第29話『変えられない現実』
ガシュンガシュン
ハウンド・アンド・シークがゆっくりと歩いていた。
「うへーー」
やる気満タンで出てきたリンビアだったが、腹痛によるダメージで弱っていた。
「そー、その調子ッス〜…」
「今揺れたらお腹に響くッス〜…」
主人の言う事をしっかり守り、少しの揺れもリンビアに与えないようにゆっくりと歩く。
「あの調合ドリンクが悪かったんスか…」
「おかしい…変なものは入れてないッスよぉ!!」
ギュルルッ
「ぐわーーー、また…腹痛が…」
「ハウンド…ストップッス…」
「…クゥーン」
「よいしょ…っと」
ハウンドの上から降りたその時。
ゴルゴルゴルーッ
今までに聞いたことがない音が痛みとともに襲ってきた。
「も、漏れるッスーー!!!」
「こうなったら奥義ッス!!」
パチンッ!
指を鳴らす。
「ハウンド!!フォームチェンジ!!」
「スーパートイレット!!」
「ワォーーン!」
ウィーン
ガシンガシン
グゴゴゴ
プシュー
「こんな事もあろうかと、私の全ての力を注いでこのモードを作っておいたなんて!!」
「流石プリティリンビアちゃん!!」
ギョルルルッ
「うわ、ヤバい」
「急ぐッス…」
ガチャッ
バタンッ
ハウンドのスーパートイレットに入っていった。
数分後
ジュゴー
ワオーン
変わった流れる音がした。
「ふぅ〜…全部出してスッキリしたッス〜…」
中からゲッソリしたリンビアが出てきた。
「ハウンド…戻っていいッスよ…」
ジュイーン
ガチャガチャ
ドチューン
「ワウ!」
「…?」
「気張ってちょっと疲れたッス…」
ハウンドの上に倒れる様に乗った。
「さぁここからは休憩なしで行くッスよ〜…」
「ゆっくり着実に…!」
「ワ、ワウゥ…!」
人知れず厳しい戦いを終え、
再び歩みを進めたリンビア達であった。
ーーー
ーー
ー
ガシュンガシュン
「クゥーン」
ハウンドの声に目を開ける。
「もう着いたッスか…?」
「ワウワウ」
「流石ハウンド。ゆっくり眠れたッス」
「ありがと」
ワシャワシャ
多少回復したリンビアは思いっきり撫でて褒める。
尻尾を勢いよく振り喜ぶハウンド・アンド・シーク。
「んじゃあ、ちょっくら行ってくるッス」
「ハウンドはここで待っててッス〜」
「ワウ!」
ギルドの前にハウンドを停め中に入ろうとした時、中から大きな声が聞こえた。
「「「えぇ!?」」」
…ギュル
「ちょっと今は大声やめて欲しいッス…」
お腹を擦りながらギルドへ入った。
そこでは見たことない青髪の女性とソーン、ルドルが話し合ってる姿があった。
状況把握の為、腹痛で鈍る思考を巡らした。
「ソーンさん、ルドルさんお待たせしたッス」
「お、リンビア来たか…んお!!」
いち早く気付いたルドルが声を上げた。
「!?」
「おい、大丈夫か!?」
ゲッソリした姿を見てソーンが心配する。
「ちょっと壮絶な戦いをして来まして…」
「心配はご無用ッス」
(ちょっと壮絶ってなんだ…)
ーーーギルド全体の視線の集まり方。
ソーンとルドル、そして受付嬢でこの人を挟む状況。
きっと逃げられないようにしてるんだろう。
つまり…!!
リンビアは一つの結論に至った。
「この人が例の変態科学者ッスか?」
「変態…?あ、いやこの人は」
「ちょっと!あなた!誰ですか!突然人の事を変態呼ばわりなんて!」
ソーンの説明を待たずして怒りの声が発せられた。
…ギョルル
「ぐ…お腹に響くッス…」
「私は今このお二人のパーティーに加入した、高貴な魔法使いのリエルです」
(あ、もう加入したんだ…)
「それの何処が変態なんですか!」
「むしろあなたの方が怪しいですよ!」
「ゲッソリした姿に汚れた白衣、いきなり人を変態呼ばわりなんて!」
「まぁまぁリエル落ち着けって」
「あんたは黙ってて!」
「…酷い」
二人を言葉で殴る。
(ルドルに強く行くな〜)
「リンビア」
「はいッス」
「この人はリエル=ミラーさん。ここの冒険者で例の事とは関係ないよ」
ソーンが静かにリエルを紹介した。
「そして、ミラーさん」
「はい。ってもう敬語はやめませんか?同じパーティーなんだし?リエルでいいわよ!」
「…あ、う、うん」
(あえて言わなかったのに、もうそれは変えられない現実なんだな…)
「こっちのゲッソリしてるのは、リンビア=オリル」
「セブンスヘブンのパーティーのもう一人」
「どうもッス…」
「知らずとは言え、変態呼ばわりなんてごめんッス」
素直に謝れるリンビア。
「…わ、私の方こそ…突然ごめん…なさい」
尻すぼみの声で謝るリエル。
「ルドルもいじけてないでさ!」
隅っこで縮んでいたルドルに声をかける。
「リエル」
「はい?」
小さな声で耳打ちする。
「頭に血が上ってしまってごめんなさい。私の魔法の‘龍“見る?」
その“龍”と言う一言で飛び上がる。
「見せてくれるのか!?あのカッコいい龍!」
「カッコ…」
ソーンが小さくリエルに謝る素振りをする。
「…まぁ今回はそれでいいわよ」
『氷龍柱』
パキパキと音を立てて、見事な龍が現れた。
「うわー!何回見ても最上にカッコいいな!これ!」
「な!ソーン!」
「それにセブンスヘブンに加入!?最上じゃねえーか!」
ソーンはいとも容易くルドルの機嫌を直すことに成功した。
「あ、クリーガーさん!」
「うん?」
「こちらの方はどなたですか?」
ウィンクがリンビアの事が気になり問いかけた。
「そう言えばここに来るのは初めてだったか」
「冒険者って訳じゃないんだけど、パーティーの一人リンビアだ。よろしく頼む」
「どうもッス…スーパー科学者のリンビア=オリルです」
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
「私はウィンク=スターリングと申します!受付嬢をやってます!」
お腹をおさえ自己紹介をするリンビア。
「体調大丈夫ですか?ちょっと奥の部屋で休んでください!」
「そ、そうさせて欲しいッス…」
「大丈夫かよー?すまん、そうさせてもらってもいいか?」
「もちろんです!どうぞ!こちらへ!」
リンビアはウィンクに連れられて奥の部屋へ。
「クリーガーさん!」
「ん?」
「皆さんの注目が集まっててちょっと居づらいでしょうから、良かったら皆さんで来てください!」
周りの視線は依然としてソーン一向に向けられていた。
「確かに…」
「おーい!ルドル!リエル!」
「なんだー?」
「はーい!」
「ちょっとこっちに来てくれ!」
状況を説明した。
「確かにリンビアとこの周りの状況じゃ、ゆっくり話もできなさそうだしな!」
「私はソーンに従うわ」
三人で奥の部屋に入って行った。
少ししてウィンクが外へ出てきて一言。
「皆さん!お騒がせいたしました!」
「では本日も良い冒険者ライフを!」
キラリンッ☆
星が飛ぶ。




