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第53話『俺の方こそごめん!!』

闘志が溢れ愛情と嫉妬のが爆発した二人の間に、動きを止める為の言葉、黄金に光り輝く剣の存在感を持って割って入った。


ハァハァ…


「何よ…ソーン?」

「わ、私なら…まだまだ、これからなんだけど」


肩を大きく上下させ口で呼吸を余儀なくされるリエル。


普段から“綺麗”と言う事を芯に持ち、魔法や所作、言葉などに散りばめられているのに、綺麗な青みがかった長い髪は乱れ、身体は熱を帯びているのか額から汗が顔を滑る。


この戦闘がいかに本気なのかをその姿、その呼吸が物語っていた。



そしてミリティス。


彼女は平静を装っているのか、疲れていないのか見た目は対しては変わっていないように見える。

だが、役目を終えた薬莢、空になり使い道がなくなった弾倉が辺り一面にバラ撒かれていた。

銃を握る手は疲労からか、少し痙攣を起こしている。


これも激しい攻防の末の結果だろう。


「ソーン。……安心して。“巨悪”はもう直ぐ、倒せるから」


疲労困憊の中二人は未だに闘志をむき出しにして、お互いを見つめ合っていた。


「勘違いなんだ!」

「ミリティス、リエルとルドルは俺のパーティーの仲間で巨悪何かじゃない」

「……巨悪…じゃない…??ただの仲間…?」

「リエル、ミリティスはただ昨日教えてくれたリンゴ酒の作り方を話しに来てくれただけなんだ!(きっと!)」

「……な、何よそれ…泥棒猫じゃ…ないの?」


彼の導き出した答えはこうだーー


巨悪と言う言葉を頻繁に言い放ち、ルドルを撃ち、そしてリエルとここまでの激闘を繰り広げていた。

何故だかは分からないが悪の心を持った強敵だという認識。

それを取り払えば矛は収めてくれると。


そしてまたしても何故だかは分からないがミリティスに対して、かなり怒っているリエル。

まぁ俺の説明が悪かったのはあると思うんだけど、仲間を倒しに来た訳じゃないとちゃんと教えてあげればいかりも収まると。


本気でヤるつもりなんてなかったはず。

あの笑顔は本物だったんだ。

それに狙撃銃を使っていないという事が何よりの証明だろ。


とーー


「「わ、私の勘違い…」」


(ソーンの仲間に私は…何て事を…!!)


(ソーンの好きなものの作り方を教えに来ただけ…!?そんな人にひどい事を…!!)


二人はここに至るまでの、今日の行動全てを一瞬の時の中で思い返す。


(本気だった…ただただソーンのためを思って…)

(全てを消し去ってあげたいと…)

(だが巨悪だと思っていた人達はソーンの大切な仲間だった…)

(そんな仲間を手に掛け、居場所を奪ってしまっていたら…私こそが巨悪になってしまうところだった…)

(二人が心身ともに強くて本当に助かった…)


鋭く尖っていた両目は丸みを帯び穏やかに閉じられる。

疲労で痙攣を起こしていた手から銃は離れ、薬莢と弾倉と一緒にその役割を終えふんわりと森の大地に抱かれた。



(私は…)

(勝手に勘違いして…勝手に嫉妬して…)

(こんなに髪を振り乱し、服を汚し、汚い心に動かされ)

(そんな心に負けて、ソーンにお酒の作り方だけを教えに善意で寄ってくれた人の命を、ソーンの楽しみを奪ってしまう卑しい女になるところだった…)

(彼女の善意が真っ直ぐで芯のある強い人で良かったぁ…)


心を鎮めいつもの自分に戻れる様に、目をそっと閉じ手を胸の前で組み静かに大きく息を吸い大きく吐く。

後ろで刺さっていた氷の槍は見る影もなく、鋭利な刃の部分は空気中に霧散し、杖のみが横たわっていた。



「ホントにすまなかった!!」

「本当にごめんなさい!!」


二人は息を合わせたように同じ謝罪の言葉を放った。

腰は直角に曲がり、地面をマジマジと見つめ真に心からの申し訳なさを精一杯、相手に与えていた。


冷静沈着に戦況を把握し先手先手を打っていたミリティスだが、今は後先考えずに考える余裕もなく今までの行為全てを否定する様に、目の前の女性と先の戦いでやり合った橙色の頭の男性に、激闘の讃えと共に頭を下げた。


美しく綺麗に揃えられていた髪を元に戻すよりも、洋服についた泥や汚れを落とす事よりも先に、リエルもただただひたすらに申し訳なかったと言う気持ちのみが残った。


銃声、怒号、氷の魔法、が飛び交っていた森には太陽の暖かな光と草木を撫でる微風、そして静寂が四人を包んむ。



二人の様子を安堵の表情で伺いながらも、ソーン自信もここまでの事態を引き起こしてしまい申し訳なさがあった。


「ふ、二人とも!」

「俺も!申し訳なかった!」


二人よりも深く、迷いもなく潔く、大いに頭を下げた。


「元はと言えば俺がちゃんと説明をしなかったのが悪かった!」

「もっと早くこうするべきだった!」

「二人とも…いや三人とも無事でホントに良かった…!」


ソーンの謝罪の言葉に二人は顔を上げ、視線が交差する。


フフフ

フッ


口角が自然と上がり丸い笑顔が二輪咲く。


「悪いのはソーンじゃないでしょー!全くズレてるんだから〜」

「その通りだ。むしろソーンにも謝らねば。心配をかけてしまいごめんなさい」

「私も。ごめんなさい」

「いやいや!俺の方こそごめん!!」


朗らかな謝罪大会が小さく開かれていた。


(こ、これで一件落着…か?)


こうしてセブンスヘブンの大事件の一つ、ミリティス襲撃は無事幕を下ろした。


ただの仲間、ただのお酒の作り方を教えに来てくれた善人。

そんな勘違いを残し…


「おーい!ソーン」

「俺もそっちに混ぜてくれー!」

「それに腹減った〜」

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