第16話『俺の庭はネオギガンティック!』
「うぉーーー!!!」
晴天輝く日常に最上の感情を乗せた声が響いた。
「かっっっっけーーー!!」
飛び上がるほどの歓喜。
「自信作ッス〜♪」
どうだと言わんばかりに鼻息を見せる。
(また凄い形で修理されたな…)
「これ実際に撃てるのか!?飛べるのか!?」
メガネをクイッと上げてニヤリとする。
「当然!!」
手を腰に当て胸を張る。
「うひょーーーー!!最高だぜー!リンビアー!!」
「喜んでもらえて何よりッス!拠点を壊した甲斐があるってもんッス!」
(いやいや、壊すな壊すな)
「ソーン!やったな!お前の庭ネオギガンティックもちゃんと出来上がってるぞ!」
(不安だ…)
ネオギガンティックの現実を受け入れるのが怖くてまだ庭を見ていなかった。
「こちらはソーンさんに気に入ってもらえるように頑張ったッス!」
「見てみろよ!」
「ああ…」
すぅーーーっ。
はぁーーーっ。
(よし来い現実!!俺はここにいる!!)
これから戦いにでも行くかの如く気合を入れるソーン。
(……)
目を大きく丸くした。
目の前に広がったのは、
とても心地のいい土の匂いと緑の塩梅。
周りは柵で仕切られており、
入り口はここだと言わんばかりに,木の板が並びそこまで誘ってくれていた。
入り口のすぐ横にはソーンの庭ネオギガンティックの表札まで刺さってる。
誰のものかと言うのが一発でわかる。
柵の外には小さな木が植えられており、木漏れ日が優しく落ちていた。
ここはもう、
ネオギガンティックという名の――心の休まりだった。
「何だ…これは…」
「ちょっと俺としては物足りないけど、ソーンはこっちの方がいいのかなって思ってよ!」
「ルドルさんの提案だと、最初はここに害獣から守るスーパービーム銃とかを付ける予定だったッスけど」
「ソーンさんのものだからって、ソーンさんの最上にするって事になりました!」
二人の気持ちが伝わる。
「どうだ?」
「どうッスか?」
暮らしにおける「機能性」と、視覚的な「景観美」のバランスが取れた庭
こんな素敵な場所が、この拠点に出来るとは思っていなかった。
もっとネオでギガンティックな仕上がりになると思っていたソーンには、
言葉を失わせるほどの出来事だった。
「……二人ともありがとう」
心からの言葉だった。
「おいおいー、泣いてもいいんだぜー?」
ハハハハッと笑う。
「俺…頑張るよ…」
(この庭を無駄にしない!色んな野菜を作って食うに困らない様に!感謝の印だ!)
「おう!じゃあギルドに行こうぜ!」
「グヘヘ、そしたらソーンさん私と研究所に…」
ルドルとリンビアの目がかち合う。
「これから依頼だろ!」
「研究の方が大事ッス!」
グルッ!
二人してソーンを見る。
「なぁ!ソーン!」
「研究ッスよね!ソーンさん!」
「そ、そうだなぁ…」
「これからお金もかかるし、お金を作る意味でも一旦依頼かな…?」
「っしゃー!だろぉー!?」
ガッツポーズをする。
「お、お金ならソーンさんのやつがあるじゃないッスか!」
「でも、研究対象ソーンさんはソーンさんしかいないんッスよ!?」
(ちょっと怖いこと言ってるー!!)
「あのお金は…もしもの時に大事に使おうと思ってさ!」
「うんうん。ソーンの大事な装備を売ってまで用意してくれたんだ!軽く使えないよな!」
(……)
「それなら私の創った装置を販売したらいいじゃないッスか!」
ソーンは少しだけ考えた。
「それはありがたいが、違うんだ」
真面目なトーンで答える。
「自分達のことは自分達でやりたいんだ」
「リンビアだけに負担はかけられない」
これはソーンの本心であり当然の思いだった。
「ぐぬぬ…!」
そこまで言われて反論できないリンビア。
「と、言うことで行こうぜ!ソーン」
「お、おう。リンビアは研究頑張ってな!」
「…はいッス」
プリプリしながら地下へ潜っていった。
リンビアは科学者。
基本的には外に出たがらない。
やりたい事が多過ぎるんだとか。
ーーー
ーー
街のギルドへやって来た二人は依頼書を物色する。
「どうだー?」
「ん?」
掲示板を隅々まで見ながら反応する。
(今日はドンさんの黒い依頼書はないなぁ…)
「(良さそうな)依頼はあるか?」
「(ドンさんの黒い依頼書は)ないなー」
「ない!?勇者様にはもうここの依頼じゃ収まらないか!」
驚きと笑いが混じったトーンだった。
(間違えた!)
「あ!いや!ほら!これこれ!これいいじゃん!」
焦って目の前の依頼書を指さして言った。
「どれだ?ふむふむ」
ーー緊急!害獣《鬼猪》の討伐
ー概要 : 森を荒らし人里への被害が想定されている。
強個体及び群れのボスの討伐を軸に被害を抑えてほしい。
ー報酬 : 850ジューロン
ー成果 : 群れ、住処の除去。《鬼猪》の討伐。
「ほー、緊急依頼の討伐か…良いじゃんか!」
(討伐系を選んでしまった…)
(採取とか迷子の子犬探しとかが良かったのに…)
「最近は薬草採取とか、拠点作り云々でまともな依頼を受けてなかったからな!」
(薬草採取だって立派な依頼だよーー)
「まぁ、勇者にもなったしこのくらいならいいかなって」
「謙虚が過ぎて、もはや結果が楽しみだわ!」
「ハハハ」
苦笑いをする。
「んじゃあ、ちょっくら受けてくるわ!」
「おう、頼む!」
街のギルドで依頼を受ける際はルドルが一人で中に入っていく。
これはルドルが勇者になったソーンを、見せびらかしたくないという思いがあるからだ。
王国のギルドで勇者の称号を取ったということは、きっとギルド内でその情報は回ってるだろう。
他パーティーへの引き抜きや別ギルドへの引き抜き、逆にここで依頼を受けられなくなっても困る。
と、色々な気持ちがあった。
ソーンはソーンで勇者ごときがこんな依頼を受けるのか?辞めておいたほうが良い。
と、なってしまいかねないから外で待っているんだと思い込んでいる。
ギィー。
いつものように木製の扉がきしみながら開いた。
「こんにちわー!ようこそギルドへ!」
こちらもいつも通り元気な受付嬢の声がルドルに向けられた。
「ども!これお願いします!」
「おや?マフティスさん今日もお一人ですか?」
「アハハ…そうです」
少し気まずそうなルドル。
パーティーを結成するとギルドへの登録が必要になる。
ソーンが勇者になろうとしている間、ルドルはその登録を済ませていた。
そして――
ソーンが《勇者》になったという知らせは、
王国ギルドから各地のギルドへとすぐに共有されていた。
当然、この街のギルドも例外ではない。
「勇者さんがこのギルドに所属してくれてるなんて、私も鼻が高いです!」
ムフゥー!
「それに凄い人がいてくれればここに入ってくる依頼ももっと増えて、もっとギルドが有名になる!」
「そしてこの建物いっぱいに冒険者さんが…」
「考えただけでもワクワクしてきました!!その感謝を伝えたい!」
キラキラした目がその理想がどれだけの物かを語っていた。
「なのでマフティスさん!いつでも連れてきてくださいね!」
「あ、ああ…タイミングが合えば来ますよ」
「はい!」
「それにしてもこんな依頼で良いんでしょうか?」
持って行った鬼猪討伐の依頼書を見ながら言う。
「俺も思ったんですけど、あいつは謙虚なんですよね」
「いきなり大物とか狙わずにしっかりと地に足をつけて」
「だからこの前の薬草採取も凄かったじゃないですか?」
「確かにそうですね!このギルドのレベルに合わせて一番上の成果を出して周りに見せてくれる」
「うんうん」
「ここの冒険者さん達の基礎的な部分を、底上げしてくれてるんですね!」
「…間違いない!」
「あ、でも一つだけお願いです!」
「あまり勇者だって事を言わないで欲しいです」
「え!?何故ですか!?」
普通なら言いふらして自慢したくなるところ、逆の事を言われて驚いた。
「ソーンのやつ、勇者で止まる気ないみたいなんで」
「そんなに持て囃されて、身動き取りにくくなるのもアレかなって…」
「なんと!!勇者になるだけでもとても名誉で凄いことなのに、それより上を目指してるなんて…!!」
「私ファンになっちゃいました……」
キラリンッ☆
ウィンクで星が飛ぶ。
「俺もまだまだこれからって事ですね!まずはこの依頼で評価を上げていきます!」
「はい!お二人とも頑張ってください!」
「依頼受領です!期限は1週間となりますのでそれまでに成果をお出しください!」
「行ってらっしゃいませー!!」
ソーンの気持ちなどは露知らず、二人はドンドン好感度を上げていった。




