表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/19

第1話『これで最後のはずだった』

「おっソーンやっとお目覚めか?」

「おはよう、父さん。今日も早いね」


2階の寝室から降りて来た僕は眠い目を擦りながら父に挨拶をした。


「まあな。男たる者朝と酒には強くないとな!まだ酒はソーンには早か!ガッハッハー」


豪快に笑ってみせる男ソーンの父マクラウル。

ここ数年は母親が仕事で不在の為、父1人で子育てと仕事を両立させていた。

マクラウルは40歳を超えたこの頃既に剣聖と呼ばれ王国では名のある冒険者になっていた。


「父さん、この角豚の肉も食べてもいい?」

「勿論だ!好きなだけ食べていいぞ!朝から角豚とはお前もオレの子だな!」


角豚ツノブタはこの辺りの森には良く生息していて、食用としても流通している安価で栄養価のある肉だ。


ご飯の用意や片付けなどの家事など極力は自分でやるのが父の教え。

自分がもしダンジョンや高難度の依頼で帰れなくなってしまっても、生きて行けるようにだそうだ。


お陰で少しずつ料理も出来るようになり、掃除片付けも習慣化されて来ている。


脂と肉の焼けた美味しそうな匂いがして来たら、その脂を利用し隣で卵を焼く。


ジューー

香ばしい音が目の前に広がる。


卵の黄身の半熟具合なら父には負けないだろう。まぁそんな事を気にする人ではないが。


薄めに切った隣のフライパンで四角いパンを焼き始める。

強火で表面をカリカリにするのが僕の好みだ。


蓋を閉め蒸し焼きにしていた肉と卵が綺麗に焼き上がったので火を止め、皿の準備。


テキパキとこなすソーンを見て父は感動していた。


「うぅぅ…お前も料理が様になって来たな。お前のお母さんも同じように料理が上手な人だった…」

「いや、知ってるよ!3年くらい前まで一緒に住んでたじゃん」

「ってか『だった』て死んだ人みたいに言うとまた帰って来た時に怒られるよー」

「おっといかんいかん」


目頭を押さえる。


「この歳になってくると涙腺が緩んでしまってな!」


「そういえば今日の予定は?」

「そうだな。そろそろお前も一人前になってくるころだしな。最後の修行に大連山へ行ってみるか」


(大連山かぁ。最後だからまぁそのくらいのレベルになるよなぁ…)


そうと決まり、そそくさと朝食を平らげる。


「んで、今日の縛りは?」


父との修行をこなしていくソーンに父は簡単な縛りをつけてより大きな負荷を与えていた。


「そうだな。今日は剣の使用を不可とする」

「え!?大連山で!?それって俺死ぬじゃん」

「何を言っているか!剣を持たない戦い方もきっちり教えたはずだ!お前なら出来る」


確かに父さんからは色々な戦い方や、武器の使い方を教わってきた。

拳王で剣聖直伝の技や動きは、簡単なモノではなかった。


「まぁ確かに色々教わったし、これが最後ならやれるだけやってみるよ」


ウム!


とマクラウルは大きく頷いた。


「んじゃ、俺準備してくるわ」


皿を片し、自室へと準備に向かうソーン。


(よし!遂にこのキツい鍛錬ともおさらば出来る!そして、これを冒険者としての本当に最後にする!)


 1人部屋で大きくガッツポーズをして見せる。



ーーー


ソーンはいつの日からかこのキツい鍛錬に辟易していた。

鍛錬を積み更なる高みへ臨み、高難度のダンジョン攻略やドラゴンなどの伝説級の魔物の討伐、超重要人物の警護などなど。父の話を聞くだけだ胸焼けを起こしそうだった。

今や功績や称号などには興味もなくなっていた。

冒険者などやらずに、畑を耕しゆっくり悠々自適に過ごす方が理想になっていた。


そう思っていた時、ソーンには1つの考えが浮かんでいた。


『父さんに俺は冒険者に向いてないと思わせればいいのか』


そうなればこの鍛錬の日々も終わり普通の暮らしをして生涯過ごせる……


…と。


ーーー


この日を境に装備を徐々に重くし俊敏性を無くし、体力の消耗を著しく悪化させた。


だが見るからに鎧のようなゴツゴツした物を着てしまったら、やる気に満ちてると思われるか、または邪魔だから脱げと言われてしまいかねない。


ここは未来への投資と思い、少々値は貼るが仕立て屋を営んでいる幼馴染の《ユルザ》の元へ特製の装備品を作ってもらった。


そうする事により動きが鈍い自分を作り出す事で父さんに『出来ない自分』を見せびらかした。


だが、そんなソーンの想いとは裏腹に父マクラウルは『出来ないなら出来るまでやれ』と更に多くの鍛錬を与えて来た。


結果そんな苦労も実らず、父さんとの最後のダンジョン攻略に出る事に。



「ふぅー。これでこのバカ重い装備で出るのも最後か…」


慣れた手つきで上半身下半身と整え背中に剣を背負う。


(おっと今日は剣はいらないか)


いつもの流れで剣を持ったが今日の縛り『剣の使用不可』なの思い出す。


これがないだけでもかなり動きが違う。


(修行でこれを持ってないのはかなり久々だが、まぁ最後だしこれくらいの重りの差があっても問題ないだろう)




「準備できたかー?」



父さんの声が響く。



「今行くー」



いざ自由を得る為の『最後』の試練へ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ