2-7 哀れですよ、大義に取り付かれた人間は。それを免罪符に、罪を理解しなくなる
すみません、また間が空きました。
あと、この話のために該当部分を全面改稿します。公開されるころには終わってるはずなので、矛盾してるなーと思われましたら、過去分を読んでやってください。
「……あれ?」
泉を出立し、振り返っても夕暮れの空に溶けて見えなくなっている…それくらいまで、離れたころに、ふとアヴィが足を止めた。
「どうした?」
「や、なんか、服が乾いた気がして」
「……ああ、わたしもです。というか…乾いてるみたいですよ?」
絞ってあったとは言え、日に干したわけではない。まだかなり濡れていたし、下手をすると夜の寒さで冷たくなるかもしれないと、二人は覚悟していたのだが。
「…ああ、泉の魔力が届かなくなったんだろう。あの泉のものは持ち出せないといっただろ?」
「どういう仕組みなんですか、あの泉」
「ありかよそれ」
夕闇の言葉に引っかかりを覚えつつ、しかしその仕組みの有り得なさにアヴィも突っ込まずにはいられない。
実を言えば、”砂が着くこと”が嫌だっただけで、砂を落とす手間が必要ないことを、イーリスは理解していた。逍遙がその辺りは説明しただろうと勝手に考えたのだが…まあ、迂闊だったと悔いるべきだろう。初代が保護し、二代目も追随した妖魔が、そんな懇切丁寧に説明するはずがない。
「知らん。…作ったのは初代だから、術士なら再現できるかもしれんが」
彼らの言う”術士”とは、理屈なしで発言する妖魔術を分析し、他者と全く同じ手順、仕組みを以て再現出来るまでの研究者を指す。
他人の術を分析すること自体は、妖魔であれば可能だ。ただ、その大半は暇つぶしか、或いはその片鱗から新しい術を生み出そうとするだけなので、再現するところまでやろうとはしない。当然それは、妖魔でなければ不可能な業だ。
イーリスは、二代目が同じ仕組みを作ろうと試行錯誤して、結局諦めたことを知っている。自身はそういう術の使い方には興味がなかったから、考えたことすらないというのが実状だと付け加えた。
「二代目に出来たのは、放った術が一定範囲を離れると魔力に分解される結界だったな。妖魔同士で戦争でもするなら重宝したかもしれんが」
「戦争かよ」
「え、でもそれ、自分が放った術が分解されるんですよね?」
「相手の術もだな。まあ、要は遠距離からの術攻撃が不可能になるわけだ」
「ああ……意味ないですね。接近戦は問題ないなんて」
「魔法には無効だったしなぁ」
えーっと、とアヴィは二人を一歩引いた目で交互に見た。この二人、……会話が物騒だ。
しかし、そんな彼を見ても二人は不思議そうに首を傾げるだけで、理由に気づく気配はない。
「…ああ、教えておこうか」
かなり唐突に、イーリスが話題を変えた。まあ深い意味はなく、アヴィが会話についてきていないことに気づいたからと、その程度だが。
「逍遙は身体を持たない妖魔だ。核は、あの地の地下水脈のどこかに隠してるらしいぞ」
「地下水脈に?」
「二代目に聞いただけだから、事実がどうかは知らないがな。『彷徨える泉。…憧れません?』だそうだ」
嘗て聞かされた台詞を再現し、イーリスは苦笑した。
「そもそも砂漠の泉自体が、水脈次第で位置や大きさを変えるものだからな。憧れるも何もないんだが」
「え。…そういうものなんだ」
「砂に埋もれてしまって、失われることもあるそうですよ」
夕闇の言葉を聞いてアヴィは不思議そうに首を傾げ、イーリスは何か…得心がいった、という体で頷いた。
「……妖魔ってさ、核から━━どれくらい離れられるの?」
離れて生きていけるのか、そう聞こうとして、目の前に実例がいることを思い出したアヴィである。
「どれくらいでしょうねぇ…」
「お前は試すなよ。逍遙は魔素吸収型だから無事でいるようなものだ。…普通はほとんど離れられん。まあ、見える範囲がせいぜいだろう」
釘を差すイーリスに、夕闇がにこりと微笑み返す。何やら冷や汗が背中を伝ったような気がしたイーリスだったが、まあせっかく蘇ろうとしているところだし、莫迦な真似はしないだろうと無理矢理放置する。
「魔素吸収型は珍しいですね。……でも水脈に居続ける必要は、ないですよね?」
「際限がない上に、制御も効かないそうだ。周囲の魔素を根刮ぎにし続けるから、普段は核だけの状態で眠っている…と二代目に聞いた。その状態でも安定するように術を作り上げたのは、初代だそうだが」
真偽のほどは定かではないけれど、逍遙を呼び出したときに放出した魔力量を考えると、強ち間違いではないのだろう。消費した割に問題なく動けているのは、やはりアヴィがいるせいだろうかと、ちらりと視線を流す。
夕闇はと言えば考え込んだ様子だったが、ふと顔を上げて問いかける。
「……緩衝地帯で放たれる人の魔法、妖魔の術……何れも効果がないとされていますが…まさか…」
「結界の作用だろうな」
試したことがある、とイーリスが答えた。
「発動しないだけで、魔力を練ることは出来た。たぶん、発動の瞬間に分解されるんだろうな。結界は、それを助けるために張られた…というところだろう。万が一がないように核を水脈に隠して……あの泉、魔力を魔素に還元するように作られたんじゃないか?」
『いつか再び訪れたなら、泉に魔力を流しなさい。泉の主が現れますよ』━━そう、先代が告げたことを、あの泉に行き逢うまで完全に忘れていた。或いは、記憶を封じられたのかもしれないが、何の意味があったのだろう?
(━━先代なら、特に理由はないと言いそうだな)
あってもそう言うだろうし、なかったなら間違いなくその答えだろう。まあ深い理由があるとは思えないが。
「━━え、でも…それ…」
思わず、とアヴィが呟く。二人は立ち止まらず、しかし、アヴィの言葉を待った。
「……砂漠から、永遠に出られないってことだよな……?」
「…永遠にってことは、ないみたいだけどな」
消える間際に預けられた伝言を思い返し、イーリスが答える。
「でも、下手に彷徨くと、生態系壊しますからね……」
土産をくれたくらいだし、まあ、本人も了承の上だろうと、夕闇が付け加えた。
思わぬ反応に、アヴィがきょとんとした顔つきになり、夕闇とイーリスが顔を見合わせて笑う。
「あのね、アヴィ。何とかしたいと思ったら、何とでもなるんですよ」
「簡単な方法だと、随意結界だな。水中でやって見せただろう、私たちに合わせて動く結界だ。あれを応用すればいい」
自分たちの周囲に水が入ってこないようにしただけの簡易なものだが、周囲からの干渉を防いだり、周囲への干渉を防いだりと、かなり自由が利く術であるという。魔妖を閉じこめた水牢もこれだと、イーリスが笑う。
「ま、どうしてここに封じられることを選んだかは、本人に聞くんだな。…その体質も一因だろうが、実際のところはわからん」
ああ、とアヴィが頷いた、その上で、疑問を投げかける。”魔素吸収型”とはなんぞや、と。
「……ん?」
「ああ、そこに引っかかりましたか。そうですね…まずは、”魔素”と”魔力”が違うものだと言うことは、理解していますか?」
「理解というか…違うっぽいな、ってだけ」
甚だ頼りない答えである。だが好ましいと、夕闇は笑う。
「自分が何処まで理解しているか、把握できているからこその発言です。詳しく教えたこともないのですから、問題はありませんよ。…イーリス様、ふくれないでください?」
二人の会話を聞いて、ようやくイーリスの理解が追いついて、しまったとでも言いたげに舌を打つ。騒動に次ぐ騒動の最中で飛び出して来たから、そういえばろくに教えていない。そこを突かれたような気がしたのだ。
「”魔素”はね、生物に宿る魔力の素です。植物にも、動物に…もちろん、人間にも」
「所謂”魔法使い”は、体内の魔素を練り上げることで、何らかの現象や物質を発生させている。……個々の差はあるがな」
波状で知らされるその内容は、アヴィにも不思議とすんなりと飲み込めた。ただ、…今の言い方では、妖魔が含まれないように思えて、夕闇を見る。だが、夕闇は笑うだけで話を続けた。
「これは人間にとって、精気と同義ですね。魔法を使えない存在であっても、生きている限りは魔素をその身体に宿しています。まあ、魔素がなくなったところで死にはしませんが」
「人間で言えば身体を壊すようなものだな。治ればよし、治らなければ…まあ、疲れやすいとか、最悪は寝たきりとか…そんなところだ」
「下手すりゃ死ぬよな、それ!?」
何でもないことのように会話を続ける二人に、アヴィは思わず叫んだ。予想していたのか、どちらもさほど驚いた様子はない。
「魔素がなくなれば、です」
「空気や水、食べ物にも多少は宿るからな。まるきり失う、なんてことは、まず起きないさ」
それが”魔素”だとイーリスが締めた。
「対して魔力は、渾沌そのものだ」
「人の魂は、その身体とつながっているための緒があると言われています。妖魔に魂はなく、核がある。それが渾沌の海から魔力を引き出している。……人間の中では、そう言われていますね」
「……あいにくと、それは魔力生成型にだけ当てはまるんだがな」
「……俺?」
ああ、とイーリスが頷いた。
「魔力生成型の妖魔は、核そのものも渾沌で構成されているのではないかというのが、私の推論だな」
あっさりと答えた彼に、アヴィはつかの間呆けたような顔をして━━苦笑を向けた。
「イーリスって学者なんだ?」
「そんなものじゃないな、ただの物好きだ。……そんなこと、わかったところで何の役にも立たないしな」
「…立たないかな?」
少なくとも、自分は思いつかない。イーリスはそう答えた。
「……そういう研究をしている人間はいましたね」
「……人間?」
ええ、と夕闇が微笑する。なぜ人間がと聞き返そうとして、アヴィはその顔を見た。一瞬硬直し、そこから数歩をイーリスに歩み寄る━━いや、しがみつく。
「……夕闇?」
アヴィの行動を大袈裟だと笑おうとしたイーリスが、これまたその顔を見て、数歩を離れる。アヴィをその背に庇いながら。
「めちゃくちゃ怖いぞ、お前」
「……そうですか?」
当の本人は自覚がないらしいが、それでも頬を抓り、引っ張り、うにうにと顔を揉み解し、にかっと笑って見せた。
アヴィとイーリスが顔を見合わせて、ほっとしたような息を吐く。
「渾沌から魔力を引き出せたら。自在に操れたら。━━人間はそんなことを考えるんですよ。分相応という言葉を誤解して、ね」
それがどういう意味なのか、アヴィには…実はイーリスにも、正確な理解は出来なかった。だが、想像は出来る。考えたのが人間である以上、平穏な結末など有り得るのか、と。
「莫迦とはいいませんけどね。妖魔であっても魔力錬成型なら、同じことを考えますし」
「え? ……なんで?」
イーリスと夕闇、二人を見比べて問いかける。
「私たちのような魔力錬成型は、実は結構不自由な存在なんですよ。現界するだけなら平気なんですけどね」
「━━見ての通り、色々と宝飾品を付けてるが、全部が魔力珠だ。術を使うときは、これを通して渾沌の海から魔力を引き出す。なくても出来なくはないが、まあ…お前が見たとおりだな」
「見たって……あれかよ」
彼に見せられたものは残念ながら数が少ない、その中から状況が当てはまるものなど、…消滅しかけたあの一件しかあり得なかった。
「渾沌の魔力は、桁外れの効果をもたらす。錬成型は、魔力珠を通して引き出すことで、自分の魔力として練り上げる。だから、制御も容易い」
わかりやすく見せるためか、イーリスが指輪を示す。確かに、そこへ魔力が集まると言うよりも、指輪から━━いや、その珠から、魔力が流れ出しているさまが見える気がした。
改めてイーリスを見てみれば、耳飾りや首飾りもつけている。足下からシャラシャラと音がすることから、そちらにも何かあるのだろう。
「けれど、人間には、渾沌は制御できない。魔素を練り上げることには長けても、渾沌の魔力を引き出せない。もし引き出せても…末路は決まっている」
「それでも、…けた外れの魔力を、制御出来もしない魔力を、人間は求めるんですよ。同胞を犠牲にしてまでも、ね」
怒りとも、哀しみともつかない表情で、夕闇が呟いた。イーリスは否定も肯定もせず、ただ目を伏せる。
何も覚えていないはずなのに、とイーリスが内心で呟く。魔力を引き出すために、人体実験を厭わない国がある。その地に嘗て、妖魔が幾人か、捕らわれた。分かっていた者は助け出したけれど、……他にもいた可能性は、低くない。
「哀れですよ、大義に取り付かれた人間は。それを免罪符に、罪を理解しなくなる」
涙をこぼした夕闇のそれが怒りだと、アヴィは気づく。もちろん、イーリスも。そしてイーリスは、それが残滓となってまで生き延びた理由なのだろうと理解する。復讐か、懺悔か━━或いは、後悔か。……それは、わからないけれど。
その涙が砂に落ちて、夕闇は慌てたように二人を見た。
「す…、すみません、わたし……」
いいさ、とイーリスが額をあわせて頷く。そこまでは出来ないアヴィは、額を軽く小突いておいた。
「今は、身体を安定させることに集中しておけ。……アヴィ、出来るだけ近くにいてやってくれるか?」
「ああ、別にかまわないけど」
ほら、とアヴィを呼び、夕闇を押しつける。
ぎゅーっと抱きしめられたアヴィは、目を白黒させたが、取りあえずは倒れたりせずにいた。
「まだ、存在が安定してないんだ。人間も似たようなものだが、身体が弱ってると精神が不安定になるだろう。それに近い」
「あー…なるほど」
聞こえているのかいないのか、アヴィを抱きしめる手は緩まない。そう、まるで子供が母親にしがみつくときのように。
で、とアヴィが唇だけで問いかける。いつまでこうしているべきか、と。
同じようにイーリスも、唇だけで答えた。ひとまず、落ち着くまで頼む。と。
よしよしと、子供にするようにその背を軽く叩く。ふふ、と腕の中から笑い声が聞こえた。
「落ち着いた?」
「…はい。でも、もう少しだけ…いいですか?」
ちらりとイーリスを見て、彼が頷くのが目に入ったので、了承の意味でその背を撫でた。
「怒らないで下さいね?」
どういう意味かと問いかけようとしたアヴィが、言葉を無くす。その首筋に、牙を受けて。
「は……うっ━━っ!?」
快感が背を走り抜けたと気づくと同時に、げぃんと響く音がした。
「場所を弁えろ……!」
拳を握りしめたイーリスが、低く唸る。
場所なの?
時と場合じゃなくて、場所だけなの?
相手はいいの?
アヴィの胸中を駆けめぐる言葉もあったが、とりあえず今の音は、イーリスが見舞った拳骨のようだ。そのおかげか、快感はそれ以上広がらずに消え去った。
「痛いです……」
「アヴィをからかうな、莫迦者」
「う~……」
頷きはしたものの、はいとは言わなかった夕闇に、アヴィは一抹の不安を覚えた。
「悪い、もうしばらくは近くにいてやってくれ。あり得ない時期に実体化しているから、何が起きるか分からないんだ」
「それは別に、かまわないけど……」
ほんの少し、夕闇から離れるアヴィである。しかし、小屋でのあれを思い出してしまい、イーリスからも微妙に距離を取る。ちょっとずつそれぞれに痼りが残っているようだ。
「…でもさ、なんで俺のそばにいたほうがいいの?」
「え? だって、アヴィの魔力をそのまま吸収すればいいんですから、楽ですよ。魔素からの錬成は、今のわたしだと辛いもので」
「本来なら、現界に必要な魔力が溜まった時点で現世に排出されるからな。魔力が足りない状態での錬成は、はっきり言って生死に関わる。私にもそこまでの余裕はない。ましてこの辺りは、魔素もほとんどないからな」
アヴィに告げる予定はないが、自分の髪で核の土台を作ったのも、そのためである。溜め込んだ魔力を核に流し込むことで、最低限の保護としたのだ。
余裕があったせいか、イーリスは尻尾や耳で遊ばれたが、それはもう、思い出さないことにした。本人も意識していないことでもあるし、追求しても意味はないだろうとの判断だ。
「でもまあ、何れはわたしも髪を延ばした方がいいんでしょうね」
「国を出てしまったからな。…まあ、出来る限りは渾沌泉を回るつもりだが」
「渾沌泉て…危なくないのか?」
勇者に聞いた話━━初代が消えかけていたとか、その他の話を思い出し、アヴィが口を挟む。
「泉に潜ったりしなければ、問題はない。渾沌泉の周辺を拠点にする妖魔もいるし、私の屋敷も、元は渾沌泉だしな。……人間は近寄らない方が無難だが」
「? 近寄るのも駄目なのか?」
「下手に親和性があると、存在が変質するからな」
変質…と聞いてもピンとこないアヴィである。というか、…たしか勇者は、渾沌泉の傍らで消えかけている初代妖皇を救出したのではなかったか?
「だから、変質してるだろう?」
「狼と同じですよ、魔物になります」
なるほど、とアヴィは納得せざるを得なかった。しかし、…勇者は魔物だったのか。確かに年齢不詳だとは思ったが……そういえば、イーリスも永く生きているはずだが、何歳くらいなのだろう?
気にはなるが、聞き出すほどでもないかと聞くのは止めておいた。しかし後日、…ほんのちょっとだけ、そのことを後悔することになるのだが…。
「……でも、変質してから人としての意識があるものなのですか?」
物騒なことを、夕闇が問いかける。
「普通はない。あいつが特別というより、初代の守護だろうな。弱いものを見捨てられないお人だったようだし」
「ああ…なんかそんなこと言ってたな」
まさかその中に勇者が含まれるとは思っても見なかったが……確かに、妖皇から見れば人間の少年は”弱いもの”に含まれるだろう。
「……どうなるんでしょうね、消えた自我は」
誰の答えも望んでいない問いかけであることは明白であった。
同時に、誰も正答を持ち合わせていない言葉でもあった。だから、その場に沈黙が降りる。
「━━すみません、イーリス様。わたし…少し、疲れたようです」
「ああ…まあ、当たり前だな。本来なら、動けるはずがない。休むか?」
「はい。…呼ばれれば応えます。実体化出来るかは、そのときに次第ですが」
「それはかまわんさ」
にっこりと笑って、夕闇がアヴィの指輪に触れる。と、そのまま周囲に溶けるかのように姿は消え去った。
「……戻ったの?」
「ああ。…さて、必要もなさそうだし片づけるか」
手にしていた弓を外し、残された荷に括り付ける。それを背負いなおし、イーリスは月の方角を指した。
「もう少し行くと、街壁が見えてくる。その辺りで緩衝地帯を抜ける。…そこからは、離れるなよ。無口なふりをしてると、なおいいな」
「了解」
その人ことで、この先が一筋縄でいくようなところではないだろうと、認識せざるを得なかった。




