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第26話『これが俺のエクスカリバーだ!』

脳がフル回転する。


嘘をつきたい訳じゃない。


逃げたい訳じゃない。


ーーールドル違うんだ。


だが辞めたいのは事実。


でも自分で辞めても意味がないんだ。


“追放”この言葉が俺には必要だ…


速さが大事なんじゃない。


ーーー内容と結果。


父さんを納得させないといけない。


ーーーまだ俺は…


もう何分も経ってるような感覚に陥る。


ゴクリ


緊張感に耐えきれずに喉が鳴る。


「ル、ルドル…」


か細い声がソーンから出た。


固まるユルザ。


「…ソーン」

「すまねぇ…」

「いや、別にルドルが謝ることじゃ…!」

「全然気付かなかった」


(ルドルは優しい男だ…)


(このままじゃ…)


「ち、違うのよ!ルドル!」

「別にソーンは本気で言ったわけじゃ…!」


焦る二人。



「金を持ってくるの忘れた!!!すまん!貸してくれ!!」



「「…え?」」


「か、金!?」

「最上の装備を眺めてたらどうしても欲しくなっちゃってよ〜」


ちょっと伏し目がちになる。


(き、聞こえてない…?)


(そうみたいね…!)


同時にホッと息を吐いた。


「も、もちろんだ!」


「念のため、ドンちゃ…いや、あのお金持ってきたんだ!」

「まじか!流石ソーン準備がいいぜー!」

「でもバッグはどこだ?」


キョロキョロと大袈裟に見回してみる。


「あのお金?」


ユルザが不思議そうに聞く。


「あのお金っていうのは、俺達の拠点の為にソーンの…」


モガモガ…


咄嗟にルドル口を押さえるソーン。


「ハハ、いやこれも色々あったんだよ…」


苦笑い。


「…拠点」

「これ以上アンタ達の情報を入れたら頭がパンクするわ!」

「ホントに!今度!ゆっくり聞・か・せ・て!!」

「は、はい!!」


背筋が伸びる。


「それでどの商品が欲しいの?」


瞬時に店員モードに入るユルザ。


「これなんだけど値段が書いてなくてよ!」

「貼り忘れたか?カカカッ」

「流石!ソーンのお仲間ね!」

「かなりいいモノを選ぶわ!」

「そんなに良いモノなのか!?確かにかなりしっくり来たけど!」

「でも見た目はそんなに派手じゃないな」


ーーー

ルドルが手に取っていたグローブ。


これはユルザのお父さんと古くから友人関係の革職人が、一つ一つ丁寧に作り上げた一品だった。


王国とも取引をしている実績の持ち主。


商品もとても高価で繊細。


ユルザのお父さん曰く


「あいつの技術は見てるだけじゃわからん、手に取れる所に置いておく」


と言うことで、お客さんが手に取れるようにケースなどには入れていない。


当然、ルドルの好みそうな装飾はされていない。

ーーー


「これはスゲェぞ、ソーン」

「見た目に反して溢れる力みたいなものを感じる」

「手にはめてみろよ」


持っていたグローブを渡す。


スッ

滑らかに手が入り馴染むような感覚があった。


「うん。確かに滑らかですぐに馴染む感じがあるな」

「だろだろ!何か感じてこねぇか?」

「うーん、それは分からんが、確かにこれはいいかもしれない!」


これなら何倍もの速さで、ネオギガンティックで作業ができそうだった。


「ちなみにこれいくら?」

「このグローブはねぇ…一点物でなかなか値は張るのよねぇ…」


少し考えるユルザ。


「幼馴染価格!丁度5000ジューロンでどうかしら!!」


「「ゴ、5000ジューロン!?」」


(ドンちゃんのお金丁度か…)


「これでも値段は下げてるんだからねー!」

「普通だったらこの3倍で売ってるんだから!」

「3倍…」


(これが無かったら、薬草採取の依頼をいったい何回したらいいんだ…)


そんなことを考えていると。


「買った!!(ソーンに借りて!)」


(え!?)


「毎度ありー!!(お代はソーンから受け取るわ!)」


(えぇ!?)


そそくさとカウンターの方へ向かうユルザ。


「ホントに良いのか!?」

「むしろそんな大金持ってるのかよ!?」

「ソーンすまねぇ…でも後で稼いで絶対返すから!」

「…無いんだな」


(まぁこれでルドルがより強くなってくれれば、俺の存在も浮き彫りになりやすいし)


(一種の投資みたいなもんだな!)


(それに俺の手元にお金が返ってくれば問題ないだろう)


「分かった」

「ところでどこにそのお金持ってるんだ?」

「あ、これこれ」


一つの小さな箱のようなものを取り出した。


「何だ?この箱?」

「これはこうしてこうして」


カチャカチャ


箱をいじるソーン。


ドサッ


小さな箱から、あの日持って帰ってきた5000ジューロンが入ったバッグが出で来た。


「!!?」

「なんだコレ!!スゲー!!」

「これもリンビアの発明品で《何でも箱ぶ君》とか何と言ってたかな」

「どうなってるんだーー!!」

「これ俺も入れるのか!?」


興奮が止まらないルドル。


ーーー

《何でも箱ぶ君》


構造はよく分からないが“一つ”ならサイズに関係なく収納が出来る。


“一つ”の定義も曖昧でちゃんと閉じられていれば、入れ物に入ってるものが多くても一つと換算されるらしい。


つまり、バッグに入った札束は一つと言う事になる。


リンビア曰く、まだまだ研究中でもっと大容量になる予定だそうだ。

人が入るのはオススメしないッス!

ーーー


「ユルザ、これで頼む」


ドンッ


カウンターに全ての札束を置く。


「こうして見るとやっぱり凄いお金ね…」

「こんな大金震えるよ…」


二人してお金におののく。


「これは新たなる力!俺の伝説がこここら始まる…」

「これでバシバシ依頼をこなしてすぐに返してやるぜ!ソーン!」


子供の様に喜ぶ。


「でもソーン?アンタの武器はいいの?」

「あっ!いっけね!そーじゃんか!」

「つい最上を見つけて買ってしまった…」

「いや、それは全然いいんだ。別に高いものを買おうとは思ってなかったからさ!」


(今の手持ちは…)


ソーンの手持ちは350ジューロンほどだった。


「ソーン今いくらくらい残ってる?」


(俺の有り金全てを使わせる気だ…)


「300ジューロンくらいかな」

「ふむふむ、それならこれ!」


さっきルドルがオススメしてくれた三本のうち一本を指差した。


「これなら丁度300ジューロンでいいわよ?」

「これか…」


それは


ーーー「黄金煌めく王の剣!細身の中に強さを感じ、握った途端王族になった様な感覚に陥れる!」


派手な剣だった。


(一旦これくらいでいいんじゃないの?)


(いや、派手だしこれすぐ折れそうだったぞ?)


(そこは上手いこと使ってよ!どうせ大して使わないんだから!)


(それにこの派手さはいい意味で注目を集めて出来ないをアピールしやすいじゃない!)


(まぁ確かに一利あるなぁ)


(でしょ?派手で弱いんじゃすぐ追放よ)


(よし、買った)


「毎度ありー!」

「おぉー!ソーン!やっぱりこれにしたか!一番食いついてたもんなー!」

「これが最上にソーンに似合うと思うぜ!」

「あ、ああ」


こうしてルドルとソーンは新たなる装備を手にした。


そしてドワユ・ドンから受け取ったお金はこの仕立て処 エイグにて使われた。


ソーンの追放への未来は、このすぐに折れそうな黄金のエクスカリバーに託された。


カチャッ

黄金煌めく剣を背負う。


グッ

グローブを手にはめる。


「ソーン!今度はゆっくり話そうね!必ず!」

「う、うん!も、もちろんだよ!」


(最高の笑顔が怖いよ…)


「ルドルもありがとう!会えてよかった!またいつでも来てね!」

「おう!こちらこそありがとう!大事に使わせてもらう!」


きっちりとお辞儀をした。



「ありがとうございましたー!」



ユルザの元気な声を背に、二人は店を後にした。


「よし!そしたらギルドに行くか!」

「そうだな」


ーーー

ーー

…ジュワン


札束から微かに魔力が解放され霧散した。


「ほほ〜う。りりちゃ〜んやっとあのボーイはお金を使った見たいだぜ〜」


ブラックリストの文字が赤く染まる。


「これで契約完了ですね」


「ハハハ〜。これからが楽しみになってくるね〜」


サングラスの奥で、不敵な笑みだけがゆっくりと深くなっていった。

ーー

ーーー


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