第33話『構ってられるか!』
「次は君」
スタッ
地上へと降りたプルグがリエルを指さす。
「ルドル…!!」
「何なの!?あの光は!?」
プルグの攻撃により、ルドルは光の羽根に包まれ宙に浮いたまま停止していた。
「アレはもう終わり」
「掴んで離さないのは私の方だから」
その光景を見ること無く答える。
(終わり…?)
(何を言ってるんだ?)
(ルドルがこんな所で終わるはずないよなぁ!?)
(俺を追放するのはルドルなんだぞ!!)
踏み込む瞬間。
「ソーンさん!」
「あの光、分析完了ッス!」
最初の爆発により傷付いていたリンビアが、密かにプルグを分析していた。
「リンビアッ!」
「あれは超高濃度の魔力の塊ッス」
「そんなの私が撃ち落として」
「ダメッス!!」
リンビアが声を大きくした。
「ここからじゃ中がどうなってるかまでは分からないッスけど、魔力で触れたら即アウトの光ッス…あれは」
「…え…じゃあ私の魔法じゃ」
(魔力攻撃は即アウト…)
(くそ、どうする…)
「気が付いても無駄だよ」
「触れれば身体が死ぬ、触れなくても感情は死ぬ」
「打つ手はない」
「どちらにしても天を統べる魔王様の贄となれる…」
「素晴らしい事」
「私達が《天魔教》の教え」
プルグが心から天魔教を仰ぎ心から崇拝していると言うのは、表情からでも容易に感じれた。
(触れなくても感情が死ぬ…??)
(贄?天魔教?)
(さっきから何を言ってるんだ…)
「ソーン!どうしよう…!!」
「私の魔法じゃ…ルドルは…!」
「ねぇ!リンビア!こういう時に何かないの!?」
「あなたスーパー科学者なんでしょ!?」
気が動転して慌てるリエル。
「リエル」
「何よ!ソーンも何か言ってよ!」
泣きそうな顔でソーンに当たってしまうリエル。
「落ち着け、大丈夫」
「俺がルドルは必ず助ける」
ソーンの落ち着きようは自然と安心を呼び、心が少し穏やかになっていった。
「ソーン…」
グズッ
安堵から涙が一粒流れた。
「ルドルは俺に任せて」
スッ
ソーンは持っていたハンカチを手渡す。
ーーー
これも父マクラウルの教えである。
「男たる者ハンカチは常に清潔なものを持っておけ!」
「ションベンの後に手を拭くため?」
「違う!女の涙を拭う為だぁ!!」
ソーンはしっかり者であった。
ーーー
「リンビア」
「はいッス」
「あの光は魔力干渉によって爆発するんだよな?」
「そうです」
「なら、魔力のない物理攻撃なら勝算はあるな?」
「そうですけど…」
「それだけ分かれば問題ない!!」
ダンッ!!
地面を割る勢いで走り出したソーン。
「でもソーンさん!そんな攻撃で壊せるほどあの光は軟じゃないッス!!」
「それに…!!」
リンビアの声はもう届かなかった。
ブォンッ
二人に風圧が及ぶ。
「キャーーーッ!あっ、ソーンのハンカチが!」
「なんスかこの風圧…」
(ルドル…)
(今助ける!!)
シュンッシュンッ
プルグまで一直線にドンドン加速するソーン。
ボガァンッ!!
ドゴオォンッ!!
光の虫に捕まることなく迫り続ける。
「速い」
「悪いな、そいつは俺の大切な未来を切り開く男何でな」
プルグの目の前で再び地面を思いっきり蹴る。
ダゴォッ!
フッ…
視界から消えたソーン。
「消えた」
「でも狙いは分かる」
「君知らないの?」
「武器には作製者の魔力が込められてる事を」
ソーンは黄金の剣を握り力いっぱいに振り抜いた。
「ソーンさん!ダメッス!!武器には…!!」
ザンッ!!
ソーンの剣は折れることなく、ルドルを包む光を斬り裂いた。
「えっ!?き、切れた…?」
驚くリンビアの隣で、泣いて腫れた目を見せたくないと何も見ていないリエル。
「!?」
「何故だ?」
光の中からは前進が赤く染まり、腕だけでなく顔にまでも灼熱爆裂猪拳の模様が浮かんでいた。
「ルドル!!」
「…ソーン。俺は負けなかった…ぞ…」
シューッ…
模様と赤みが引くのと共に気を失った。
光の中で何が起きていたのかは誰にも分からなかった。
バリンッ
ルドルを覆っていた光の魔力は消え、浮力がなくなりたちまち落ちる。
ガシッ
「あぁ!お前はいつでも最上だ!!」
ルドルを担いで無事地面に着地。
(やっぱりこれは黄金のエクスカリバーだ…!)
ジャキッ
切っ先をプルグに向けた。
「この黄金のエクスカリバーは300ジューロンだ!」
「??」
「何それ?」
ハッハッハー!
思わず笑いが込み上げた。
「ルドルのオススメは本当にオススメだなぁ!」
「またノイズが変わった…」
「コイツにはそもそも魔力なんて込められてないんだ!」
「安い武器は量産武器!職人なんて一人も一ミリも携わっちゃ居ないんだぜ!」
「君知らなかったか?」
鼻高々と説明する。
「そこまで読んでたんッスか…」
「え?何が起きたの?」
自らの魔法の氷で目元を冷やすリエル。
ふふふ。
「やっぱり君は面白い」
(ん?なんか雰囲気が変わった…?)
「でもプルグちゃん疲れた…」
(自分をちゃん付け!?)
(どこかの科学者と同じだ…)
「ソーンさん!」
その声に我に返る。
「おう!」
気を失ったルドルをリンビア達の元に届ける。
「ルドルさん、大丈夫ッスか?」
「これで少しは良くなるはずッス!」
リンビアの持つ回復薬を流し入れた。
「それに今日は元気もなくて、やる気もなかったし」
グヒッ!
プルグの口角が不敵に上がる。
「アァァアッ!!」
「でもでも、もっと試してみたいいぃ!!」
ハァーハァー
ドンドン息が荒くなっていく。
「…落ち着いて…プルグちゃん」
「ノイズに飲まれたらダメ」
自分で自分に言い聞かせる。
「あれヤバくないか…?」
「これがあの時に感じた歪んだ魔力ッス…」
(こんな魔力にルドルはよく耐えたな…)
プルグの魔力が知的欲求に伴い増幅し、歪みを表した。
「もしかして、君ぃあの時の人ー??」
「まぁもうどうでもいいんだけどねぇー!」
「君にはこれを是非味わって欲しい!」
「もっともっと君の力を私に見せてぇ!!」
禍々しい魔力が魔法陣を形成していた。
「来るぞ!!」
「分析は任せて下さいッス!!」
「うん!私も堂々復活よ!」
(ちょっとの間、何が起きてたか分かんないけど、ルドルが助かったのは確かね!)
…ボワァン
「さぁ、出ておいでぇ!《適正化個体マノン》!」
魔法陣から現れたのは、
この世の者とは思えない物体だった。
人の形状は保ってあるものの、大きな図体に岩の様に硬質化した肌。
鼻や口は存在せず、耳と四つの目、これは人の顔ではない。
ドシン
ドシン
召喚されたマノンには感情などなく、プルグの思いのまま動く魔物だった。
「今度は私に任せて!」
「最初から全力で行くわ!」
全神経を集中させるリエル。
「《氷龍ーー門ーー》」
ドゴォーン!
マノンの後方に大きな氷の門が召喚された。
周りの空気すら凍らせる程の質量と魔力量だった。
「《氷龍ーー絶ーー》」
門にあしらわれた龍が、対象者を葬るように形状を変え、牙、爪を剥き出しにする。
同時に門に無数の尖ったつららが生成される。
「リエルさんもこの魔力何なんスか…」
「凄い魔法だ!リエル!」
ウフフ
「さぁ!これで終わりよ!」
「《氷龍ーー極ーー》」
ゴゴゴ!!
大きな音をたて、膨大な魔力の門は無慈悲に閉じマノンを粉砕した。




