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第5話『俺には遠い話だ』

眼前に広がるのはだだっ広い大理石の大広間だ。


ここも規律正しく整頓され、綺麗で少し淋しい空気が漂っていた。


天井は高くヒンヤリした空間は街の賑やかさとは打って変わって、静かに動いていた。


「うわぁ、ここも凄いね」

「ガハハハ、ここは国城だぞ。このくらい当たり前だ」


ドゴォーーン!

ワァァァー!!


奥から爆発音のような音と大きな歓声が広がった。


「アレなんの音?」

「あれはきっと修練場だな」

「騎士団はもちろんの事、ここに登録している冒険者も稽古をつけられる場所だ」

「へぇー、そんな場所も用意されてるんだ。街のギルドとは大違いだね」

「まあな。国を守るって言うのはそういう事だ」

「じゃあ、まずは修練場を見てみるか」

「うん。そうしよう」


大理石の広間を抜けて奥へ続く修練場へと行く二人。


途中で受付があり、そこの女性と何やら話す父。


騎士団員と冒険者用の修練場だが、父さんの一声で関係ない俺まで通してくれた。


バキンッ!バキンッ!

ドスドスッ!


ーーうおーー!

ーーとりゃーー!!


ーー燃えろー!!ファイヤー!!



真剣に己を鍛える人達が大勢居た。

騎士団候補生や冒険者たち

武器、素手、魔法なんでもここで高めあえる環境。



ーーソーンは思う。


レベルが低いとは言わない。

だが、余りにも無駄が多くまだまだ改善の余地があり過ぎる。

と。


いや、待てよ。

ここには俺が真に学ぶべき動きが秘められている可能性がある。


最後の試練の時に父さんにも言われたが、ギリギリで動くと言うことで必死さを出したつもりだったが結果的には無駄のない動きになっていたのかもしれない…


現に今俺は、この人達に無駄動きが多いと思ってしまった…


いや、無駄なんてことはないんだ!

人様の事をそんな風に言える立場ではないぞ!俺!


無駄を無駄のない目線で学ぶ。


今のは一体どうやったんだ!

なぜあそこに攻撃をして、そっちに動いた!?

なんだ!今のは!目眩ましか!?

フェイントがフェイントじゃない!?


父さんなら一撃で終わらせる所で、この人達は何手もかけている。

なんて高度な技術なんだ…


す、凄すぎる。



強すぎる父のもとで修行をこなし、そして自ら重い装備という負荷をかけてきたソーンにはこうして切磋琢磨している人々が新鮮に、そして冒険者の道を諦めさせるためのノウハウが詰まってるように見えた。



「そんなに気になる所があったか?まぁ俺にとっちゃお遊びみたいなもんだけどな」


(いや、そうじゃないんだ。どれもとても真似のできる代物ではない…)


「ははは、そりゃ父さんだからね」


(ここだったら、街のギルドに固執しなくてもいいかもしれ)



「オラァーー!!!」

「お前たちは何をしているかー!!!」



稲妻が落ちたよな、この頑丈な建物全体を揺らすんじゃないかと思うほどの轟音がした。


いい緊張感で修練をしていた全員が一気に顔が強張り、緊張感が張り詰め声のした上方を向く。


そこには影までもが真っ直ぐに伸びる、清廉な人が立っていた。


(この威圧、きっとこの人も隊長なんだろうな)


「そこで聞けー!!!」


ザッ!!


固まっていた候補生や冒険者達が真っ直ぐ立ち、体ごと同じ方向を向く。


関係ないのにこっちまで緊張をしてしまうような空気に包まれている。



コツ


コツ



その後ろから静寂に響く歩く音。


大きな声の男の隣に一人の女性が並び、男が一歩引いた。


「団長」

「ああ」


(隊長!?男の人じゃなくてこっちの女性が!)


マルコは置いておいて、残りの団長はイカツイおじさんを勝手にイメージしていたソーンは綺麗な女性隊長に驚いた。


(まぁ、でも思えばお母さんが総指揮を執ってるんだ、男女や年齢は関係ないか…)


しなやかな出で立ちで、片目にかかるくらいの前髪の毛先を遊ばせ凛とした女性が持っていた杖を床に突く。


ドン。


「君たちは今、何をしていた?」

「「……」」

「オォォイ!!!」

「隊長が聞いているぞ!!!今お前たちは何をしていたんだ!!!」


まるで静と動をそのまま形にしたような二人だ。


「…訓練…です」


一人の勇気ある人が声を震わせながら言った。


「それは一体、誰のための訓練だ?」

「…国と王のためです!」


大声の男は黙っている。


「王や国のため…か」



沈黙。



「私には、ここで君たちは自分のためにやっているよいにしか見えない」

「ここは技を披露する場所ではない」

「ましてや戦場は命と誇りをかける場所、魅せるための舞台ではない」

「一つ一つの行動に気を払い、全て脅威を薙ぎ払わなくてはいけない」

「その準備をする所だ」


大声の男が静かに修練場へと飛び降りる。


かなりの高さからなんの躊躇もなく飛び降りた、その姿に全員が息を呑んだ。


ブワッ


着地の寸前人一人を浮かすほどの風が足元から上がった。


隊長の力なのかこの人の力なのか分からないが、無傷で降り立つ。


上に居た時は分からなかったが、威圧感が凄かった。


落ちていた訓練用の木剣を拾い構える。


「始め」

「はい」


隊長の小さな声と共に動き出す。


ドジュッ!!

ザシュ!!

ドサ。


先程まで木剣によって“叩かれていた”木人がいとも容易く“貫かれ”“斬られ”二つになった。


ブスッ


木剣を地面へと刺し、次は素手。


「…ふぅー」


息を整え再び構える。


男の前に岩の壁が生成される。


ドスッ!!

バギィ!!

ドゴォーーン。


数発で粉砕して見せた。


「見たか?これが王や国の脅威となるものを全て薙ぎ払う準備であり技だ」

「もう一度問おう。君たちがやっていたことは何だ?」


その光景と問いに誰もが言葉を失った。


「ガハハハ、こんなひよっこ共にも容赦はないなアイニーは」


男は無言で木剣を所定の位置へ戻し、隊長の元へと戻る。


「ここで得る力は見せ物ではない」

「王や国のために使い守るためのものだ」

「一人の慢心が百を殺す」

「その事を肝に銘じろ」

「分かったか?」


「…は、はい!」

「「はい!」」


緊張感が張り詰めていた空気は、やる気と誠意で包みこまれた。


「修練を再開しなさい。これからを楽しみにしている」


そして彼女たちは踵を返した。


ーーす、すげぇ…

ーー今の見たかよ

ーー俺団長と目が合っちまったぜ


彼女たちが去ったことによって、雰囲気が戻った。


だが、ここにいる全員の目つきが先ほどとは変わっていた。


「いいものが見れたな。今のは四番隊隊長の【アイニー=マテリアル】と副隊長の【ノーリス】だ」

「隊長って立場の人は言葉だけで人々を変えられるんだね」

「マルコさんも相当だったけど、隊長って立場の人は凄い」

「それにあのノーリスさん?の無駄のない動き。洗礼された感じの迫力があったね」

「ほう、流石俺の息子だ。雰囲気にのまれずよく相手を見れているな」

「いや、そんなことじゃないよ。ただ凄かったなって思ってさ」

「王や国を守るって言う使命を真っ直ぐに請け負ってる感じが」

「そうだな。そのための騎士団制度でもある。ただの冒険者は依頼をこなすだけで王や国の事なんぞ考えて動く奴は少ないだろう」

「なるほどね…国や世界…」


(俺には遠い話だな…)


「そろそろ行くか?」

「行こう」


二人は修練場を後にした。

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― 新着の感想 ―
はじめまして。Xの企画からお邪魔しました! RTありがとうございます!ブックマークと評価もさせていただきました。感想でコツを教えて頂けたら嬉しいです! 修練場のシーンがとても印象的でした。ソーンが…
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