第23話『俺の武器か…』
「…よし!」
まだ浅い太陽の輝きに反射するように、
ソーンは目を輝かせる。
ネオギガンティックに一本のリゴンの枝が植えられていた。
「これでいいかな」
「しっかり育ってくれよ!」
ーーー
「ソーンさん。リゴンの木は枝からでも根付くッス」
「でもただ植えればいいってわけじゃなく、しっかりとした生育環境を整えれば強くたくましい幹になってくれるッス!」
「環境と言うのは……」
ーーー
リンビアが育てるための情報を事細かに教えてくれた。
「一番の実は二人に食べてもらえるよう、頑張らないとな」
小さく心に気合を入れる。
ガチャッ
拠点の扉が開く音がした。
「ふぁ〜〜」
大きな声あくびとともにルドルが出てきた。
「おはよう、ルドル」
「早いな」
「お!オッス!」
朝から元気なのはもう慣れた事である。
「ソーンも朝から精が出るな!」
「もっと早く植えてやりたかったんだけど、朝になっちゃったよ」
「なんか手伝う事あったら言ってくれな!」
「ありがとう!その時はよろしく頼む」
「んじゃあ、ちょっと走ってくるわ!」
「うん、気を付けてな!」
ザッザッ
太陽に向かって走り出した。
(毎朝ルドルこそ精が出るな)
「ふぁ〜…」
思いっきり伸びをした。
「朝飯の用意でもするか」
植え終えたソーンはネオギガンティックをあとにして
、拠点の中へ入っていった。
ここが完成してからと言うもの。
拠点が半壊したり。
鬼猪の異常個体が出てきたり。
リゴンの枝でワクワクしたり。
と、何だかんだ慌ただしい日々が続いていた。
(久々にゆっくりした朝な感じだな)
リンビアが冷却装置を付けてくれた保管庫から肉、野菜と手早く食材を取り出す。
(うん。しっかりと冷えてるな)
(この装置はありがたい。食材の鮮度を保ちながら長く保存ができる)
(無駄にせずに済むし、急いで使わなくていい)
包丁を取り出す。
シャキーン
綺麗に研がれ切れ味の良さそうな包丁を、慣れた手つきで扱う。
(朝から肉を食べるなんて父さんとの日々を思い出すな)
父マクラウルが家を出てからそこまでの月日は経ってはいなかった。
だが、この濃厚な日々を過ごしてきたソーンにとってはかなり前のように感じれた。
先ずは野菜を軽く洗い葉物をザク切りにして、皿に盛る。
そこに採ってきたリゴンをくし切りにして乗せる。
野菜と果実のサラダ。
(次は…)
横のフライパンに火を付ける。
四角いパンに十字に切れ目を入れて、バターを敷いて切れ目を下にして焼く。
ジュワッ
バターの溶ける匂いが部屋に広がる。
こんがりと焼き目がつくまで少し放置。
そのタイミングで別のフライパンで肉を焼く。
(角豚は脂も豊富だからこのまま焼いても大丈夫だな)
厚く切った肉を乗せる。
ジュンッ
ジュゥー
熱したフライパンの上で脂が溶ける。
味付けに塩と香辛料を少し振る。
片面が焼けてきたら、裏返し軽く味付けをし蓋をして弱火で少し蒸し焼きにする。
(おっと。そろそろパンがいい頃合いだな)
パンをひっくり返す。
バターが切れ目から染みていい焦げ色になっている。
パンの香ばしい匂いとバターの濃厚な匂いでお腹が減る。
パンは肉と同時に完成させたいからここからはゆっくりと仕上げる。
火を弱め裏面はじっくりと火を通す。
外はカリッ中はしっとりにする。
これは経験値が物を言う。
(よし、肉も仕上げに入るぞ)
蓋を外し火が通っていることを確認し、火力を上げて一気に焼き目をつける。
ジューッ
(よし、このくらいでいいだろう)
ガチャッ!
完成間近になった所で扉が開く。
「戻ったぜ〜」
「ん!この匂いは!」
「お、ルドルおかえり。いいタイミングだ」
「朝飯だー!」
完璧な焼き加減のタイミングでパンと肉を盛り付け、テーブルに並べる。
「朝から肉なんて分かってるねー!ソーンは!」
「さぁ食べよう」
「おっと!その前に手洗ってくるわ!」
ドタドタと洗面台へ向かって行った。
(パーティーを追放されたら)
(まだ見ぬ妻と子供とこんな生活をしたいな…)
「待っててくれたのか!わりぃ!」
「「いただきます!」」
もぐもぐ
むしゃむしゃ
「うめー!こりゃ将来は最上の父親になれるな!」
「ハハ。それはホントに最高だな」
「こうして二人で飯を食ってると、七福亭を思い出すな!」
「確かに最近全然行けてないな〜」
「んな!リンビアが入ったことだしお祝いと行こうぜ!」
肉とパンを思いっきり頬張る。
「それにこの俺達を繋ぐ絆の拠り所も出来たことだしな!」
「そ、そうだな!近々行こうか」
(また変わった言い回しだな…)
「そうそう、そのリンビアはまだ寝てるのか出てこないから先にソーンの武器を用意しねぇか?」
「俺の武器?」
「この間みたいな事が起きた時に丸腰はヤバいだろ?」
「拳で戦うタイプでもないだろうし」
「んまぁ、そうだな…」
(“戦うため”の武器か…)
(否!!)
(未来を掴み取るための武器だ!)
(追放へのエクスカリバー!)
朝食を終える二人。
「ふぅー!食った食った!」
「朝から幸福度ぜぇ!ありがとな、ソーン!」
「おう!」
ササッと皿を片す。
「そういやあ、この辺に良い武器売ってるところってあるのか?」
「この辺には俺の幼馴染の両親がやってるお店があるんだ」
(あそこなら今の俺に合う武器を用意してくれるはずだ)
「そんなところあるのか!」
「普段からそこで装備品買ってたのか?」
「父さんとの修行の時はお世話になってたよ」
「でも、最近あんまり顔出せてなかったな」
「そうかそうか!」
「まぁ知り合いの店なら安心だな!良い武器選ぼうぜ」
「確かに良い武器が必要だな!」
(ソーンに似合う光の剣!みたいな度派手なやつあるかなー!)
(俺の未来…勝ち取るためのエクスカリバー!!)
二人の思惑が交差する。
そして一向に姿を現さないリンビア。
(そうだ、念のためこれも持っていくか)
ゴトッ
「よし、んじゃあそろそろ行くか!」
「そうだな」
「「行ってきまーす」」
ガチャッ
準備を終えた二人はソーンの幼馴染のお店へと向かう。




