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第44話『そのビール…』

酒豪でもあるラヌシアに続くように、アインテッド、アイニー、ラシュルムと王妃が酒を飲み尽くして会はお開きになった。


王国の女性陣たちは皆お酒が強く、まだまだこれからだと言わんばかりに酒を求めてその場を後にした。


ソーンももちろん誘われたが、丁重に断った。


マーデン王は仕事へ


マルコは鍛練に向かい、トレンとタナナも自分の仕事に戻っていった。


皆を送ってくれると言ってくれたが、歩きたい気分だったためソーンは一人歩いて帰ることにした。


皆は疲れと酒の勢いで馬車に乗った途端、眠りに落ちていた。


(つ、疲れた…)


(もう結構日が傾いてきたな…)


城を背にぐーっと伸びをした。


(この服脱ぎたかった…)


ーーー


「トレンさん!」

「ソーン様、お疲れ様でございました」


酒を飲んでも、シラフと何も変わらないトレン。

キッチリとお辞儀をする。


「素晴らしいお姿でございました」

「あ、ありがとうございます…」

「もうお帰りですか?」

「でしたら馬車のご用意がありますので」

「ありがとうございます」

「でも、俺は歩いて帰ります」

「皆は馬車にお願いします」


ルドルはマルコと熱い談義をかましている。

リエルは顔を赤くして、酔っ払ってるリンビアとワチャワチャしていた。


「承知いたしました」

「これお返しはどうしたら…」


着ていたジャケットを指して言う。


「ご返却無用でございます」

「もちろん御三方もご一緒です」

「え、でもこんな高価なもの…!」

「正装とは服が着る人を選びます」

「そして皆様はよくお似合いでございました。服も喜んでいるように思えます」

「皆はそうですけど、俺は別に」

「ハハハ、ご謙遜を」

「またいつ必要になるか分かりませんから、どうぞお持ち下さい」

「もし本当に不要でありましたら、引き取りに伺いますので本日はどうか勲章と共に輝いて下さい」


ーーー



「輝け…か…」


ポチャン。

小石を蹴って流れる川に入れた。


「皆は寝てるだろうし、ちょっと一人で飲み直すか」

「この辺は知らないけど探索だ!」


王都へと脚を進ませた。



……


……



「にしても、夜も賑わってるなー」

「流石王都!」


お店や商店街には夜でも人が多く、この街の大きさを物語っていた。


街灯が煌々と照らす夜道には、不安感は一切なくむしろ昼間より楽しそうな雰囲気が漂う。


ちょうど良い店がないかと、周りを見渡しながら歩いていると一件のBARのような所を発見する。


(まぁお腹はそんなに減ってないし、ここで少し飲んで帰ろうかな)


胸にある剣の勲章がお店の光に反射する。


(はぁ〜、何でこんな勲章貰っちゃったんだろう…)


(俺が求めてるのは勲章なんかじゃなくて、自由気ままな争いのない畑ライフなのに!!)


(やばい、何か悲しくなってきた…)


(落ち着いて飲もう…うん)


ガチャッ


リンリン♪


BARの扉を開けると、上に付いている客が来たことを知らせる呼び鈴がなった。


外の雰囲気とは違い、薄暗く静かで落ち着いた時間が流れていた。


カウンターからは店員さんがこちらに気付く。


「いらっしゃいませ」


会釈程度の挨拶。


「一人なんですけど」

「お好きなカウンターへどうぞ」

「はい」


数席あるカウンターには殆どお客さんは居らず、一人二人座ってる程度だった。


初めてのお店で一人と言うこともあり、勝手が分からず目についた席に腰を下ろした。



コトッ


席に着くと、小皿に入ったナッツが出てきた。


「お通しです」

「飲み物はいかがされますか?」

「あ、えっとこれをお願いします」


ドリンクの書かれたメニューが目の前にあり、一番上の物を咄嗟に頼んだ。


「かしこまりました。少々お待ちください」


ガチンッ

ジュゴーッ


店員は振り返り、冷蔵庫で冷やされたジョッキを取りサーバーからキラキラに輝くビールを注ぐ。



シュッシュッ



無駄な泡を落とす。


「お待たせいたしました」


泡とビールの割合3:7と完璧な黄金比で提供された。


「ありがとうございます」


ジョッキを持ち喉の奥に一気に流し込む。


ングングッ


「プッハァーー!」


ソーンは大きな仕事を終えたかのようだった。


(うまい)


喉を通る心地の良い刺激、ホップの苦み、二口目を優に誘う美味しさと中毒性がある。


お通しで出されたナッツとの相性も抜群だった。


ポリポリ


(このナッツとの組み合わせ最高だな)


(これを味わえただけでも来た甲斐があった)


(他にはどんなお酒があるんだろう)


メニューに視線を落とす。


リンリン♪

また入り口が開いた音がした。


「いらっしゃいませ」


慣れているのか無言でソーンと一つ席を空け、その人は座った。


どんな人かと気になり横目で見る。


その人は若い女性だった。


(この女性カッコいいな)


(俺と同じくらいか少し上くらいかな?)


ソーンは初めて一人で来たのに、この人は何度も通ってるのか余裕の感じがとてもかっこよく写った。


「ビールをお願い」

「かしこまりました」


再び完璧な黄金が提供された。


その女性は少し眺めてから一口飲んだ。


ングングング


(飲みっぷりがとても良いな)


(さっきも凄い女性たちを見てきたけど、何だか綺麗に飲むな〜)


ングングング


(あれ?まだジョッキを離さない!?)


ングングッ


「ッン……!!プハァー!!」


ジョッキは既に空になっていた。


(!?!?)


「おかわりを」

「かしこまりました」


(す、凄すぎる…!!母さんにも引けを取らない飲みっぷりだ…!)



シュワシュワ


ソーンのジョッキのビールから泡の弾ける音。


(おっと、いけない!)


(人様をジロジロ見てしまった)


ゴトッ


ングングッ


「ックー…」


(次は何を飲もうかな、ちょっとゆっくり飲みたい気分だ)


まだビールが入っているジョッキを少し避けて、再度メニューを眺める。


ーービール

ーーマシュリクの夕焼け

ーー笹王

ーーリゴン酒

ーーマスターのオススメ


(ほぉー!リゴンはお酒にも出来るんだ!)


(ちょっと飲んでみたいな!)


(きっと美味しいんだろうな〜)


(自分で作った果物で作るお酒か〜、最高じゃん!)


そんな事を夢想していると


(ん?)


ビールを掴もうとする手が空を掴む。



ングングッ



“隣”の女性はビールをひたすら煽っていた。


ビールを置いたはずの所にはその姿はなく、カウンターを丸く濡らしていた。


ゴトン。


その濡れた場所にジョッキが帰ってくる。


(あ、俺の)


飲み干したのは隣の女性だった。


(さっきより席近くなってない!?)


気付くとカウンターには客が増えており、その女性は一つ席をズレていた。


「あ、あの」

「……」

反応はない。


「マスター。リゴンの酒を貰える?」

「かしこまりました」


ソーンを無視しお酒の追加を頼む。


(聞こえなかったかな?)


「すいません、お姉さん」

「チッ」


(し、舌打ち!!?)


しっかりと聞こえる音で威嚇する。


「そ、それ」



(ナンパか…)



(しつこい)



(ウザい、殺すか)



ジャキッ



ソーンのド頭にハンドガンサイズの小さな銃を向けた時。



「そのビール…俺のなんですけど…?」



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