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薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第7章 四人目の相談者 異世界から来た人間の商人 -ドラゴン同士の事故の「カシツワリアイ」は???

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34/47

第34話 ドラゴン同士の事故の「カシツワリアイ」は???①

「そうですね。『過失割合』というのは、こういう事故のときによく使われる考え方なんです。事故っていうのは、もちろん100%どちらかが悪いという場合もあります。でも、双方に不注意があって事故が起きたという場合には、『どちらがどれくらい悪かったのか』を割合で考えるんです。例えば、40%くらいはこちらも悪いことがあったでしょ、ということになれば、その分、つまり40%分、被ってしまった損害から割り引いてお金を支払わせたらいいんじゃないか、という考え方です。ですので、今回の事故でも、100%全ての責任をロベールさんに負わせなくてもいいんじゃないか、というのが、私たちの国の考え方ですね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【参考条文:民法】

(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

第722条2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ええ!でも、ロベールくんには、何も損がないんですよ」

「はい。その、損しているかどうか、というのは、この『過失割合』の考え方とはちょっと違う部分ですね。もしロベールさんにも何か損が起きていれば、ロベールさんの損からもその過失割合分差し引かれた責任を負わせる、という考え方になります。たまたま今回は、それがなかったということになりますね」

「なるほど」

「ロベールさんも『お互い様』って言っていたみたいですけど、そのことについては?」

「いや、確かに、ロベールくんが言いたいこともわからないではないんですけどね。でも、なにも損していないのに、ぼくだけ損するっていうのが、ちょっとなぁと思って」

「そうですね。確かに、不幸にして起きてしまった事故で、誰も損なんてしたくない。それはロベールさんも一緒じゃないかと思うんですよ。だから、その『お互い様』みたいな考え方を、損害賠償請求、つまり、お金で責任を取れ!っていうときにも反映させる、そんな考え方が『過失割合』ですね」

「なるほど」


「そこまでお分かりいただけると、次は、じゃあ今回の事故の『過失割合』はどれくらいか、つまり、ロベールさんに負わせるべき責任の割合はどれくらいか、というところを考えてみましょう」

「はい」

「事故があった場所なんですけど、どういった場所でしたか」

「ええっと、うちのまちから隣町に行く途中にある、道が交わって×印みたいになっているところがあるんですよ。そこですね」

「ああ、なるほど、交差点ですね。ロベールさんのドラゴンとぶつかってしまったのは、その交差点の中ですか」

「はい。ちょうど道と道が交わるところですね」

「(たぶんないと思うけど)この交差点には、信号機なんて、ありましたか?」

「『シンゴーキ』?なんですか、それは?」

「ええっと、信号機というのは、赤色、黄色、青色と色分けがあって、その色で今は進んでいいよ、とか、今は止まれとか、教えてくれる機械なのですが」

「そんなのは、見たこともないですね。面白いですね」

 そうだよね。たぶん、信号機なんて、モータリゼーションを経て、これだけ車が量産されて当たり前にみんなが使うようになってから登場したもののはずだ。おそらく交通手段が「馬車」の時代は、そんなものはなかったに違いない。ノモイさんの世界には、おそらく機械の車というのもないし、ドラゴンというのもそんなにたくさん走り回っているわけではないから、そんな世界でドラゴン同士がぶつかってしまうという事故自体、きっと珍しい出来事なのだろう。

 

 さて、事故の現場は「信号機の設置されていない交差点」ということでよさそうだ。

「道の広さ、道の幅はだいたいどれくらいですか」

「ええっと、だいたい5から6メルテくらいでしょうか」

「5から6……『メルテ』?」

「はい。この部屋でいうと、ここから、そこくらいでしょうか」

 ノモイさんが指で指し示す相談部屋の位置からだいたい目算すると、おおよそ4メートルといったところだろうか。4メートルが5から6メルテ……お金もそうだったけど、いちいち単位が違うのが異世界相談の難しいところだ。

「だいたいわかりました。その、相手のロベールさんが通って来たという道の幅も同じくらいですか?」

「いえ、たぶんロベールくんの方の道の方が狭いと思います。だいたい、3メルテくらいでしょうか」

 なるほど、道の幅はロベールさん側が半分くらいということか。


「お互いのドラゴンのスピードはどうでしたか」

「うちのドモンちゃんは、ちょっと駆け足くらいでしたね。ロベールくんのドラゴンは、結構速かったですよ。若いですからね。若いドラゴンっていうのは、血気盛んですから」

「ちょっと減速したりしましたか」

「うちのドモンちゃんは、ロベールくんのドラゴンが走って来るのを見て、ちょっと速度を落としたと思います。ドモンちゃんは、ベテランですから、賢いんですよ」

「ロベールさんのドラゴンは?」

「あまり減速しているようには見えませんでしたね」

「そうなんですね」

 そこまで確認したところで、弁護士必携「赤い本」を相談室の書棚から取り出す。マリンダさんの相談の時にも使った。いや、あの時は使おうとしたけど、就労可能年数383年に対応するライプニッツ係数が載っていなかったか……でも、今回「過失割合」を考えるにあたっては、どうも使えそうだ。


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