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第20話『これあなたの魔法ですか? 』

ギルドの空気が一瞬止まる。


「今日も大変でしたか…アハハ…」


ウィンクだけが、いつもの事だと言わんばかりに苦笑いをしていた。


「まだこっちに登録し直せないのーー!?」


駄々をこねるようにしてウィンクに言う。


「いや〜、“ミラー家”のお嬢さんですから!」

「何か色々大変なんだー!ってギルド長が泣きそうな顔してましたよ!」

「早くしてぇ〜」

「あんなお金とか、地位とか、そんな所しか見てないか人達と一緒にいたくないーー」

「後少しですよ!私達と一緒に頑張りましょう!」


よしよしとなだめ続ける。



ここで王国ギルドは嫌だと叫ぶ女性。

名を《リエル=ミラー》と言う。


背丈ほどもある杖を持つ魔法使いだ。


そして“ミラー家”といえば、この国でも知らぬ者はいない名家。


《ランドラング家》

《ムンゾ家》


それらと並び称される、国内屈指の大富豪の家系である。


それ故に

自分のお金、自分の地位、自分の名誉じゃないのに、彼女に寄ってくる男どもにウンザリしていた。


リエルは机に突っ伏したまま叫んだ。


「私じゃなくて家を見てるの!あいつら!!」

「ホントにムカつく!」


イライラが高まり声が大きくなる。


「そう言う奴らを見返すために冒険者になったのに、その先でもどこに行っても同じ…!!」

「リエルさん自身の魅力に気が付けないなんて、気の毒なお人が多いですね!全く!」


同調する様にウィンクもプリプリしてみせる。


「でもこちらのギルドなら私達がしっかりと見てますから!安心して下さい!」

「リエルさんの健やかな冒険者生活は、私達が全力で守りますから!」

「うん…」

「ありがとう…ウィンク」


少しは落ち着いてきた様子だった。


「ソーン…触らぬ神に祟りなしだ…行こぜ」


話すタイミングを失っていたルドルだが、

一段落付いた所で小声で話す。


「そうだな」


二人は静かにギルドを後にしようとした。


ポロッ


その時


ソーンのポケットから森で採ってきた赤い実が落ちる。


(おっと)


ポケットとほとんど同じ高さで、瞬時に反応する


パシッ


《氷龍柱》


(ん?)


ソーンが赤い実を取った瞬間に、女性の声が微かに声が聞こえた。


パリパリッ!


パキンッ!


地面から龍の形をした氷の柱が出来た。


「何の音だ?」


ルドルがソーンの方に振り向く。


「って、ソーン!!」

「何だその“カッコいい”龍!?」

「しかも食われてるぞ!」


ソーンの手は実とともに龍の口に食べられるようにして覆われ、床と繋がっていた。


その龍の造形にカッコよさを覚えたルドル。


(誰の魔法だろう?)

(周りの人達はほとんどルドルと同じ様な顔をしている…)

(こっちを見てないのは、ウィンクと受付台で突っ伏してるリエルと言う女性…)


「あら、カッコいいなんてずいぶんね」

「私の魔法は“綺麗”なの」


突っ伏していたリエルは氷龍柱に対して


カッコいい


と言われ、ムクッと起き上がり言葉を発した。


「これあなたの魔法ですか?」


ソーンは手を齧られながら聞く。


「ええ。この綺麗な魔法は私の…」


!!?


「す、すす、すいません!!手まで一緒に…!!」


自分の魔法がソーンの手を食べている所を見つけ慌てて謝る。


「いや、大丈夫ですよこのくらい!」

「ホントにごめんなさい!!」


パシャッ


氷の龍は跡形もなく水に戻った。


「あぁ、龍が…もうちょい見てたかった…」


ショックを受けたルドル。


「この実も冷えてちょうど良かったです」


笑顔で応対。


「冷えてちょうどよかった…」

「でも…私の魔法速度より早く動けるなんて驚きました」


凛とした姿と言葉。


先程の駄々をこねていた姿はどこへやら。


(確かに詠唱からの発動は早かった)


「そうなんですよ!クリーガーさん!」

「リエルさんの魔法速度は騎士団にも及ぶ速度と言われているんです!」


興奮したような面持ちで身を乗り出すウィンク。


「騎士団にも及ぶ速度…」


マルコやアイニー、ノーリス騎士団の隊長達を思い浮かべた。


「さっきのカッコいいやつまた見せてくれよ!」


ここにも興奮する男がいた。


「カッコいいじゃなくて、綺麗です」


少しムッとしながら言い直す。


「この氷龍の美しさに気が付けないなんて、野蛮ね」


冷めたような口調で続ける。


「カッコよかったよなー?」


(俺に振らないで…)


「聞こえちゃったんですけど、今王国のギルドで登録されてるんですね」

「そうですけど」

「マルコさんやアイニーさん、ノーリスさんにあったらよろしくお伝え下さい」


軽く会釈をしてこの雰囲気から脱する事を決めた。


「え…?」


「行こう、ルドル」

「あ、え?龍ーー!」


ズリズリとソーンに引っぱられながらギルドを後にする。


「…マルコさんにアイニーさん?」

「どちらの方も、“ここのギルド”の人が話せるような相手じゃないのよ…?」

「それにマテリアルさんの事を名前で呼ぶなんて…」


嫉妬と共に不思議な人だと言う感情が広がった。


「ねぇ、ウィンク」

「今の人達何者?」

「達っていうか、あのツンツンはどうでもいいけど」


ツンツンとはルドルの髪型を言ったようだ。


「はい!あのお二人は最近セブンスヘブンと言うパーティーを組まれた方たちです!」

「うんうん」

「お名前はソーン=クリーガーさんとルドル=マフティスさんです!」

「それでそれで」

「…」

「…?」

「え、それだけ!?」

「…えーっと」


ウィンクはソーンが勇者である事を言うかどうか悩んだ。


(まぁギルドの人達が安易に冒険者の情報は出せないか…)


「変なこと聞いてごめんね、ウィンク。ありがとう」

「いえいえ!」

「それで、いつ頃こっちのギルドに再登録出来る様になりそう?」

「ギルド長が頑張ってくれてると思うんですけど…」


ガチャ


すると、ウィンクの後ろの扉が開く。


「いや〜、ホントに大変な戦いだったよ」


頭を掻きながら少し疲れた表情で大柄な男の人が出てきた。


「あ!ギルド長!お疲れ様です!」

「お!おつかれ!」


その男の人はギルド長と呼ばれていた。


「ウィンクこれ」


一枚の書類が渡された。


そこにはギルド再登録証と記されていた。


ふと前を見る。


「これはこれは!ミラーさん!丁度いいところに!」


リエルは状況を理解し顔がニヤける。


「もしかして!?」

「そう、そのもしかしてだよ!」

「リエルさん!出来ました!再登録!」


書類を突出し嬉しい声を上げた。


「ありがとうございます!!やったーー!!」


急に少女のように喜びを表現する。


「これでやっと再出発が出来るわね!」

「喜んでくれてよかった~、苦労した甲斐があったよ」

「じゃあウィンク、後はよろしくね」


リエルにも挨拶をして、

ノソノソと再び後ろの扉の中へ消えていった。


「それでは内容の再確認ですね!」

「うん!お願い」


ーーー


リエル=ミラー

魔法使い

女性

……

《パーティー所属なし》


ーーー


「これで以上になるんですけど…」

「どうかした?内容あってるわよ?」

「パーティー“所属なし”って…《天光ノ女列》抜けちゃったんですか?」


「“あんな”窮屈で陰険で美の欠片もない所に、ずっとは居れないわ」


ーーー

《天光ノ女列》は、ギルドとは無関係に存在する女性限定の特別組織である。


名家や富裕層など、限られた立場の者のみが所属を許され、どこのギルドに属していても関係なく選ばれる。


その名は、王国における一種の“格”を示すものだった。

ーーー


「そんな事出来るんですね…!」

「両親には相当苦労かけたかもしれない…」

「ホントにいいのか?ってめちゃくちゃ聞かれたの!」

「あはは…そうなりますよね〜…」


「でもこうして晴れて自由の身!」


笑顔が咲く。


「改めて、これからもよろしくね」

「はい!正式によろしくお願いします!」


キラリンッ☆


「これからこっちでバンバン頑張る!」

「それに最高のパーティーも見つけてやるんだから!」


扉の方を見つめそう心に決めた。


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