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薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第7章 四人目の相談者 異世界から来た人間の商人 -ドラゴン同士の事故の「カシツワリアイ」は???

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第36話 異世界法律相談に訪れる方法???

「いやぁ、先生、色々勉強になりましたよ。本当にありがとうございました」

「いえいえ、参考になったなら、よかったです」

「特に『ホケン』の話。面白いですねぇ。いやぁ、そんな仕組みがあるなんて。うちの商材にできるか、ちょっと考えますよ」

「はい」

 日本では、保険の仕事をしようとすれば、必要な資格を取得しなければならないはずだ。でも、そもそも保険という概念がない世界であれば、どうしようと自由なはずだ。異世界保険会社第一号ということになれば、本当に儲かるんじゃないか?それこそ念願の飛竜が買えるほどに……

 そうなったら、顧問弁護士にでもしてもらえるだろうか。そうなれば、事務所経営は安定しそうな気もするが……


「それじゃあ先生、ここら辺で失礼しますね」

「はい。私からも少しうかがってよろしいでしょうか」

「え、ああ、いいですよ」

「うちの事務所のことは、その、スライムから教えてもらったという話でしたね」

「ええ、そうですよ。プニョンっていうスライムでした」

 ああ、やっぱり。ここで初めて名前を確認した。プニョンさんがおれのことを紹介してくれていたんだ。

「ああ、プニョンさん。あの方もうちにいらっしゃってくれたことがあったんですよ」

「そうそう。それで、さっきの事故のことで悩んでいたら、『ホーリツジムショに行って、先生に相談するといいぷにゅ』って言って紹介されたんです」

「そうでしたか。それで、その……うちの事務所に来るときは、どうやって?」

「え、ああ、そうですね。プニョンに案内されて行くと、『ホーリツジムショ』って書いてある建物がありまして、そこに入りました」

「そうなんですか!?」

 何だそれは?そんなの、もちろん何の心当たりもない。そもそも異世界にどうやって法律事務所を構えたんだ?誰が、何のために?そして、どうしてそこからうちに繋がるんだ?

「で、その中に入ったら、3つの約束事が書いてあったんです」

「3つのお約束?」


「はい。一つ目は、相談を受けてくれる人がいるので、その人のことは『先生』と呼んで、敬意を払うこと、でしたね」

「え、ああ、そんなことが」

 それで皆さんおれのことを「先生」と呼ぶのか。確かに、謎のひとつが解明された。

「はい。次は確か『相談を聞いてもらったら、しっかり感謝し、御礼をすること』ですね」

「ああ」

「はい。その御礼というのは、もちろん言葉でもそうなのですが、御礼の品まで贈る方がいい、ってプニョンが言っていました。ですので、私も後日、何か贈らせて頂きますよ」

「そ、そうなんですか。ありがとうございます」

 なるほど、それで木箱に入った御礼が毎回届くのか。

「3つ目は、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないこと、でしたね」

「ああ……」

 何か聞き覚えのあるフレーズだ。ちょうど、裁判所で証人尋問が執り行われる際、嘘はつかないと宣誓する文言とほぼ一緒じゃないか。


「それで、その3つの約束を守るという誓約書に署名するんです。そして、その誓約書を読み上げると、いつの間にかこの扉の前に来ていました」

「そういう仕組みなんですか」

「そうですね。先生はご存知なかったのですか?」

「はい。皆さんどうやってうちにいらっしゃるのかが、謎でして……」

「え!そうなんですか!?てっきり先生がそういったルールを作っているのかと」

「あ、いや、私はそこ、何も知らないんですよ」

「そうなんですか。確かに、私の暮らしている世界と、先生の世界、だいぶ違うみたいですもんね。『ホケン』とか『クルマ』とか『シンゴーキ』とか、知らないことばっかりでした」

「はい。でも、そちらの世界から人間の方がいらっしゃったのは、初めてでしたので、私も色々知れてよかったです」

「そうですね。同じ人間同士ですので、今後ともよろしくお願い致します」

「はい。こちらこそ」

 「今後ともよろしくお願いします」ということであれば、異世界第一号保険会社の顧問弁護士、もしかしたらあるのか……?いや、変な妄想と期待はやめておこう。保険の仕組みを実際にゼロから作るなんてことになったら、相当大変だし時間もかかるはずだ。

「それじゃあ、私はそろそろ失礼しますね」

「あ、帰るときは、どうやって帰るんですか?みなさん不思議な帰り方をされるもので……」

「ああ、それも、最初に書いてありましたよ」

「ええ」

「『帰り方は自由』って」

「へ?」

 自由って、なんだそれは!?

 そんなんで帰れるのか!??


「あ、つまり、何か、帰ろうと思って何かすれば、帰れるっていうことじゃないかと」

「え、そ、そんなので帰れるんですか?」

「あ、はい。では、私の場合、『これをすれば帰れる』というのを決めておりまして」

「え、ええ?」

「これを使うんです」

「こ、これは???」

 見覚えのあるゼリー状の手のひらサイズの物体をノモイさんが手にしている。

「はい。さっきお伝えした、スライムと一緒に開発した新商品ですね」

「え、ええ」

 やはり「触れる者全てを癒す(エクストリームキュア)肌(スキン)」のようだ。

「『これを顔に貼り付けたら帰れる』って念じてきましたので、たぶんこれで大丈夫じゃないかと」

「え、そ、そうなんですか???」

「はい。それじゃあ、やってみますね」

「はい」

「先生、本当にお世話になりました」

 そう言いながら、ノモイさんは、「触れる者全てを癒す(エクストリームキュア)肌(スキン)」を顔に貼り付けた。すると、ノモイさんの身体は、全身が水のようになって、その水が一瞬にして蒸発するようになって、消えていった。


「あ、え、ほ、本当に……」

 どうやら、帰り方というのは、自分で決めて、その通りの行動をしつつ念じれば帰れるらしい。異世界からの相談者とはいえ、同じ人間だったので、色々教えてもらうことができた。

 しかし、その仕組みを整えて、どうやってうちの事務所と異世界を繋いでいるんだ……そして、そんなことをしているのは一体……誰なんだ?

 少しの謎が解明されると、さらなる謎が深まるのだった。


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