第35話『予想外な事しか起きないな!』
「…え?な、なんで…?」
「二番隊…隊長…!?」
マルコを知るソーンとリエルの二人は、この状況に狼狽する。
「今何が起きたッスか…」
「と、とりあえず分析を…」
状況を理解するために分析を急ぐ。
ハウンドの機能も使いメガネだけよりも、より鮮明な情報が収集された。
「誰だ…アレ…?」
ピロピロ銃が放たれた時に気が抜け、岩にもたれかかって座り込んでいたルドルには声が聞こえなかった。
マルコはピロピロ銃が使用されたポイントに、狂いなく到着していた。
「あ!ソーンさん!!」
「ど、どうも」
出してない手を握られブンブンと握手を交わされる。
「こんな所で出会えるなんて!」
「流石僕!故に奇跡!!」
「…」
(まさかの人が来てしまったぞ…)
「僕が一番乗りだと思ったんですけど…」
「ソーンさん…やはりマクラウル様のご子息!!」
「僕たち二人が揃ったらもうなにも怖くないですね!」
「故に無敵!!」
「い、いやぁ…ハハハ…」
(ちょっと!?なによあの雰囲気!!)
(笑顔で握手!?)
(ソーンってホントにあのマルコ=ブルーバードと仲良しなの!?)
(なのにそれを全然鼻にかけてない…)
(もう!なんなの!わかんない!)
ハンカチを握る力が強くなっていた。
遠目から二人を見ていた男は思う。
「クソッ…そこに立つのは俺の役目なのに…」
「不甲斐ない…!!!」
自分の力のなさを悲観する。
「今日だけだ…次からは絶対…!!!」
と、同時に心から燃え上がるのもまたルドルだった。
ピピピンッ
分析が完了した。
「どの数値もその辺の冒険者の比じゃない…!?」
「なんなんスかあの人…!!」
「それにソーンさんととても仲良さげな…」
「放った銃といい、あの人といい、ソーンさんには聞きたいことがいっぱいッス…」
(あぁ、どうしようこの展開は予想外…)
ガシッ
マノンは大きな岩を軽々と持ち上げ、マルコへ投げつけた。
ブォンッ!
!?
「マ、マルコさん!後ろ!!」
とてつもない勢いで迫る岩。
(間に合わない…!!)
ドゴォン!
パラパラ…
「やだなー、僕とソーンさんの再会を邪魔しないでください」
片手で粉砕し、跳んできた方向に振り向いた。
「うわ!何ですかあの謎の人は!」
マノンを目の当たりにして、その姿に驚く。
「やっとこっち見た」
「待ちくたびれた」
ふぁ〜
大きくあくびをするプルグ。
「!?」
「あそこにも冒険者が!」
シュンッ
リエル、リンビア、ルドルを発見したマルコは、そのボロボロさから手当てを行いに行った。
「大丈夫ですか!」
「ソーンさんと僕が来たからもう安心です」
「すいません、僕は回復薬を持っていなくて…」
「すぐに他の援軍の人達も到着すると思うので、ここで待ってて下さい」
その声はまさに騎士団の二番隊隊長の風格で、ここからは安全安心だと悟ってしまうような感覚になった。
ソーンも皆に近づく。
「君、援軍を呼んだんだ」
「マノンくらいじゃ、自分で戦うほどじゃないって事?」
ソーンを指差し言った。
「何か興が冷めた」
「私は疲れたしもう帰るから、全部好きにやっちゃっていいよ。マノン」
そう言うと、プルグはセブンスヘブンとマルコに背を向け岩山を飛び降りようとした。
ビュンッ!
「逃がしません!」
(この距離を…!?マルコさんやっぱりあの時は全然全力何て見せてなかったんだ…)
「はや」
マルコはプルグを掴み拘束しようとした。
「君はそう言うのが好みなの?」
「私とは趣味が合わない」
捕まっているというのに全く動じないプルグ。
「邪魔」
パァンッ!
光の羽根を瞬時精製。
自らを包み込んだ。
本能的に距離を取るマルコ。
(ヤバい!あの光は!)
「高魔力反応ッス!!」
「マルコさん!」
(ダメだ、聞こえないか!)
「リエル!疲れている所すまないが、一つだけ頼めるか!?」
「う、うん!」
「急いであのマノンの下に氷を広げてくれ!」
「アイツの下に?」
「ああ!なるべく広く頼むぞ!」
「分かった」
返事を聞く前に走り出していたソーン。
「って、ソーン!」
「んもー!なるべく広くってどのくらいよ!」
「全く…」
「まぁ、リンビアの魔力回復薬のお陰で何とか行けそう」
キリッ
目つきが変わり魔力を集中する。
《氷原美華》
バリンッ!
リエルの魔法が発動した瞬間、辺り一面が氷の世界へと変わった。
「うわー…すげぇーなこりゃ」
「リエルさんはどれだけの魔法を使えるんッスか!」
パキパキ
パキパキパキパキッ!!
ソーンの速度を超える速さで、凍っていく地面。
(まじかリエル…凄すぎる…)
(そして流石だ!!!)
マノンの足元を優に超えて、マルコとプルグをも超えていった。
「わぁ、凄いな」
プルグの光が膨張し始め、
氷を一瞥しその光に触れようとした時。
「マルコさぁーん!!」
後ろからソーンの叫び声が聞こえた。
「はーい!ソーンさーーん!」
満遍の笑みで振り返った、そんな時。
ブォンッ!
マノンの拳がソーンへと迫る。
「だから!」
「ソーンさんが僕に話してる所でしょーが!」
シュンッ!
ドゴォ!
足の関節部分に蹴りを入れ、状態が反れる。
!?
空高く拳が上がった。
(なに!?)
刹那、ソーンは作戦を変えた。
ーーー
魔力に対しては最強の盾になる。
そう思い、プルグが爆発する光に包まれた、その時。
咄嗟の判断でマノンの魔力無効の特性を逆手に取り、光にぶつけ爆発を回避しようとした。
マルコは爆発の事を知らない。
そしてこれ以上仲間への被害をなくすため。
全員に見られていようがそんな事を考えてる暇はなく、身体が動いていた。
自分でなんとかしよう…
と。
だが
今、この瞬間
マルコはプルグの光から離れマノンへ攻撃食らわせている。
偶然か、本能か、自然と魔力を使わずに攻撃していた。
つまり
ソーン自身が手を出す必要がない事を示していた。
ーーー
「せい!!」
ドジュンッ!!
マルコの攻撃は続く。
ドゴォッ!!
踵を落とされれ頭から地面に叩きつけられた。
(とんでもなく圧倒的な力だ…)
(予想外の事しか起きないな!)
速度を緩めるソーン。
「マルコさん!そのままそいつをあの光に投げてください!!」
「?」
「こいつを…ですか?」
「はい!!」
その最中も光は膨張を続ける。
マルコはハッとする。
(そのために地面に氷を…!)
(僕がこの動きをする事を分かっていて…)
(ソーンさんは僕より早くここに到着していたのに、討伐の成果をあとから来た僕に…)
(ハウッ!!)
(マクラウル様とは真逆の優しさ…)
(く…)
(僕はこういう人たちに支えられているんだ)
マルコの目に今まで以上の光が灯る。
「故に!!!」
マノンの頭をガッチリ掴む。
「無敵!!!」
リエルの放った氷原美華の氷の上を滑らせ、見事膨張する光に当てた。
と、同時に光が臨界点に達する。
(ヤバい!!)
プルグの光が収束し、周囲の音が吸い込まれる。
ス…………ッ!!
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!
ドガァァァァァァァァァァァァンッ!!!
影が消えた。
次の瞬間、世界が真っ白に塗り潰され、空と地の境界すらも消失した。
熱に焼かれた土の匂いと、立ち込める白い蒸気。
リエルが精製した見事な《氷原美華》の舞台は、水になる暇もなく一瞬で蒸発し、跡形もなく消え去っていた。




