第28話『なんでそうなるの!? 』
リンビアを呼ぶ方法は決まらないまま、
ギルドへと到着した二人。
「何だか、ギルドの周り普段より人が多くないか?」
「ホントだな。何かあったのか」
近づき確かめる。
ーーあのべっぴんさん誰だろうな?
ーーここら辺じゃ見たこともない
ーーどこかのお嬢様かな
ーーお前声掛けてみろよ!
周りでウキウキする男達が次々に誰かの事を話す。
(べっぴんさん?誰か来てるのか?)
「おい、ソーン!見てみろよ!」
中を覗くとそこには青髪のスラッとした女性が、ウィンクと話し込んでいた。
「あ…」
「あのカッチョイイ龍の人じゃねぇか!なぁ!」
「ルドルちょっと俺…リンビア呼びに一旦戻るわ!」
「いやいや、何言ってんだよ!」
「どうせリンビアの事だ、何か発信機みたいなもので俺たちの居場所分かってるだろきっと!」
(こんな時だけ冷静で説得力のある事言うなよ…)
「ルドルこれ、この依頼面白そうじゃない?」
苦し紛れに掲示板を指さす。
「まぁまぁ、新しい武器が使いたいのはよーーーく分かる!」
「でも、俺達が来た理由はそれぞゃないだろ?」
(今のルドルなんか変だな)
「早くあのカッコいい龍、もう一回見せてもらおうぜ!」
(あ、いつも通りだった…)
「どうもー!」
ソーンの腕を引っ張りながら、意気揚々とギルドへ入っていった。
「あ!マフティスさん!クリーガーさん!」
「こんにちわ!」
ブンブンと手を大きく振り優しい声が響いた。
「ど、ども」
伏し目がちに挨拶をするソーン。
「リエルさん!よかったですね!」
「やっとセブンスヘブンのお二人と会えましたね!」
「ちょっと!ウィンク!」
恥ずかしそうにウィンクを制する。
「ん?やっと?」
(…嫌な予感がする)
「はい!この前会ったときからお二人の事が気になってたみたいです!」
ウィンクは少しも悪気がない気持ちで話す。
「やめて!別に二人のことなんか気になってない…わよ…」
「私が気になったのはこの人!」
ソーンを力強く指さす。
「ソーン=クリーガー。あなたに聞きたいことがあります!」
(やっぱりそうなりますよねーーー)
(隊長の名前なんて出すんじゃなかったーー!)
やっと振り向いたリエル。
その目にはソーンが背負っている黄金煌めく剣がこれでもかと映った。
ソーンの装備の見た目に反してそれだけが派手に光っていた。
「…あなた、そんな武器前は持ってなかったわよね」
(結局この人もお金に物を言わせるタイプなのね)
(きっと隊長格のお二人の名前を出したのも、きっとカッコつけただけだわ)
(なによ、私を気にさせといてとんだ茶番だわ)
「あ、ああこれは…」
(武器に関心が行った…?)
「これは今さっき買ってきたんです!」
ルドルが割って入る。
「どうです?カッコいいですよね!?」
「ちなみにこのグローブも一緒に買ったんですよー」
目の前で拳を握る。
「は、はぁ…」
(なにこの人凄い喋る…)
新しい装備を見せびらかしたくてしょうがないルドルは、ドンドン続ける。
「これいくらだと思います?」
少しニヤけた顔でリエルに聞く。
「えーっと…」
(どうせこっちは安物でしょ)
そのグローブを軽く流し見した時。
「!?」
ある刻印されている文字に目が止まった。
《ラインド=リッチ》
「これは私のパパが好きな革職人さんの名前…」
「分かりますか!?これの良さが!」
「高かったんですよー!」
良さが分かる人の前で分かりやすく興奮する。
「…これをどこで?」
「ソーンの幼馴染のお店ですよ!」
(ソーン=クリーガーの幼馴染…)
(ラインド=リッチが売ってるお店が幼馴染!?)
(この人…ただのボンボンじゃない…)
(爆裂ボンボンだわ!)
(なら見るからに金ピカな剣…高いに決まってる…)
「こっちの黄金の剣は俺のオススメの中から選んだんです!」
エッヘンと言わんばかりに胸を張る。
「まぁ、このグローブにお金使わせちまったから安物になっちまったけど…」
(安物って言ったって、この人達の中で!でしょ!)
(ホントそう言う自分達で稼いだ訳でもないお金で、そういう事を言う人種には辟易するわ)
「まぁ俺としてはこの剣は300ジューロンなんて値段じゃなくて、もっと高くてもいいと思うけどな〜」
「ハハ、俺にはこのくらいが丁度いいんだよ」
「ルドルの“オススメ”でもあったしな」
笑い合う二人。
(…!!!?)
(サ、ササ、サ300ジューロン!!?)
(どういう事!?)
(お仲間はこんなに高価な装備品を買ったのに!)
(自分は300ジューロンの剣で丁度いい!?)
(しかもオススメされたからってそれでいいの!?)
(なんなのこのソーン=クリーガーと言う男…)
(無欲と言うか…もはや可哀想よ…)
(ここまで来るともう少し良い剣買って上げたくなってしまう…)
「…ねぇ、ソーン=クリーガーさん」
「はい?」
「よ、よよ、良かったら私がもう少し良い武器ご用意出来ますよ?」
「いえ、大丈夫です」
(え!?なんで!?)
「な、なんで!?」
「いや、知らない人からそんな事をしてもらう訳にはいきません」
キッパリと断るソーン。
(これ以上関わりは持たないほうが目立たなくていい)
(タダでさえこの人は美人だ何だで注目を浴びてるんだ…)
(それにこれ買ったばかりだし…ユルザに何言われるか…)
「…」
(こんな人見たことも聞いたこともない…)
(お金を振りまく人、権力を振りまく人、女遊びにナルシスト…)
(王国のギルドで私に絡んできたのはそんなバカばっかりだったのに!)
(街のギルドだから!?いや、他の人の目は王国のギルドのそれに似てる)
(このソーン=クリーガーって人だからなのかしら…)
(何だかよくわからなくなってきた…)
「私は!」
深く考えるより前に声が出ていた。
「??」
(急に声を大きくしてどうしたんだ?)
「私は…リエル=ミラー!です」
「王国のギルドに嫌気が差してここ、街のギルドに再登録してもらいました」
「一度だけお見せしたかと思いますが、綺麗な魔法使いです」
「こっちに来たばかりで知り合いもあまりいません。もちろんパーティーも組んでないです」
「…は、はい」
「急にどうしたんだ?自己紹介か?」
ルドルも不思議がる。
ふぅー
リエルは一息ついた。
「ソーン=クリーガーさん」
「はい!」
「あなたの事も教えてください」
「え、俺の事…?」
「お願いします!」
いろんな感情が混ざり合い泣きそうな顔になりながら、頭を下げた。
「リエルさん…」
この状況に普段から明るいウィンクも同様する。
周りの冒険者達の目がソーンへと集中した。
「あ、や、やめてください!教えますから!」
パッと顔が明るくなりソーンを見つめるリエル。
「…えーっと、ソーン=クリーガーです」
「最近ここで冒険者登録しました」
「今はこのルドルと、もう一人リンビアと言う科学者とセブンスヘブンと言うパーティーを組んでいます」
「以上です」
「はい!はい!俺はルドル=マフティス!」
「最上を目指す拳闘士です!」
「セブンスヘブンは天に名を轟かすパーティーになります!」
「よろしくお願いします!」
ルドルには目もくれず、真っ直ぐな瞳でソーンを見つめ続けるリエル。
「これで私はあなたは知り合いです!」
「これなら私からの新しい武器、受け取ってくれますか?」
「…えっ?」
(なんでそうなるの!?)
(いい武器ばらまきたい人なの!?)
(むしろいい武器なんていらないよ?!)
「いやぁ…これまだ買ったばかりですし…」
「じゃあ、じゃあ!これが壊れたら受け取ってください!それまで一緒にいます!」
「だから私もパーティーに入れてください!」
「え?」
「「…え?」」
「「「…えぇ!?」」」
ソーンを始めとするギルド内の冒険者、ギルド関係者までもか一斉に驚いた。
(何でなにもしてないのにパーティーが増えるんだ!)
(俺はただ追放されたいだけなのに!!)
そんな気持ちを知らないリエルは満足そうな顔をしていた。




