第31話『いったい何なんだ!?』
ギィー
木製の扉を開け、ギルドから出てきた一行。
「しっかしあれだな、ここからその魔力の気配がする所って結構遠いよなー?」
「そうなの?なら尚更急がないと行けないわね」
「まぁほら、休み休み行けばいいんじゃないか?」
「まぁ急いで向かうか!」
「そうね!」
行きたくないソーンの言葉は届かない。
「ハウンドお待たせしたッス!」
「ワウ!」
「いい子で待ってたッスかー?」
ワシャワシャ
撫で倒す。
「ハウンド?」
ルドルが振り向いた。
そこには撫で倒されている犬が一匹居た。
「可愛いー!!」
リエルが飛びついてきた。
「どうしたのこのワンちゃん?」
「私が創ったッス!」
「あー、そうなの!可愛い〜!」
「「「…創った!?」」」
三人の声が揃った。
「ハウンド・アンド・シークは魔法と科学が混ざり合ったマギテック(魔導技術)ッス!」
「…マギテック…だと!!」
「全く普通の犬に見えた…」
「可愛い過ぎるーー!」
目を輝かせるルドル。
凝視するソーン。
メロメロのリエル。
「リンビア…!」
神妙な面持ちのルドル。
「はい、なんッスか?」
「一生のお願いだ…」
「俺もマギテックが欲しい!!!」
(ルドルはそう言うと思ったよ)
「今は無理ッスね〜」
「何でだよ!独り占めするなよー!」
「マギテックはお金も時間もかかるんッスよー、それに大事な駆動部分はこれしか持ってないッス!」
「チクショーー!何処で手に入るんだ!」
「その駆動部分!」
「これは…」
ゴクリ
「こ、これは…?」
「分かんないッス!」
「なんだよ!だって持ってるじゃんか!」
「いや、これは数年前に知らない誰かから送られてきたんッスよ!」
「何処の誰だかも分からないッス!」
「俺のマギテックがぁ…」
崩れ落ちるルドル。
ワシャワシャ
「しかしかなり精巧な作りだな」
ワシャワシャ
「ホントね!」
スゥーーー
「匂いも本物そっくり」
(リエルがこんなに犬好きだとは…)
(あら、ソーンも犬が好きなのね)
「ハッハッ」
ハウンドはお腹を丸出しにして尻尾を思いっきり振っていた。
「でも何で突然この子を連れてきたの?」
「歩きたくないからッス!」
「この子に乗ってきたの!?」
「そうッスよ!」
「ハウンドは力持ちッスもんねー」
ワシャワシャ
「ワウワウ」
「と、言う事で皆さんもハウンドに乗って欲しいッス!」
「「…??」」
ーーー
ーー
ガジュガシュッ!ガジュガジュッ!!
「なんだこの速度ーー!!」
「キャーーー!」
「うおーー!!最上の速度ーー!」
「うべ、口に虫入ったーー!」
時速150kmで走れるハウンドの本領が発揮されている。
「皆も喜んでそうで良かったッスね!ハウンド!」
「バウバウ!」
四人分の魔力充填とエネルギーバーにより、持続して時速150km出せていた。
「このまま全速前進ッス!!」
「休み休み行こうって!言ったのにーーー!!」
ビュオォーーーンン!!
ハウンドは風を切り、他には目もくれず走り続けた。
ーーー
ーー
「良くやったッス〜♪」
「流石ハウンド!」
「ワウワウ!」
ワシャワシャ
「ぜー、ぜー」
(つ、疲れた…)
「もう…最悪…」
(前髪も崩れるし、横の男はうるさいし!)
「くぅー!!最上!!」
(もう一回乗りたいな!!)
四者四様の面持ちのまま、
リンビアが感じ取った“変態の歪んだ魔力”の場所へと辿り着いた。
「変態の残り香はこの辺ッスね」
ソーンとルドルが鬼猪と戦闘を繰り広げた森からはだいぶ離れており、リンビアのスキャニング・ヴィクトリーがいかに広範囲に及ぶ技なのかが伺えた。
「こんな岩山の上の魔力なんて、よく見つけられたな!」
「スーパー科学者のリンビアちゃんなら、お茶の子さいさいッス!」
「ハウンド!サーチモード!」
「ワウワウ!」
ピピー
【サーチモード】
ハウンドから機械音声が流れた。
「うわ!こいつ喋れるのか!?」
魔力の気配を鋭い嗅覚(魔力感知システム)で探す。
「とりあえず、微かな反応はハウンドに任せて私たちは探索ッス!」
「探索!ワクワクするな!」
「何を探したらいいの?」
「何でもいいッス!変態はきっとここで変なことをしてたはずッス!」
「必ず見つけてやるわ!」
各々気合を入れる。
(何でもいいと言われると難しいなぁ〜)
分かれて周辺を捜索する。
スンスン
匂いをかぎながら周囲を歩くハウンド。
(ここ歩きにくいわね)
(ん?この岩なんかカッコよくないか?)
(今日は体調があんまり良くないから、スキャニング・ヴィクトリーは使いたくないッス〜)
(このまま何も見つからなかったら素直に帰れるかな?)
そんな中小さな声が聞こえてきた。
「…しい」
(こんな所に誰かいるのか…?)
この声が聞こえたのはソーン一人だった。
残り香の場所とは反対側。
聞こえた方へと足を運ぶソーン。
「…出来っこないやい」
徐々に声がはっきりと聞こえてきた。
「この広い世界であの人達を見つけて、“アレ”はどうだったか?何て…」
近づいて行くとそこには岩場の隅で縮こまる、金髪の少女が居た。
「はぁ…」
(こんな所に女の子…?)
(大丈夫か?)
困ってる人を見て見ぬふりは出来ないソーン。
驚かせないように近づいていった。
「早く全て“適正化”されればいいのに〜」
「そしたらこんなに悩むことも無くなるのになぁ」
「おーい」
少し離れた位置から声をかけた。
「??」
体勢を変えずに顔をソーンに向けた。
「どうした、こんな所で?」
「大丈夫か?」
近づきながら確認をした。
「ただの人探し」
「大丈夫じゃない」
表情を変えずに言い放った。
「そ、そうか」
ーーーザッ
(うお!何か迫力あるな…)
「君は誰?」
「《プルグ》ちゃんに何か用?」
(状況と声色、表情が一致しない子だなぁ…)
「俺はソーン」
「用と言うか、何か困ってるのかと思って」
(あんまり関わらないほうが、いい感じかもしれない…)
ーーーザザッ
「それ」
「?…それ?」
「今“ノイズ“がひどくなった」
「ノイズ?」
「おーい!ソーン!なんかあったかー?」
そんな話をしているとルドルの声がした。
ーーーシーン
「いや、特に関係はないんだけどここに」
ふと、少女の方に目をやると既にその姿はなかった。
(…え?あれ?)
(今までここに…?)
ズザァッ
ルドルが岩肌を降りてくる。
「どうした?なんかなくしものか?」
辺りを不思議そうに見回すソーン。
「今ここに女の子が居たんだ」
「女の子?なんだそりゃ」
「こんな所に一人で?」
「…多分」
「まさか…」
神妙な顔のルドル。
「ん??」
「岩場に現れる妖精か!?」
「んなわけ…」
ヒラヒラ
ヒラヒラ
「お?」
ルドルの周りを一匹の虫のようなモノが飛び回る。
「これ!見ろよソーン!」
「きっと妖精の元へ連れてってく」
ドガァァァン!!!
指先がそれに触れた瞬間大きな爆発が起きた。
(今のはなんだ!!?)
「大丈夫か!!ルドル!!」
爆発の煙から人の姿が見えてきた。




