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第39話『でも、やっぱり派手だろーーー!!!』

「ではソーン様の番でございます」

「…はい」


(俺は無難に黒にしよう)

(ルドルはこの色で、きっとドレスの二人も派手だろうし)

(うん、それがいい)


「ソーン様のお召し物はこちらになります」


トレンが出したのは、青、緑、金の三色だった。


「!?」


(なんでだよ!!!)


「俺ほどじゃないがソーンのもかなり良さそうだな!!」

「リーダーは派手じゃないと!!」


(その理論もなんでだよ!!)


「おっしゃる通りでございます」


(いや!だから!トレンさん!!)


「あの…もっと無難な黒とかはないんですか!?」

「俺には派手と言うか…目立ち過ぎと言うか…」

「ご謙遜を」

「セブンスヘブンのリーダーともあろうお方が、派手で目立ち過ぎる、と…」


(怒らせるようなことを言ってしまったか…!?)


「あ、えっと…」

「むしろ、どれもソーン様の輝きに比べたらステーキプレートの上の野菜」

「新鮮な魚の刺身の下に敷くツマのように、そっとお力添えをさせていただく程度にございます」


(何の話だよ!!)


トレンの指先が、流れるような動作で青色の礼服を広げた。

それはルドルの橙ほど派手ではないが、光を浴びるたびに青白い輝きを放ち、控えめながらも「圧倒的な強者」の風格を醸し出している。


「先ずは“青”」

「青とは、海や空、冷静で沈着、知性を象徴」

「伺った話では、戦術の構築。圧倒的な知略。敵の特性すら自らの武器として使うほどの視野の広さ」

「そんな意味が込められております」

「ソーンにピッタリじゃねーか!!」


(どんどん進んでいく…)


「い、いや、俺はもっと…」


スッ

スッ

シュル

パサッ

グッ


(俺は服脱いでないぞ!!)

(くそ!!)

(この人の前じゃ俺の服なんてなんの時間稼ぎにもならない…!!)


「いかがでございますか」


姿見に写る姿は、先ほどまで土まみれの男とは思えないほどに整い“居るだけ勇者”の風格ではなかった。


(めっちゃカッコいいな…)


(いや、ダメだ流されるな!)


「いやー、、、」

「左様で御座いますか」


次の緑の礼服を取った。


「では“緑”はどうでしょう」

「緑とは、植物の葉、バランスの調和、良識に富む」

「ソーン様の言葉は人々を巡り合わせ、繋ぐお力をお持ちでいらっしゃる」

「自然を大事にし、良識が富む故にその時の最善解を瞬時にお出しになる」

「こちらもソーン様を体現するかの如くのお色味」

「あ、いや、だから…」


スッ

スッ

シュル

パサッ

グッ


この礼服は浮く様な色ではなく、職人が計算し派手になり過ぎず下品でもなく圧倒的な美を表現していた。

まさに野原を凪ぐ草木のように、静かで自然と心が、目が、そっと奪われるような心地になる。


(これもいい…)

「これ…」


ブンブン。

頭を振る。


(危ない…)

(完全に飲み込まれるところだった…)

(かっこいいが…確実に派手だ…)

(だが!!)

(最後に残っているのはもう金…)

(それは何としてでも避けなければならない!!)

(ここで手を打っておくのが得策なのかもしれない…)


「トレンさん、似合ってるとは思いますが、これだとちょっとソーンには地味かもしれません!」


(ちょっと!ルドル!!何言ってんの!!)


「あのトレンさん?」

「左様で御座いますか…」

「ルドル様がそうおっしゃるなら、きっとそうなのでしょう」

「失礼いたします」

「あ、いや、ちょ、、、!!」


スッ

スッ

シュル

パサッ

グッ


「こちら“金”でございます」

「金とは、栄光や成功、変わらない価値の象徴」

「ソーン様ご自身の価値そのものを表しております」

「掴み取った光。ルドル様を窮地からお救いになったのもまた、これと同じ色をした剣」

「これはまさに運命とも呼べるものでございます」


金色の礼服は一つ間違えたら、成金、下品、誇示、傲慢。

良いイメージにはなりにくい。

だがこの膝裏辺りまである丈の長いジャケットは、その一切を受け付けない程の魅力があっり、反射する光は全てを照らした。

派手すぎないようにポイントで黒があしらわれている、ジャケットは身体にフィットし、豪華だが品のある仕立てになっていた。


(派手ーー!!)

(無理無理無理!!!)


「おぉー!らしくなったじゃねーか!」

「最上にかっこいいぜ!」


キラーン

ルドルの笑顔が光る。


(キラーンじゃないよ!!)

(それにらしいってなんだよ!)

(ルドルの中の俺はこれなのか!?これなんだな!?)


「私もそう思います」

「ルドル様のお言葉をお借りするなら、最上に御座います」


(やばい、この人もルドルと同じ感性の持ち主なんだ…)

(訂正を急げ!!)


「トレンさん!やっぱり俺さっきの」


コンコンコン


ソーンの声を遮るように扉のノックの音が響いた。


「いかがでしょうか」

「間もなくご出発のお時間となりますが」

「おっと、これは私としたことが」

「お二人ともお似合いでつい楽しくなってしまいました」

「では、ソーン様、ルドル様参りましょう」

「タナナ、出発の準備を」

「はい」


(え?嘘でだろ!?俺これで行くの!?)


「ま、待ってください!」


真剣な眼差しで声を張った。


「なんだ?緊張してるのか?」

「まぁ、行けばなんとでもなるぜ!」

「何か、ご不安などありましたら私になんなりと」

「王様を待たすわけにはいかねぇだろ?行くぞ!」


(アハハ…ダメだ。この二人には敵わない…)

(少しの時間だ…まぁみんなも派手だしひっそりとしてれば平気だろ)


諦めが肝心と心を沈めたソーン。


最後の確認と姿見で自分の格好を確認する。


(でも、やっぱり派手だろーーー!!!)




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