第41話 いざ、独立開業へ!!触れる者皆全てを肌(エクストリームキュアスキン)ドリンクでカンパイ!!
城石さんと一緒に3か月後を目途に独立することを決めると、日ごろの業務をこなしながら、独立に向けた準備を進める日々となった。仕事を少し早く切り上げて八王子の物件をいくつか内覧しに行ったり、新事務所に必要な物品を探したり、引越の手配をしたり……
それと、城石さんは、松井さんから事務員としての手ほどきを受けていた。法律事務所の事務員がどこまでの作業を担うかは、その事務所のスタンスによる。ベテラン事務員の中には、依頼者からの聞き取り等に同席し、法律書面を書き上げる猛者までいるところもあるが、おれはそこまでは求めないつもりだ。ただ、おれが苦手な相談者リストの作成とか裁判所提出用の書類の整理とか、ちょっとマメマメした作業、そういう部分は手伝ってほしいと思っている。幸い、城石さんはそういう作業が嫌いではないらしい。
独立開業に向けて、慌ただしくも充実した日々を送っていると、あっという間に引越の前日となった。正に光陰矢の如し……この日は金曜日で、土曜日にこの事務所からの荷物を新しい事務所に送り、土日で室内を色々と整えて、週明け月曜日からは新事務所で稼働できるよう段取りを考えている。廣田総合法律事務所で過ごす日々も、もうすぐ終わりだ。何だか少し感慨深くもある。
廣田先生と松井さんはもう帰っていて、そんな感慨に浸りながら、おれと城石さんは、ふたりで最後の荷造りをしている。
「いや、ここ数か月、結構忙しかったね」
「はい。そうですね。色々と覚えないといけないこともありましたし。今日荷造り終わって、明日荷物を送ったら、いよいよ新しい事務所での執務がスタートしますね」
「そうだね。この事務所から送る荷物と、その後届く新しい机とかが揃ったら一応最低限の物はそろうね」
「はい」
「城石さん、何か疲れてる?」
「ええ、ちょっと」
「実は、こんなのあるんだけど、飲んでみる?」
「え、何ですか?それ?」
「これは、プニョンさんの『触れる者全てを癒す肌』から作られた栄養ドリンクみたいなものらしいよ。飲んだら3日は寝ずに仕事ができるくらい元気になれるって話だった」
「え、そうなんですか?『触れる者全てを癒す肌』から作るって……どうやって?」
「それは企業秘密らしいよ」
「ええ……」
「おれもまだ飲んでないし、1本しかないんだけど、半分にして飲んでみる?」
「ええ……何か怪しい」
「でも、あのプニョンさんの『触れる者全てを癒す肌』から作られているらしいからね。そのすごさは城石さん、体験しているじゃん」
「ええ、まあ、そうですけど……そうですね。飲んでみましょうか」
日本酒のミニボトル程の中の青色の不思議な液体をコップ2杯に分けていれる。見た目だけなら、何となくブルーハワイ系のジュースに見えなくもない。
「ちょっと早いけど、新しい事務所の門出を祝して……カンパイ!」
コツンッ。
「あ、めっちゃおいしい」
「ホントだ。ウマい。何だこれ」
見た目の青さと少し違い、まろやかなメロンの果汁のような甘味となぜか少し柑橘系のような酸味も感じる。何とも不思議な味だ。
「あ、何かすごい体力回復する感じがする」
「すごい。不思議ですね」
「え、あれ?何かすごい!身体が柔らかくなってる??」
「え、先生、ホントだ!そんなに柔らかくなかったですよね?」
試しに立ったまま前屈をしてみると、普段であれば指先がぎりぎり床につくかつかないかくらいなのに、手のひらまでべったり床についた。
「すごいね。さすが『触れる者全てを癒す肌』ドリンクだね」
「確かに!やっぱり異世界の何かは、効果抜群ですね!」
そんな思いがけない『触れる者全てを癒す肌』ドリンクの素晴らしい効能の余韻に浸りつつ、荷造りの仕上げをしようと思っていると……
コンコンコン。
突然玄関がノックされる音が鳴り響いた。
「あ、来客ですかね?」
「あ、城石さん、玄関まで見てきてもらえる?」
「はい。いいですよ」
「お願い」
しばらくすると、城石さんが戻って来た。顔が少々ニヤけている?
「先生、新件相談でした」
「え、ああ、予約もなしに。も、もしかして?」
「はい。もしかして、です。もう相談室の方に案内しています」
「今度はどんな?」
「むふふふふふ」
「え、どしたの?」
「ど、どどどど、ど」
「どど?」
「ドワーフさんだと思います」
「え、ドワーフ?」
「はい。そしてドワーフと言えば、きっと、鍛冶屋さんです」
「え、そうなの?」
どうやら異世界相談者のようだ。ドワーフとは?
なんで鍛冶屋ってわかるの?




