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第9話『待ってろよ!勇者の肩書き!!』

「そろそろ腹減ったな!報酬も入ったし飯でもどうだ?」

「あお、そうだな」

「よし、あの俺達の出会いの場で今宵も円卓を囲もう」


(何かたまに世界観強めになるよな…)


七福亭


ガツガツッ!

バクバクッ!


「いやー、一仕事終えたあとの飯はまた一段と美味いな!」

「そ、そうだな」

「ところでソーン」


頬いっぱいにご飯を溜めながら言う。


「ん?」

「肩書きみたいなのってないのか?」

「ほら、俺は拳闘士で登録してるじゃん?」


(そうだったのか)


「そう言えば特にないな」

「冒険者ってのは、ギルドに登録してる人の呼称だもんなー」

「だろー?何かあった方がカッコよくないか?」

「んー、まあそうだなー」

「例えば、剣士ソーン!とか鋼の肉体ソーン!とか漆黒を纏いしソーン!とかどうだ?」


(いや、後半の二つは自称になるでしょ!)


「その肩書って国から認められたやつじゃないと承認されないんだっけ?」

「まぁ簡単に言えばそうだな」

「俺は実家が道場やってるから、そこで修行して拳闘士になったんだ」

「そうだったのか」


(実家で修行かー)

(そしたら俺は父さんとの修行だなー……)


父のある言葉を思い出した。


ーーー

「まずは勇者になれ」

「あれば誰でも取れる称号だ」

「大した使い道はないが、最初はあると便利かもしれんな」

ーーー



「勇者…か…」


ボソッと呟いた。


ガタッ!


「何だと!勇者だと!?」


突然身を乗り出すルドル。


突然の出来事に目を丸くした。

と、同時に脳がフル回転した。


ーーー

本気で言ってるのか??

そんな誰にでも取れるチンケな称号取ってどうするんだよ!

そんなやつとは一緒にいられないぜ!

こっちが恥ずかしい!!

ギルドにも顔を出すんじゃねぇ!

ーーー


と、胸ぐらを掴まれる未来が見えた。


(いいかもしれない!これだ!)


「あぁ、俺には勇者くらいが丁度いいと思うんだ」


真面目なトーンで続ける。


「でも、勇者くらいじゃ大して何もできないかもしれないが…」

「…本気で言っているのか?」


(来た!想像通りだ!)


「俺はそのつもりだ」

「こりゃ、マジな目をしてる。だからあの仕事か…」


ドカッ

乗り出した体を勢いよく椅子に降ろす。


「すまん、ルドル」


(この後は胸ぐらを掴まれるタイミングだ!)


「……だ…」


(よく聞き取れない)


「…こうだ…」


(お前みたいな奴はこうしてこうだ!って?)


「最っっっ高だ!!」


(そうだろそうだろ! ん!?最高!?最低じゃなくて!?)


「俺の隣に立つやつが勇者!」

「しかも勇者“くらい”と来やがった!」


(それのどこが最高なんだ?)


「そしたら俺は拳闘士で止まってる場合じゃねぇなあ!!」

「拳王“くらい”目指さねえと!」


どんどん目が輝く。


(その“くらい”の使い方は違うでしょ!)


「うおーー!こうしちゃいられない!」

「どんどん飯を食ってどんどん強くなるしかない!」

「おっちゃん!このうまいヤツおかわり!」

「あいよー!!どんどん食いねぇ!!」


(なんでそんなにテンション上がってるんだ?母さんの手紙にも)


ーーソーンなら勇者の称号くらい簡単に取れるから、いらないだろうけど一応入れておくね。


(と勇者への推薦状が入ってたし。推薦状がなくったって簡単ってことでしょ?)


「んでよ、勇者になるためにはどうしたらいいんだ?」

「母さんの手紙によれば、書類を提出したらいいみたいだったな」

「書類??そんなんで通るわけないだろー!そしたら全員勇者になるわ!」


カカカと笑う


「え?誰でもなれるんでしょ?」

「え?いやんなわ…」


(いや、ちょっと待てよ)

(ソーンは母さんからの手紙って今言ったな)

(きっと優しい母さんが息子の夢を潰さないためにそう言ってくれてたのか…)

(そんな優しさを俺が砕いて言い訳がない!!)

(そうだろ!ルドル=マフティス!)


「じ、じ、実は俺もよく知らないんだっ…た」


(急に歯切れが悪くなった…?)


「まあ、とりあえずやってみたらいいじゃんな!」

「うんうん!きっとまずは書類審査かもしれないしな!出してみようぜ!」

「おう!そうだな!とりあえず勇者になったら次はスライムと戦いにでも行くか!」


(勇者になった途端スライム…?)

(ソーンのやつ上を目指してるのか何なのか分からんな…)


ピキーン!!


ここでルドルはさっきの薬草の一件で深読みをせざるを得なかった。


(きっと超絶技じゃないと倒せない個体や、コンマ数ミリ秒だけ露出する最上級の部位がありそれを採取するためとかだったりするのか…)


「いいな!それ!楽しみだ!」


これはルドルの本当の気持ち。


最高の笑顔で返す。


「だがまずは勇者になるための書類を出さないとだな!」

「落ちるのが普通だと思ってリラックスしてやっていこうぜ!」


(落ちるのが普通って俺は既にそこまで出来なく見えてるのか…)

(最高じゃん!!)

(でもここで落ちたら流石に父さんにも申し訳なくなりそうで…とりあえず勇者にはなっておかないとな)


「ありがとな!」

「ソーン!結果はどうでも俺は応援してるぜ!」

「別に焦る必要はないからな!」


(めっちゃ気を使ってくれてる気がする…ルドルはいいやつ過ぎるな…)


(ソーンのやつそんな簡単になれると聞かされてたのか…)

(勇者はそんなに甘いもんじゃない…)

(でも落ちても心配すんな!俺達はまだ始まったばかりだぞ!)

(だが、早めにこの件は終わらせた方が傷は浅くて済みそうだな)


「善は急げか!?」

「ははは、そうだな」

「とりあえず俺も肩書きを手に入れる」

「明日にでもまた王国ギルドに行って来るよ」

「また?」

「そうなんだよ、昨日街のギルドに登録する前にちょっとね…」


(ソーーーン!!)

(もう既に王国ギルドで登録をしようとしてたのか…!!)

(でも登録出来なくてこっちに来てたんだな…)

(あっちのは狭き門だ…しっかり経験を積んでからじゃないとな)

(まぁ、ここで俺と頑張ろうぜ!!)


「そうか。でもこっちで登録したおかげで俺たちが出会ってセブンスヘブンが出来たんだ!」

「これが最上だろ?」

「それはそう思うよ」


(王国ギルドで登録してたと思ったら…)

(きっと今頃行きたくもない大きな依頼に行ってたかもしれない…)

(街のギルドで登録出来て本当によかったよ)


「ふぅー、食った食った!」

「ごちそうさまでした」

「行くか!」

「だな」

「ありがとうございましたー!」


七福亭をあとにする。


「よし!じゃあ今日のところはその明日に向けて解散するか!」

「ホントいい時間だ。そうするか」

「じゃあ、ソーン明日はいい具合に気張ってこいよ!近くで待ってるからよ!」

「ありがとう!でもそんな恥ずかしいだろ」

「いいじゃんかよー!喜びも悲しみも一緒だ!な!」


(勇者になったくらいでそんなに喜ぶことでもないでしょー)

(いや、俺の肩書きが出来るのが嬉しいのか?)


「とりあえず、明日だな!またなルドル!」

「おう!また明日な!気を付けて帰れよー!」


(勇者になれなくても落ち込ませないようにしないとな…)

(まあ明日の事は明日考える!明日の最上を!!)


「うおー!!燃えてきたー!!」


突然走り出した。


そんなルドルの背を見送って歩き出すソーン。


(勇者になれば、色々受けられる依頼が増えるはず!)

(誰でも分かるように、そこで俺はちょっと低いくらいの丁度いい評価を狙っていく!)

(そして、やっぱりまだ冒険者は早かったと思ってもらうんだ!)

(未来が明るくなるぞ!)


グッ!

小さくカッツポーズをする。


「待ってろよ!勇者の肩書き!!」


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