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薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第1章 一人目の相談者 勇者に夫を殺された魔族の未亡人 -勇者に「ソンガイバイショウセイキュウ」できますか?

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第4話 魔族の夫の年収は?

「ええっと、損害の計算の仕方は国によっても結構違うのですが、私の国の考え方でお伝えしてよろしいですか」

「ええ、先生のお考えで構いません」

「でしたら……」


 正直、その計算が正しいのかどうかもわからないが、とりあえず計算式の考え方を伝えてみることにした。いや、きっと、計算したところでもうひとつの問題があって、きっと損害賠償請求は難しいのだが、その話はもう少し後で検討することにしよう。

「損害項目にいくつかありまして、ひとつは加害行為によって、治療費などのお金がかかった場合、その治療等に必要となった実費が損害となります」

「今回、夫はバレル城で亡くなって、治療などはしていません。そういうのはないと思います」


「そうですね。次に考えられる損害の費目に、『逸失利益』というのがありまして、


 【死亡した方の年収】×(1-生活費控除率)×67歳までのライプニッツ係数


という計算式になりますね。逸失利益というのは、簡単に言えば、亡くならなければ生きて稼げていたであろう収入分の損害を受けた、という考え方ですね」

「ああ、なるほど」

「ひとつずつ考えていきますね。まず、亡くなったご主人の年収ですが、どれくらいでしたか」

「『ネンシュウ』っていうのは?」

「ええ!?ええっと、1年でどれくらい収入、稼ぎを得ていたか、ですね」

「そうですね。そういえば確かに、ガロン様からお金ももらっていたような気がしますね」

「どれくらいですか?」

「それが、魔王軍って、手柄を立てたときに褒賞みたいな形でお金をもらっていたので、いついくらもらったのかっていうのがちょっと……」

「確定申告なんて……しないですよね」

「カクテ―シンコク??」

「あ、いえ、忘れてください」

 自営業者であれば、確定申告と言って、年に1回自分の収入を国に申告する制度があって、その申告書の控えを確認すれば年収がわかる、というのが日本の仕組みではあるのだが、そもそも魔王軍とやらにそんな制度はあるわけないよね……


「直近の1年くらいで、だいたいでいいので、いくらくらいもらっていましたか?」

「確か、お金でいえば、1万ギロくらいですかねぇ」

「1万……『ギロ』??」

「はい。魔族の間で流通しているお金ですね。あ、人間たちのお金でいうと、100万ゴルドくらいでしょうか」

「ひ、ひゃくまん……『ゴルド』??」

 何だ、その通貨は……???

 とりあえず1ギロとやらが100ゴルドくらいということはわかったが、それは何円なんだ?いや、基軸通貨のドルで考えたほうがいいのか??

 どっちにしろ、それじゃあ計算できないじゃあないか!いや、そうか。そもそも円やドルで伝えたところで、それじゃあマリンダさんがわからない。それじゃあ意味がないから、そのまんま魔族の通貨の「ギロ」とやらで計算すればいいか。でも、何となくそれが円だといくらくらいなのかも計算してみたいな。


 そういえば、各国にあるハンバーガー店の同じ商品の金額を比べることで通貨の価値を測るという方法があったような気がする。試しに計算してみるか。

「マリンダさん。マリンダさんたちは『ハンバーガー』っていうの、食べたりします?」

「『はんばーがー』??何ですかそれは?」

「ええっと、パンにハンバーグっていうひき肉で作った肉料理を挟んで食べるようなものなのですが」

「ああ、魔族は食べませんが、人間がそんなようなのを食べているみたいですね」

「そのひとつの値段って、いくらかわかりますか?」

「ええっと、20ゴルドくらいだったと思いますよ」

「なるほど、ありがとうございます」

 今ハンバーガーは200円くらいだから、1ゴルドは10円くらいになるか。そう仮定してみよう。そうすると、100万ゴルド、1万ギロの年収は……約1000万円!四天王とやらから地方の一城を任される魔族の年収というのは、大企業勤務のサラリーマンくらいの年収ということか。何となくリアルで、なんとなく計算しやすい数字になった。合っているかどうかわからないけど……


「あ、そういえば……」

「ん?どうしました?」

「人間から略奪した金品は含むのでしょうか。そういったものを含めるともう少しあったかもしれませんが……」

「ええっと、それは……」

 急に難しい論点が出てきた。法的に整理すると「窃盗行為などで得た違法収益は損害賠償請求時の年収に組み入れて計算してよいか」という問題だろう。こんな論点考えたこともない……しかし、刑法上、違法収益は没収されることになっているし、これを認めてしまえば、いわば法が違法収益を保護するような形になってしまう。そんなことは裁判所が認めるとは思えない。きっとここは除外して考えるのが正しいはずだ。

「私見ですが、そこは収入に組み入れないのが正しいと思います」

「そうですか。わかりました」

 いや、しかし待てよ……そもそもそう考えるとガロンからもらっていたという収入はどうなるんだ?そもそも人間から略奪したものを分配していたのなら、違法収益の分配に過ぎないじゃないか。それを年収と考えていいのか?

いや、そこまで考え始めるともうわけがわからないので、とりあえず話を先に進めよう……


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