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第47話『何がどうなった!』

世界が起き上がるまでまだ時間がある静まり返った夜。



そんな時間に“彼女”は拠点を観ていた。



肉眼では確認できないほど遠くから。



赤色レーザーポインター照射され続ける。


ビーーーッ


ーー門。


ーー玄関。


ーー窓。


ーー二階。


人影はなし。


高性能の集音機器を向ける。


ジーーーーッ


『ソーン…まだこれからだ…』

『ウヘヘ…ソーンさん…』

『スーッ…スーッ…』

『ウフフ…ソーン…』


(四人…)


(上に一人、奥左右に分かれて二人、恐らく地下にもう一人か…)


(この寝息の周波数…奥にはソーンが居るだろう…)


(私の“魔弾”ならこんな距離問題はない)


(だが、ソーンに万が一の事があったら…)



ーーー


魔弾


狙撃手であるミリティス。

彼女は自身の魔力を込めた弾丸を、銃に込め射出する。

その弾丸は込める魔力の“種類”により“色々”な効力を発揮する。

速度、回転力、威力、精度、これらなどを強化し戦う。

狙撃銃以外にも、近距離、中距離と使いこなせる。


ーーー


(焦ったら負けだ)


狙撃手は動かない。


狙った標的が射線に現れるまで。


集中力を途切れさせず、照準を定める。


身体が動かないよう小さく長く呼吸をし続ける。


「…」


ジーーーッ


再び集音器を取り出し、一階の部屋に向けた。


「スー、スー」

「…よく眠っている」



「ソーン…君の平穏は…私に任せて…」



ーーー

ーー



太陽の光が空をオレンジに染め出す。


「ハッ!!」


目を大きくして勢い良く声を出した。


「ヤバい!今何時だ!?」

「やつらは!?」

「くっ…」


優しい朝日の眩さに一瞬、眉間にシワが寄る。


「私がスコープを覗きながら寝てしまったと言うのか…」


ヨダレを拭き取り、即座に銃を構た。


「こんな状況でもソーンは私に平穏をくれるとは、な」

「今度は私が!」


ガチャッ


!?


拠点の扉がゆっくりと開いた。


グッ


緊張感が走り構える手に力が入る。


ふーーー。


(さぁ、来い)


目を見開き、引き金に指をかける。


ーー「んーーっ」

ーー「今日もいい天気になりそうだ」


玄関を出た所で静かに大きく伸びをしたのは


「ソ、ソーン!!」


すぐに引き金から指を外し呼吸を戻した。


昨日の黄金の服から、私服に身を包んだソーンが元気に現れる。


ーー「先ずは水やりだな」


ネオギガンティックの方に脚を向ける。


ガサゴソッ


目を離したくないミリティスはあの感覚のみで、集音器を探る。


カチャッ

ジーーーーッ


「〜♪」


二日酔いや眠さなど一切感じない。


むしろ爽やかさすら感じるほどの清々しい表情だった。


(やけにご機嫌だな)


(建物の奥に何かあるのか?)


今ミリティスが居る位置は、拠点の正面を全てカバー出来るような場所。


周りが塀に囲まれていることから、出入りはこの扉のみだと踏んだからだ。


スコープを覗きながら集音器を身体に斜めに掛け、ソーンの行方を追った。



「おはよう、皆」



(皆?)


(な…!)


ソーンが笑顔で挨拶した先にあるのは、土と一本の植物の枝だった。


(ソーン…)


「水だぞ〜」


リンビアにより、ネオギガンティックの近くに水道が増設されており汲んだ水を撒く。


「大きく育っていっぱい実を付けるんだぞ〜」


まるで子供をあやすように話しかけ水をやる。


「昨日、リゴン酒と言うのを知ったんだ」

「これがおいしくてな」


(私との話だ)


(そんな風に思ってくれてて嬉しいよ)


何故か心が火照る。


「自分でも作ってみたくなったよ」

「お前が育つ頃には…きっと俺も…!」


(ソーンにとってはあそこは、一人になれる大切な居場所なのかもしれない)


(私が見ている間は、誰であれ君の邪魔はさせないよ)



キィー


「おーす!昨日遅かったのに、今日も朝早いな!」


ネオギガンティックを覗ける窓から、こちらも二日酔いを感じさせない元気なルドルが顔を出した。


「出たな、巨悪の一人」

「ソーンの一時を邪魔するな」


その場で瞬時に狙撃銃を構えた。


(見えていれば外すことはない)


ふーーーーー。


引き金に指をかける。


(!?)


ソーンが射線に入る。


(…ソーンが)


ーー「おはよう。何だか目が覚めちゃってさ」

ーー「昨日の興奮冷めやらぬってか!?」

ーー「いや、そんなんじゃないけどな」

ーー「ハハハ」


(ダメだ、ここからじゃ狙えない)


射線角度を変えるために横へずれる。


ーー「昨日帰り一緒じゃなかったみたいだけど、どこ行ってたんだ?」

ーー「あ、いや別に、ちょっと散歩しようかなと思ってさ」

ーー「へー、だからか何かいい顔してる気がするな!」

ーー「いやー、それがさ昨日…」


ジャキッ


再び構える。


(今度こそ)


ふーーーー…!?


またもソーンが射線に入ってくる。


「何で!?ソーン!」

「銃弾を曲げる事など容易い…だが…!!」


ゴトッ


そこ場に狙撃銃と集音器を置いた。


「ソーンにもしものことがあっては…遠距離はダメだ」

「人知れずやりたかったのだが…仕方ない…」


腰から二丁の拳銃を取り出した。


ガチャッ

ガチャッ


銃弾を確認。


「問題ない」

「今行くよ」


ザッ!


トン


トン


駆け出し、岩崖から軽やかに下へ降りる。


(銃は後で回収すればいい)


(今はソーンの平穏が一番!)


タタタッ


朝日を背に全力で走る。



「そんなのがあるんだな!」

「だからこのリゴンの木から実が取れたら作ってみたいと思ってさ」

「いいじゃんか!俺も楽しみがまた一つ増えた!」

「ハハ、焦らず早く育てないとな」

「んじゃあ、俺はちょっくら走ってくるわ!」

「おう!気を付けてな」


キィー

パタン


ガチャッ


「しゃー!あの朝日に向かって!」


(今日もルドルは元気だな)


「太陽の光をいっぱい吸って大きくなれよ」


枝に優しく触れる。


グゥ~

空腹を知らせる音がなる。


(さて朝ごはんの用意でもするか!)



ドタドタッ!!


「ソ、ソーン!!」

「お?今日は帰りがいつもより早いな!」

「伏せろぉー!!」

「うわーー!!」


ドギャーンッ!!

パラパラ


「すばしっこいな…」

「この私がここまで外すとは思わなかった…」


土煙が舞う。


「ゲホッゲホッ」

「大丈夫か?ソーン」

「ああ。何が何だって言うんだ」


手を貸しソーンを引き上げるルドル。


「分からん!」

「走りに行った途端、逆方向から来た“武装”したねーちゃんが突然撃って来たんだ!!」

「武装したねーちゃん…敵…か?」


刹那、微かに土煙が歪む。


(!!)


(何かくる!!)


「ルドル!」

「おう!行くぜ!」

灼熱爆裂猪拳ヒートバレットボア


既にルドルはこの技をものにしていた。


(え…)


(えぇ…!?)


二丁の拳銃を構えて土煙の中を歩いてきたのは、昨日一緒に飲んで、パーティー加入を“断った”はずのミリティスだった。


「ミ、ミリティス!?」


ニコッと笑顔になる。


「ソーン!助けに来た」

「え?知り合いなのか!?」


ソーンに質問するように、困惑するルドル。


「ここなら外さない」

「えっ…」


チャキッ

パンッ!!!


躊躇なくルドルの頭を撃ち抜いた。

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