった」


先程の大きな威圧感はなくとてもしなやかな雰囲気で、会釈程度に頭を下げた。


「おう、アイニー。最初は誰でもあんなもんだろ」

「それにお前の活の入れ方はとてもハッキリしていて良い」

「副隊長もしっかり育っているではないか!充分充分!」

「貴方にそう見ていただけるなら、やってる甲斐があります」

「やっぱり教えるには実際に見せる方が伝わり方が直接的でいいよな」

「はい、私もそう思います。して、こちらの御仁は」

「コイツは息子のソーンだ」

「初めまして。ソーン=クリーガーです。先程はとても凄かったです」

「初めまして、アイニー=マテリアルと申します。ご子息でしたか、そう言ってもらえてよかった。」


自然な笑顔がとても美しく、全てを見透かされているような感覚になる。


「今日は何用で?」

「あ、いやーその、ちょっと見学?に…」


(父さんの前で俺に聞かないでくれー)


「いや、コイツもそろそろ一人前の冒険者にでも。と思ってな」

「そうでしたか」

「ソーン殿も国家を守ると言う使命を背負いに来たのだな」

「敵は強大で一つのミスが大きな損害を産む」

「時には百を救うための犠牲があるかもしれない」

「そんな時心を鬼にしなければならない」

「王のため国のために、ひいてはこの私たちの世界のために」

「自己を犠牲にしてでも掴まなければならないものがある」


徐々に威圧感が増す。


(……俺は)


「もう一度問おう。君は今日何をしに来た?」

「お、俺は…正直王様とか国とか、世界を守るとかよく分からない」

「ただ目の前の人に手を差し伸べるくらいしか出来ない」

「でもだからこそ、俺が俺を犠牲にしてしまう事は嫌なんです」


(そうなんだよ!俺にはここで骨を埋めるなんて嫌なんだ!)

(世界より俺の心をまず守りたいぃいーー!)

(王国ギルドとか入ったら世界のために死ぬまで冒険者じゃないかー!)


「ほう。この私を目の前にして自分の意見を嘘偽りなく言えるとは、なかなかのご子息だ」

「ガハハハ!当然だろう」


鼻息荒く頷くマクラウル。


「では、その小さき手で何を守る?」

「ここに来る前に一人の子どもが俺にぶつかり転びそうになりました」

「その時考えるより先に身体が動いてました」

「そんな小さな出来事で良いんです」

「いや、小さい出来事“が”いいんです」

「だから俺の居場所はここじゃない」

「見据える先が違うか…ではどこを目指す?より高みか?王の座か?」

「俺の居場所は…」


真っ直ぐで嘘のない瞳でソーンを見つめる。


「街のギルドです!!」


(完璧な流れだ…小さき畑を耕し、まだ見ぬ奥さんと子供と楽しく暮らすための第一歩…!!)


「「……」」

「ガーーハハハ!!そうか!そうだったのか!ソーン!」

「これは私には見えてなかった」

「隊長と言う立場にあぐらをかく所だったわ」

「まだまだね」


(ん?どういう事だ?)


「俺は事を急いたのかもしれん」

「お前ならここでもすぐに上に立てる人間に育てたつもりだったが、やはり俺の息子だなぁ!!」


くぅーー!と目頭を熱くさせるマクラウル。


「ソーン殿、失礼をした」

「君を測るような真似をして申し訳なかった」

「大義とは皆心に灯すもの」

「百を救うための犠牲ではなく、その犠牲すら救うという君の大義とても天晴じゃないか!」


熱くなるアイニー。


「ならこれはいらないな」


ビリビリ


マクラウルが手に持っていた一枚の紙を破る。


「それは?」

「これは推薦状だ」

「これがあればここでも最低でもCランクからは始められるからな」

「推薦状…」


(危ねーー!!あと数歩でCランク確定だったのかよ!マテリアルさんが来てくれなきゃ、終わってた…)


「君のその大義、とても楽しみにしている」

「見てる先は違えど生きるところは同じだ」

「この四番隊は君に力を貸す。いつでも頼ってきなさい」

「あ、ありがとうございます(??)」


(どうしてそうなったんだ??)

(どうせやるんだったら、ただ俺は街の小さなギルドで薬草を採取したり、迷子の動物を助けたり、そう言う簡単な依頼を程よく受け、居るだけの冒険者になろうとしてるだけなのに…)


「今日は気分がいい。マクラウル殿この後一杯いかがか?」

「おぉ、いいな!ちょうど喉が渇いてたところだ!」


(まぁ、いいか。とりあえず王国のギルドに登録せずに済みそうだ)


「「あ!」」


ソーンとマクラウルが同時に何かを思い出す。


「母さん…」

「ラ、ラヌシア…」

「あぁ、ラヌシア殿なら先程出られました」

「なんだとーー!出てしまったのか…」


久々に母さんに会いたかったのか、父さんは残念そうにうなだれる。


「それでもしお二人が来たらこれを渡してくれと、頼まれて来たのをすっかり忘れていた。」


とても分厚いソーンへの手紙が手渡された。


「分厚い…。ありがとうございます」

「マクラウル殿にはこちらです」


ノーリスが奥から大きな樽を持ってやって来た。


ドシィン。


大理石の床が割れるんじゃないかと言う程、大きく重そうな樽にはどうやら液体が入っていそうだった。


「これは…」

「出先でいい酒造があったみたいで、是非飲んで欲しいと持ち帰られたみたいで」

「ラヌシアぁぁあー!!愛してるぞーー!!」


感動のあまり声が大きくなる。


「その思いはしっかりと伝えさせていただく」

「して、マクラウル殿そろそろ行きますか?」

「ソーン殿はどうされる?」


涙顔で頷くマクラウル。


「俺は待ちに戻って登録をしてしまいます」


(急いで既成事実を作り、向こうでの生活を始める!)


「それがいい。前は急げだ」

「おう、気を付けてな」

「今日はいい経験をさせてもらいました。ありがとうございました」


深々と頭を下げるソーン。


「いや、こちらこそ」

「マクラウル殿のご子息にあえてその大義にあてられ私もまだまだだと初心にかえれた」

「礼を言う。ありがとう」


会釈程度に頭を下げる。


「でわ、また。行きましょう、マクラウル」

「今日は飲みまくる…」


まだ感動して樽を離さない。


「ははは…父さん飲み過ぎないようにねー!」


静かに手を挙げその場を後にした。


ーーよし、俺も行くか!


来た時とは違い晴れやかな気持ちで王国のギルドを後にしたソーン。


(よし!街のギルドへ!)


こうしてソーンは危機(?)を逃れ、希望していた街のギルドへと向かうのであった。


ーーここからだ…!ここから俺の最高の未来を手にするための道が…!


自分の意思でしっかりとした重い一歩を踏み出した。

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