2-21 かわりに謝るから──解放してやってくれ
書き直しが楽しくて放置してるわけじゃないんです。息詰まってるので書き直しに逃げてるんです
m(__)m
館に着いた一行だったが、さてどこへ休ませるかと悩む羽目に陥った。先にイーリスが見たとおり、互いが互いへ魔力を供給していて、引き離すことが困難だからである。出来れば同じ部屋に置いておきたいということもあり、イーリスが使う主寝室を明け渡すことにした。
「って、イーリスさま、何やってるんですか!?」
「仕方ないだろう、衣装だぞこれ」
いきなり夕闇の着物を脱がせ始めたイーリスに、蒼夜が焦った声を上げる。だが実際、それは彼らが作ったものではなくて、仕立て上がりの衣装なのだ。こんなものを来たままで休めるはずもない。
「……てっきり、作ったものかと」
「私の衣装はな。女物は流石にな」
自分の誤解を知って、恥ずかしげに蒼夜はうなだれた。まあそれは仕方がないかと肌着だけを残す。アヴィの衣装は蒼夜に任せたが、遠慮はなかった。
「扱いが違うな?」
「女性じゃないですからね」
「雑に扱うなよ?」
「それは、もちろん」
つまりは、そういうことらしい。
「それと、イーリスさま。彼、こんなものを握っていましたが…」
「──仮面?」
差し出されたそれは、まるで仮面舞踏会で使われるかのような仮面だった。しかし、本来開けるべき目の部分は精密に描かれていて、その用を果たしていない。鼻や口はかなり写実的に作られているというのに、だ。そんなものを劇場で見た覚えはないし、アヴィにそれを買う暇があったとは思えない。
「たぶんこれ、魔法具だと思いますけど。調べましょうか?」
「ああ、頼む」
迷わずに答えたのは、彼が魔法具や術を解析することが得意だということを思い出したためだ。そもそも、諜報に回したのも、それが理由である。。この手の作業には、細やかな術と大胆さと、どれほどの知識があるかがモノを言う。イーリスの自覚として、実はそのどれもが彼に負けているのだ。
「…あれ? これ、壊れてますね。道理で魔力が通らないはずだ」
慎重に調べようとしていた蒼夜が、意外なことを言い出した。
この手の魔法具は、基本的に解析されないように罠が仕掛けられている。中にはそれのせいで本来の性能が殺がれるという本末転倒な魔法具もあるくらいだ。なので、蒼夜はまず、魔力を流し込んで飽和させ、内側から壊すことから始める。しかし、すでに壊れている魔法具には魔力が通らない。
いつもなら、壊したそれから魔力の痕跡を辿り、推測し、複製し、結論を導き出す。その結果に不足はあっても、間違いがあったことはない。
自分以外の魔力を辿るのは骨が折れると言っていたが、それも別に、不可能ではないので問題はないのだが。
「……ああ、ここだ。核につながる部分だけを壊してある。本来なら迎撃機能が働くはずですが……ああ、それを押さえるために魔力を流したのか。え、これを壊すだけって…迎撃機能を押さえる魔力って、ええ!?」
「あー……そういうことか」
蒼夜の独白を聞いて、イーリスにも見当がついた。それを告げるよりも先に、蒼夜に険しい瞳を向けられたが。
「まず、申し上げます。これ、おそらく初代妖皇の作品です。紋章がそのまま魔法陣に利用されてますし」
「……そうか。術具作成が得意だったとは聞いたが」
迎撃機能とか言ってる時点で、あの朝顔を思い出したのはたぶん、…そういうことだろう。紋章は、言うまでもないが、初代のものとされた柄である。
「完全に壊されてるので、何も起きないことは保証しましょう。彼らの魔力循環も、すぐに落ち着くと思われます。効能は見た目通りの仮面ですね。おそらく、他者を装うことが出来るものかと」
「……厄介だな。…だが、それなら魔王が騙された理由もわかるか」
心の底から溜息を吐く。朝顔でさえあれだけ苦労したのだ。出来ることなら関わりたくない道具である。
「…持ち主に心当たりでも?」
「ある。……後で引き合わせよう。どうせ顔を出すだろうしな」
問題は、どこまで情報を引き出せるか、だ。
「報告はそれくらいですね。──彼が、メモリアですね?」
アヴィを見て、蒼夜が問いかける。ああ、と今度は隠さずにそれを認めた。
「……ちなみに魔力量だが、瀕死の私を回復させてまだ、余裕があるぞ」
「は?」
まあ、そうだろうなとイーリスは内心で同意する。忘れていたが、魔王に選ばれる程度には魔力が多い自分を回復させてまだ余りあるとか、それはもう下手をすると妖皇に匹敵する魔力量である。
「…なんですかその桁外れの魔力!? ってちょっと待ってください、それイーリスさまより魔力量が多いってことですよね!?」
「魔力生成型だしな。まあ、私の従者になったのも正直、本人の気まぐれなんだが」
「……いや、魔力の生成手段は関係ないです、制御できる魔力の多寡が順位を決めるんですよね?」
「そう聞いてはいるがな。実際、主は私だ。見るか?」
その一言で、一本の鎖が現れた。銀のように細くきらめくそれは、イーリスの胸から延びて、アヴィの胸へと消えている。おそらくその先には心臓──妖魔の核があるのだろう。
「──盟約の鎖? え、でも──あれは、心臓から首──ですよね?」
主の心臓から、従者の首へ。まるで首輪を繋いだかのように見えたことを、蒼夜は覚えている。
「…”盟約の書”という契約術、知ってるか?」
蒼夜の疑問に敢えて答えず、イーリスが問いかける。自分以上に旅を続けている彼ならもしや、と考えたのだが。
「……知りません。魔法ですか?」
「いや、白妙領域で見た術だ」
ほぼ即答であることから、一縷の望みは潰えた。
「たぶん、アヴィが盟約の鎖を作り替えたんだと思うが──これのことだな」
「つくり……契約術を、ですか!? 新しく作ったのではなくて!?」
その表情で、イーリスはアヴィへの評価を改めることにした。規格外なのではなくて、常識外の存在と考えた方がいいらしい。もちろん、そのほうが面白いけれど。
ふと寝台の方から音がして、イーリスが視線を投げた。目覚めたのは夕闇のようだ。
「目覚めたか。どうだ、動けそうか?」
イーリスの言葉にも反応はなく、アヴィを見つけて抱きつくその様子に、蒼夜が目を逸らす。目を逸らし損ねたイーリスは、その唇がアヴィの名を呟くところをはっきり、見てしまった。
「……そういう関係でしたら、遠慮しましょうか」
「いやまて、全くそんな素振りなかったから」
自分が疎いとかそういう話ではなく、そもそも身体を用意したのも数日前だし、その後はほぼ一緒に行動しているし、どこで何が起きればそんなことになるのかとイーリスは否定する。実際、…お気に入りの縫いぐるみを抱きしめているようにしか見えないし。
「それより、魔力の流れは?」
「ああ……循環は切れましたね。たぶん、それで目を覚ましたんじゃないですか?」
そうか、と安堵の息を吐く。それならアヴィの目覚めも近いだろう。
「──夕闇さま、ですよね。本来のお名前は?」
「さあ? 本人がわからないというから、仮に名付けたんだが。…わかるものか?」
「え。……本気で言ってますか、それ?」
呆れた目で蒼夜が見る。本名ではない──というか、彼が名付け親だと考えた理由は簡単なのだが…どうやら本人に自覚がないらしい。話題の夕闇はまた眠りについてしまったようだ。
「何か思い当たる節はないか? 瞳の色は見えただろう?」
「──いや、流石にそれだけでは」
名前の通り、夕暮れのような昏い赤ではあったけれど、それだけでは情報が少なすぎると蒼夜は首を横に振る。如何に妖魔の数が少ないとは言え、瞳の色は被ることもあるのだし。
「調べましょうか?」
そうだな、とイーリスは考える様子を見せた。気にはなるし、そこまで思い詰めていたのなら助けになることも吝かではない。だが、夕闇がそれを望むのか。いや、それを知ったときに…夕闇のままで、いられるのか。それに何より、──間に合うのだろうか?
「…それらしい情報があったときだけでいい。──渾沌領域に落ちてでも自我を保とうとした奴だ、何かあったはずだ」
「──拝命承ります」
痛ましげな目を一瞬だけ夕闇に向けて、蒼夜が答えた。渾沌領域で自我を保つ、それがどんなに困難なことかは彼も知っていたから。
「何か、…あるの?」
不意にアヴィから声がして、二人が息を呑む。寝台に横になったまま、彼が視線だけこちらに投げていた。
「…いつから意識があった?」
「いや、ずっとあったけど。目が開かなくて動けなかっただけで」
「あったんですか!?」
「うん。…で、起きたいんだけど……」
抱き枕な現状から抜け出したい、とアヴィは目で訴えた。が。
「役得じゃないですか。ね、イーリスさま」
「そうだな。まだ夕闇も安定していないし、しばらく抱かれておけ」
「駄目だろそれ!? どうみても寝ぼけてるだけだろ、これ!?」
いや、とイーリスが否定する。
「お前だと分かって抱きついていたから、大丈夫だ」
「大丈夫って何が!?」
「据え膳食わぬは男の恥、ですよ?」
蒼夜の一言に、アヴィの気配が変わった。
「──本気で言ってるのか、それ」
二人の背を悪寒が走る。百戦錬磨の諜報員と魔王を凍り付かせるような、冷たい声に。
「すまん、言い過ぎた」
ややあって、イーリスが息を吐いた。それだけ彼に呑まれていたのだと、アヴィは気づかない。
「かわりに謝るから──解放してやってくれ」
ガクガクと震えたまま動かない蒼夜を見て、アヴィが目をしばたかせた。
「あれ…、俺がやった?」
「ああ、お前だな。ほら、解けた」
蒼夜がソファの上に倒れ込む。よしよしとその頭を撫でてやって、イーリスはアヴィに向き直った。
「まあ冗談は置いておくとしても、まだしばらくはそのままでいてやってくれ。お前を助けるために、かなりの無茶をしたからな」
「……わかった。具体的には?」
「目覚めて会話が出来るようになるまで、だな」
それはけっこう先の話ではないだろうかと、これだけ騒いでも身動ぎしない夕闇を見て、アヴィは溜息を吐いた。
「で、えと…蒼夜、でいい?」
「はい、ずっと前にイーリスさまに仕えておりました蒼夜と申します。…先ほどは、天幕をありがとうございました」
え、とイーリスが彼を見た。てっきり隠したままで行くだろうと思ったし、それは別に問題ないつもりでいたのだが。
「え。…あのお手玉の人? あの光るやつ!!」
「はい、普段は旅芸人でございますのでね」
どこからか普通のお手玉を出して、蒼夜が投げ始める。目を輝かせるアヴィに気をよくしたのか、蒼夜は次々と技を披露しはじめた。
「旅芸人はですね、興業を打つ以外にも収入を得る方法があるんですよ」
それがこの手の室内技を磨いた理由だと蒼夜が告げた。
貴族の屋敷などに招かれての芸の披露は、実入りがとてもよい。病弱とされる子女の慰みだったり、秘密の恋人への贈り物だったりと、招かれたことを口外すれば一座ごと消されかねない危険な仕事である。
「でもねぇ、面白いんですよ。気に入っていただければ、いろんなお話──聞けますし、ね」
※ ※ ※
「…アヴィが気に入ったか?」
「ええ。面白いですね、彼」
ハシャぎすぎたアヴィが疲労でまた眠ってしまったので、二人は客間へと移動していた。彼が何をしでかして、夕闇が何をやらかしたかは、二人が起きてから告げる予定である。
「いいんですか、二人をあのままにして?」
「ああ、念のため人除けも張ったしな。下手に向こうへ連れて行くよりは安心だ」
移動した理由はもう一つあり、まもなくこの館の主が戻ると報告があったためだ。
だがあの様子、この短時間で回復するだろうかとイーリスは危ぶんでいる。
「さて、どうするかな」
それ以上に、イーリスは悩む。仮面の残骸は手元にあるが、さてこれについては何と言い訳したものか。元々、この手の駆け引きは好きではないのだ。
「元々は、どうなさるおつもりだったんです?」
何の気負いもなく、蒼夜が問いかけた。
「──旅の途中で立ち寄っただけだ。飛空挺を用意してくれると言うから、芝居に乗ったんだが」
「芝居、ですか?」
「ああ。…まあ、アホ王子に惚れさせた上で袖にしてくれ、と」
「……はい? 何の意味があるんですか、それ」
「それを含めての説明のはずなんだがな」
目が丸くなる蒼夜に、イーリスは溜息を吐く。実際のところ、それ以上は聞いていないし、説明があるはずだったがあの状態で放置したから、さて現状でどうなっているか、把握など出来ようはずもない。
「……蒼夜。あの苦労人、何者だ?」
「えー…すみません、一応主だった貴族、文官、武官は把握しておりますが、流石に名前も見た目も不明となると、見当がつかないですよ?」
真面目に答える彼に、イーリスは悩む。他人の容姿を形容することなどないし、…姿を作り出せるほど、覚えてもいない。
「…なら、この館の持ち主は?」
「ああ、辺境伯ですね。女王さまの弟君ですよ。……あれ、そういうことかな?」
何か思い当たったらしい蒼夜が口を開きかけたそこへ、扉を叩く音が割り込んだ。
「──」
意味ありげに自分を見る蒼夜に、イーリスは笑う。あのころも、同じように彼に任せきりだったなと。
「──どうぞ、お入りください」
蒼夜の声で扉が開いたが、入ってきたのは苦労人だけであった。ただし顔色はどす黒く、イーリスがすぐに椅子を勧めてしまったほどの疲労困憊ぶりである。
長々とした詫びの挨拶へ入ろうとした彼の前に、仮面の残骸が放り出される。
「そういうの、いいですから。疲労は本物のようですし、とっと本題に入ってくださいね?」
うわ、と主が怯むことも気にせずに、蒼夜は続けた。
「初代妖皇作の仮面を使ってまで我が主を謀って、何をするおつもりでしたか?」
にっこりと笑って告げる内容は、けっこうな鋭さで放たれた。苦労人とイーリスが呼ぶ彼は、仮面を引き取ってからようやく答える。
「辺境伯を中央に引きずり出すための茶番でした」
「…この館の主ですよね。今は、どうされてます?」
その問いに、苦労人から恨めしげな視線が投げられる。
「死にかけてます。生気を根刮ぎ抜かれて」
「……それは分かるが、どうしてお前は無事なんだ?」
「「どこが無事なんですか、どこが!」」
異口同音のそれにイーリスは怯み、以後、口を挟まないことにした。
「…根刮ぎ、とは?」
「アヴィさまが何かをした、としか。…これ、もしかして壊れてます…?」
「ええ、壊れてますね。復活は不可能だと思いますよ?」
これの複製であれば可能かも知れないのだが、それはどう考えても面倒の元なので告げずに置く。
「…まあ、これはいいでしょう。まだ数はありますし」
げ、とイーリスが呻く。蒼夜も思わず舌を打った。それがつまり、妖魔──それも魔王に見抜けないような術をかけた代物がまだ存在するということで。旅の目的に、初代妖皇を叩きのめす或いは説教する、を加えてしまおうかと考えたくらい、面倒事の予感である。
二人の対話は続いていたが、もうイーリスにそれを聞く気力はなくなっていた。
「……さま……、さい…」
「…にねて…おおも…」
だからその声が聞こえてきたとき、イーリスは静かに目を開けた。寝ていたわけではなくて術の構築をしていたのだが、それは言わずに置く。たぶん二人掛かりで責めてくるだろうと予想がつくからだ。
「…話は終わったのか?」
「ええ、報酬の件も含めて、すべて」
「そうか、悪かったな。…ん、苦労人はどうした?」
声は二人分あった気がするのに、その場に苦労人はいなくなっていた。
「イングヴェアですよ」
え、とイーリスは蒼夜を見る。
「名前を覚えるのが苦手なのは知ってますけど、覚えてあげてください。…彼、女王の直属だそうですけど、普段から苦労人って呼ばれてるんだそうです」
気の毒そうに告げる彼に、イーリスが吹き出した。なかなか名乗らないからついそんなふうに呼んでいたけれど、まさかそれが普段の呼び名だったとは、と。
「急ではありますが、明日、飛空挺を用意するそうです。奉納舞踏の間に出るのがいちばん面倒がないだろうということでした。後、こちらが報酬だそうです」
差し出された小袋は、…どう見ても金貨五十枚程度の量ではない。
「女王からのお詫びだそうです。本来なら画策した自分が出向くところを従者で失礼する分だとか」
「あー…いやあの状態で女王自ら説明に来いとか、言う気はないんだが…」
女王自身からの詫びもあの舞台上でもらっているし、それで十分だと思う。…謁見の手順とか、面倒だろうし。
「ですよねー。でもまあ、旅の資金になりますし、受け取っていいと思いますよ」
そのほかのこと──たとえば画策した理由が「バカ息子もバカ娘もかわいいが、王位を継がせる気はないので、自分の弟である辺境伯に危機感を抱かせてやろう」というもので、すでに何度が実施されており、それがようやく実りそうだという礼もあったらしい。
あれはあれで危ない気がしなくもないイーリスだったが、まあよしとした。
「で、その辺境伯があそこで倒れていた片割れか?」
「だそうですよ。まだ意識が戻ってないので、仮面の相手をさせられた理由はわからないそうですが」
容態としては安定していて、ただ目が覚めないだけということらしい。そこで交渉に出てきた苦労人──イングヴェアはいったい何者なのかということになるのだが。
「たぶん、仮面を壊されてないせいじゃないですかね?」
よくよく話を聞いてみれば、アヴィが壊した仮面を持っていたのが辺境伯ということらしい。
あの仮面は主となる人物を影となる相手に投影する仕組みだとかで、歪みを最小限に押さえるために、周囲に結界を張ってその内側を撮影し、相手の周囲にも結界を張って内側から投影するという、また面倒な手順を踏んでいるそうだ。
つまりは、その撮影用の結界が見境なしの夕闇から彼を守ったといういことだろう。
「…相変わらず、初代の魔法具はややこしい。だが、いつそれを手に入れたんだ? しかも、複数あるようなことをいってなかったか?」
「それなんですけど…あれ、連番振ってあったじゃないですか。最大で二十まで、勝手に増えるそうです」
「……なにそのお手軽奇跡」
ですよねえ、と蒼夜が乾いた笑いをもらす。
複製が得意と言い切るイーリスにしても、それはあくまで目の前にあるものであれば、と条件がつく。むろん、昔見たことがある程度のものを再現することも可能だが、細部は違って来るものだ。もしそんなことが出来る妖魔がいたら、それこそ規格外なのだが…。
「本人が来てる可能性は?」
「大ありですが、検知魔術にはひっかからないようです」
ち、とイーリスが舌を打つ。
「蒼夜。一つ、依頼を受けてくれるか」
「伺いましょう」
「初代と二代目の居所だ。掴み次第、瑠璃を寄越せ」
うわぁ、と蒼夜が苦笑いする。何をしたいのか、その気持ちはわからなくもないが。
「期限なし。という条件で承ります」
ちょっとだけ考えて、蒼夜が答えた。それでいいが了承しつつ、イーリスが付け加えたのは。
「私が生きているうちに寄越せよ?」
「……人間じゃないんですから…放置したりしませんよ」
妖魔の寿命はないに等しい。まあ、つきあいが長いというのは、遠慮がないと同義語のようだ。
第二章 これにて完。
彼らはあくまで巻き込まれた旅人なので、この国の行く末なんか知ったこっちゃないんですよ。
女王様と苦労人くんはけっこうお気に入りなので、希望があるようなら書いてみます。




