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第24話『ルドルの趣味が全開だ… 』

《仕立て処・エイグ》


街のギルドからは少し離れた所の商店街の近くにその店はある。


歴史と技術のある老舗の仕立て屋。

武器だけでなく、防具やアイテムなど幅広く扱っている。

ただこの店の強みは仕立て屋という所だ。


一人一人に合わせたオーダーメイド装備の作成をしてくれる。


かつてソーンは、父マクラウルとの修行の際に重い剣や重い防具など普通は使われないような装備品を、ここで作ってもらっていた。


街の人からも愛され、王国や別の街からもオーダーが入ることもよくあるとの事だ。


「あ!」


商店街に差し掛かった所で、ルドルが大きな声を出す。


「ん?どうした?」

「俺、忘れ物したかもしれないぞ!」

「忘れ物??」


(別に普段から荷物ないぞ?)


「ああ!だからちょっと先に行っててくれ!」

「え、あ、あぁ、別に構わないが。場所分かるのか?」

「えーっと。。。商店街の武器屋だろ!」

「《仕立て処エイグ》って所」

「仕立て処エイグな!了解!」


(ふっ。最上の男は気を使えるのさ…!)


(久々の幼馴染との再会を邪魔するなんて事はしないぜ!)


「じゃあ、後でな!すぐ向かう!」

「お、おう!気を付けてな」


ルドルは背を向けて走っていった。


ザッザッ


(この辺までくればもう大丈夫かな!)


ルドルは足を止め振り返る。


(えーっと、仕立て処エイグだったよな)


ソーンが見えない事を確認し、ゆっくりと歩き出す。


(ルドルやつどうしたんだろ、忘れ物なんて)


一人になったソーンはそんな事を思いつつ、幼馴染の居るお店へと辿り着く。


(ここに来るのは久々だな。オヤジさん達も元気でやってるかな)


店は老舗らしい重厚な佇まいで来る客を歓迎する。


木製の扉は年季が入っているが汚れなどはなく管理が行き届いている。


キィー


聞きなじみのある耳心地よい音がした。


「いらっしゃいませー!」


入ると同時に元気な声が飛んできた。


その声の主と目が合い軽く手を上げるソーン。


「あら!ソーンじゃない!」


営業声とは別の元気な声に変わった。


「よっ!ユルザ!」

「よっ!じゃないわよ!最近顔出さないで何してたのよ!!」

「いやぁー、それが色々ありまして…」

「色々って何よ?今日はソーン一人?お父さんは?」


(質問攻めだ…)


「父さんはまた遊びに出かけて、まだ帰ってきてないと思う…」

「思う?」

「思うって何よ?」

「あっ!もしかして!」

「あ、いや…」

「とうとう冒険者になるって事を諦めさせられたの!?凄い!やるじゃんソーン!」


自分の事かのように喜びの声を上げる。


「ユルザ…違うんだ…」

「…え?違う?」

「違うって何が?」


ハッピーオーラは消え静寂が包んだ。


「作戦はうまくいかなかったんだ…」


なんとも言えない表情のソーン。


「だって家に帰ってないんでしょ?」

「お父さんに諦めてもらって、それで少し居づらくなって…って事じゃないの!?」

「俺は今…」


その時お店の扉が元気よく開いた。


キィーッ!


「ソーン!待たせたな!」


そこには普段より髪を立たせ、

もはやオールバックに近くなっているルドルの姿があった。


ソーンとユルザは声の方を見た。


「いや〜、忘れ物してるかと思ったらしてなかったわ〜。やられたやられた」


分かりやすく棒読み。


「良さそうな武器はあったかー?」


頭を掻きながらカウンターの方へやってくる。


「いらっしゃいませ!」

「えーっと、ソーンのお知り合い?」

「知り合いと言うか…今の仲間…なんだ」

「仲間!?どういう事!?」


ソーンはルドルを紹介する。


「こちらはルドル=マフティス。拳闘士」

「初めましてルドルです!よろしくお願いします!」

「セブンスヘブンの副リーダーやってます!」


丁寧にお辞儀をする。


実家が道場ということもあり、礼儀などはしっかりとしている。


(セブンスヘブン!?副リーダー!?どういう事よ!?)


(あ、ルドルってリーダーじゃなかったんだ…)


「そしてこちらが」


今度はユルザを紹介。


「《ユルザ=エイグ》昔からお世話になってる幼馴染です」

「こんにちは!初めまして!」

「ユルザ=エイグです!よろしくお願いします!」

「今後は装備品に関してはご贔屓に!」


(相変わらず仕事は熱心だ)


ーーー

《ユルザ=エイグ》

ソーンの幼馴染であり、ソーンが冒険者になりたくない事を知っている唯一の女性である。


幼い頃からここの武器や装備を使っていて、よく父マクラウルと通っていた。


茶色い髪を一つ結びでまとめ活発。


当時はソーンよりも腕っぷしが強かった。


気を許して何でも話せる仲である。

ーーー


「それで?ソーン?」

「この紹介だけで終わりじゃないわよね?」


静かなる圧を感じる。


「今は冒険者になって、このルドルとセブンスヘブンと言うパーティーを組んでる」

「ちなみにもう一人仲間いますよ!」


陳列している装備品を眺めながら声だけを投げる。


「冒険者になっちゃったの!?」

「それにパーティーまで…それにもう一人仲間がいるの!?」

「そうなんだよ」

「だめだ。頭が追いつかない」


頭を抱えるユルザ。


「色々あったんだよ」

「色々ってレベルじゃないわよ!もはや別人の話じゃない!」

「まぁ、ソーンの事だから全部裏目に出たんだろうけど」

「全て上手くいくと思ってたんだが…」


考え込むソーン。


「とは言え、何だか楽しそうな雰囲気じゃない!」

「そ、そうか?」

「お仲間の前じゃ言いにくいこともあるだろうから、今は詳しく聞かないけど。ちゃんと教えてね!」

「おう」


二人とも落ち着いた空気に包まれる。


「それで?今日はどうしたの?」

「ソーン!こんなのはどうだ!」


武器を見ていたルドルは変わった形の剣を指差して言ってきた。


「あ、ああ」


それを一瞥しユルザに目線を戻す。


「今日は武器を探しに来たんだ」

「え…?」

「オヤジさんたちは裏で作業中か?」

「今はお父さんもお母さんも、装備品の素材を集めで留守にしてるけど…」

「ソーン」

「今武器探しに来たって言った!?」

「そうなんだよ」

「ホントに冒険者になっちゃったんだね…」


淋しいのか、嬉しいのか、何とも言えない表情のユルザ。


「それで?どんな武器を探してるの?」

「また特注の激重な剣?」

「いや、あれは扱いが難しくて結局俺は今ここにいるんだ」


(持ってない時の自分の力の調整…)

(結局、冒険者としてここまで来てしまってる…)


「だから、もっとこう…普通のやつでいいのかもしれない…」

「普通…ね…」


少し考え込むユルザ。


「すいませーん」


他のお客さんから声が飛ぶ。


「はーい!」


営業声に戻るユルザ。


「ちょっと見させてもらうな」

「う、うん!ゆっくり見てみて!」


(ソーンから“普通”なんて聞くとは思ってなかった…)


(あなたの普通が一番厄介じゃない?)


「あのー」

「はい!ただいま伺います!」


広い店内はユルザ一人で回すのは大変そうだった。


「話は終わったか?」


店を物色していたルドルが声かける。


「ああ」

「まぁ、久々の再会じゃ募る話もあるわなぁ!」

「ハハ、まぁまぁだよ」

「そうか?まぁとりあえずこれ見てみくれ!」

「いくつか見繕ってきたぞ!」


木製の展示台の上に、比較するように数本の剣が並べられていた。


この台はお客さんがいくつかの商品を比べる時に使っていい台だ。


「お、おぉ」


(ルドルの趣味が全開だ…)


「先ずはこれ!」


一番左の剣を指差した。


「漆黒で滑らかな質感!ツバはドラゴンを予感させる翼の仕様!そして何よりこの最上は柄がドラゴン!」


ソーンではなく、ルドルが目を輝かせる。


「これはもう天空を支配する始祖竜すら倒せそうだな!」

「めっちゃイカすだろ!?」

「そ、そうだなぁ…」

「でもこれは俺にはちょっと凄すぎるかな…」

「そうかあー?全然似合ってると思うけどなー」


予想外の反応に残念そうなルドル。


「じゃあ次だ!」


次は真ん中の剣。


「黄金煌めく王の剣!細身の中に強さを感じ、握った途端王族になった様な感覚に陥れる!」


(もう感覚の話になってる…)


「まぁ一個目よりはまだいいかも」


切っ先から持ち手とツバの部分に直線の模様が入っており、十字架をイメージさせる。


ツバの両端には赤い宝石、柄には青い宝石のようなものが埋め込まれきらびやかな仕様になっていた。


「ほほう!ソーンはこういう系の方が好みか!」

「いや、好みって言うか…」

「ほら!持ってみろよ!」


強引に渡してくるルドル。


(どうしてもこの三つのなかから選ばせたいのか…)


グッ

軽く握ってみる。


「うん。まぁそんな感じたよな」

「どうだ?王族になった感想は?」

「…」

「何か言ってくれよ!」


軽く振ってみた。


ブォンッ


(んー、やっぱり市販の物は微妙だなー。量産品っぽい)

(オヤジさんに作ってもらったやつの方が圧倒的に良い)


父マクラウルから武器の扱い方や良し悪しなどを叩き込まれているソーンは、一振りで大体良し悪しが分かってしまう。


「おぉ!様になってるじゃんか!」

「これに決定かー!!?」


(うん、数回振ったら折れそうだ)


「これも違うなー」

「ぐぬぬ!」


オススメが通らず歯を食いしばる。


「じゃあ、最後のこれならどうだ!」


最後の剣は割と普通寄りだった。


自然と手が伸びるソーン。


(ん!?)


見た目に反して意外に重量があった。


「意外と重いんだな」


何だか特注の武器を思い出した。


再び構え軽く振ってみた。


ブォンッ!


重量のせいかさっきの剣よりは振りやすく感じた。


「何か変わった剣だな」

「流石ソーン気が付いたみたいだな」


ルドルがニヤリとする。


「この剣はこんなもんじゃないんだぜ」

「柄の下の所を押してみ?」

「柄の下?」


(ここか?)


ポチッ


ボタンの様な感覚があった。


ガチャン…


ガチャガチャ。


ウィーン。


ガシューン。


「…」


「どうだ!!この武器!!最上にカッコいいよな!!」


ルドルが興奮する。


あっと言う間に剣から銃へ姿を変えていた。


「剣にも銃にもなる武器らしいんだよ!凄くねぇか!?」

「俺もこんな武器欲しーー!!」


ギミックに最上の目の輝きを見せる。


(いや、要らないだろ…)


「うん。カッコいいな」


ポチッ


ガチャン…


ガチャガチャ。


ウィーン。


ガシューン。


満遍の上っ面笑顔でそっと剣に戻し台に置いた。


(俺はこの中から選ばなきゃいけないのか…!?)


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