第34話『こうなったら』
ドゴォォォン…
パラパラ
砕けた氷が光を反射しながら散っていった。
「はぁはぁ…」
「さぁ…あとは後はあなただけよ…」
強力な魔法を放ったリエルは消耗していた。
「えー?私だけぇ??」
「“そんな攻撃”で私のマノンが壊れるとでも??」
土煙と氷の粒が完全に晴れる。
!?
ピピ
リンビアのメガネが反応する。
「…今のを食らってありえないッス」
「そんな…ウソよ…」
「無傷…だと!?」
そこには、仁王立ちのままのマノンが何事も無かったかの様に居た。
「アハハハ!!流石!プルグちゃんの“改造魔物”だよ!」
「今度はこっちの番!」
「行って!マノン!」
無言の巨体は目を光らせ、こちらに向かってくる。
ドシン
ドンドンドン!!
「どうして…私の魔法が…」
自分の最大級の綺麗な魔法で、傷一つ付けられない現実に戦意を失うリエル
「リンビア!何か分かったか!?」
「恐らく何か特殊な構造になってるようで、さっきのルドルさんを包んでいた光に似ている感じがします!」
ピピピ
「歪んだ魔力がヤツを覆ってるッス!」
「ヤツには“魔法”が効かない…かもしれないッス…」
!?
「何だそれ!そんな事あるのか!?」
「魔法が…効かない…?」
「ふ~ん、君には分かるんだ?」
リンビアに感心する。
「でも“かも”じゃなくて効かないんだけどねー!」
「魔力の無力化!それがこの子の特性だよ!」
「だからさぁ!さっきの力をもう一度見せてぇ!!」
迫りくるマノン。
(このままじゃ全員やられる!)
(ヤツを引き離す!)
「リエル!!」
「…ソーン」
(くそっ!時間がない…!)
「リエル!しっかりしろ!」
「その“綺麗な”魔法で皆を護れるのは“リエル”だけだ!」
「出来るだけ分厚い氷の壁を作ってくれ!!」
「頼む!!」
(私の綺麗な魔法…)
ーーーソーンが頼んでる
(皆を護れるのは私だけ?)
ーーー敵が迫る
(でも敵に傷一つ付けられない…)
「リエルさん!」
ーーーリンビアが叫ぶ
「ハウンド!エネルギー最大で障壁を展開するッス!」
「ワウゥ…」
「どうしたッスか!?」
さっきのリンビアへの爆発の際に、ハウンドは自らの意思で障壁を張り守っていた。
「ダメッス…エネルギーがもぉ…」
(ちくしょう!)
ドガァン!
地面を思いきり殴り土煙で煙幕を張った。
(こんなんじゃ、時間稼ぎにもならない…)
(けど…!)
(視界を断つ!)
ブゥオン
同時に大きな風圧が広がった。
「あっ!」
リエルの手元からソーンのハンカチが飛びそうになる。
グッ!
それを強く握る。
そのハンカチを見つめる。
(ソーンはこんな時でも誰も見捨てない…)
(そうよ!私だってやれる事があるわよね!)
(出来るだけ分厚い壁!)
(ソーンが言うならきっと何かいい方法なんだわ!)
(アイツに魔法が効かない?)
(なら、魔法“以外”をお見舞いしたらいいだけじゃない!)
「ソーン!ごめんなさい!」
「こっちの護りは任せて!」
リエルが立ち上がり魔力を振り絞る。
(ハァハァ、でもさっきので魔力が…)
「リエルさん!これ飲むッス!」
「これは?」
「《モリモリ元気スーパー》!」
「消耗した魔力を瞬時に回復出来るドリンクッス!」
(何この緑色の液体…)
「早く!」
(ええい、もうどうにでもなれー!)
ングング
ハァー!
ドクン…
ドクン…
(凄い!魔力が漲ってくるのを感じる!)
「反撃開始ッスー!!」
「ええ!行くわよ!」
「氷龍壁!!」
パキンッ!!
パキパキ!!
一瞬にして分厚く大きな氷の壁が精製された。
サァーーーッ
辺りの温度が下がっていくのを感じた。
(リエル!!いいぞ!)
(これで準備完了だ!)
(今なら誰にも見られずに戦える!)
(極力結果は自然に!だ!)
ブォーン!
「うお!」
煙幕を切り裂いてマノンの攻撃がソーンを狙う。
ズガァァーンッ
(あの巨体の割に俊敏な動きだな)
「アハ!それ避けるの凄い!」
プルグは既に戦うつもりはなく、自身の改造魔物の実験を楽しんでいるようだった。
(一先ずあの子はほおっておいても問題なさそうだ)
(なら!)
シュンッ!
マノンの下に潜り込み剣を握る。
「ここだ!」
カチンッ!
(いや!ダメだ!!)
硬直するソーン。
(ここで切ってしまっては、何も自然じゃないじゃないか!)
(偶然剣が当たりました!何て誰に通用するんだよ!)
(素手でアイツの体力を消耗させて、撤退をさせるか…)
(いや、ここで仕留めておかなきゃ、今後街が危機に陥ってしまう可能性もある)
(それに体力って概念あるのか?)
(どうするどうする!!)
ブォンッ!
悩んでる隙にマノンが再度攻撃を仕掛けてきた。
(くそっ!まとまらん!)
(一回距離を取るか…)
低空で迫る拳に飛び乗り、その勢いのまま岩壁へと飛んだ。
ドゴォンッ!
(どうしたらいい…)
(自然かつ、誰が戦ってもそうなったよな…そう思わせられる方法)
「ソーン!!」
「ソーンさん!」
「…ぐ」
「やっぱり…ソーン一人に任せてられねぇな…」
ボロボロのルドルがゆらりゆらりと立ち上がった。
「ルドルさんは動いちゃダメッス!!」
「ちょっと!あんたは休んでなさいよ!」
「…そうも言ってられねぇ…だろ…」
ちょうど皆が見える位置に飛んだソーンは、皆を確認した。
!?
(ルドル!)
(くそっ…俺がもたもたしているから、ボロボロのルドルに無理をさせてしまっている…)
(すまん…)
(もうこうなったら、今回だけはやるしかない…か…)
そんな時一つのアイテムが目にはいる。
ーーーこ、これは…
ーーーくくく…
ーーーはーっはっはー!
(これだ…これなら全てうまくいくぞ!!)
(皆も守れて俺の未来も守れる!!)
そんな時。
「キャーーー!!」
「うぎゃーー!!」
マノンがリエルの氷龍壁へ攻撃していた。
魔力の無力化は全身に及んでおり、当然指、掌、触れた全ての魔力を消し去って行った。
「ダメ…精製が…間に合わない…」
壊されても即座に氷龍壁を精製する速度は、リエルの限界を超えていた。
「助かったぞ!リエル!」
岩肌を登り上から声をかけた。
「ソーン!無事なのね!」
「もう最高だ!」
「まさか!いい作戦が思いついたんッスか!」
「あぁ!そのまさかだ!」
「全てを守れる選択がここに!」
手にした銃を空に向ける。
「何々!何してくれるの!?」
「マノン!あっちを狙って!」
ソーンの行動に興味津々のプルグは、ヨダレを溢しそうになっていた。
「行け!ピロピロ銃!!」
「「ピロピロ銃??」」
知らない二人は不思議がる。
「あの…ダサい銃か…」
バンッ!!
ピロピロピロピロ〜
発射された弾丸は、螺旋状に火花を噴射しながら空高く、音高く、飛んだ。
(これでギルドの傭兵部隊が来てくれる!)
(そして俺達は無事避難する!)
(今回の評価は…)
(決まったようなもんだなぁ!)
パンッ
小さな音と赤青黄の色の煙が出た。
最高の笑顔のソーン。
ーーーシーン
「…」
「…それだけッスか?」
「やっぱり…ダサい…」
「ねぇ、君それは何だったの…?」
ここにいるソーン以外は、その光景にポカンとした表情を隠せなかった。
…バンッ!!
ーー音を置き去りにして
…シュュドドドドンッ!!
「救難信号はここですね!」
…ドゴォオォオンッ!!
ーーその奇跡の音速は“来ていた”
「二番隊隊長マルコ=ブルーバード、誰よりも疾く馳せ参じました!」




