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薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第7章 四人目の相談者 異世界から来た人間の商人 -ドラゴン同士の事故の「カシツワリアイ」は???

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第32話 異世界商人のノモイさん

「なるほど。ドラゴン同士の事故、ということは、まさか空中での事故ですか?」

「先生……」

「はい」

「何を言っているんですか?」

「へ?」


 え、ドラゴンというからには、飛ぶんじゃないのか?飛行中の事故ということではないのだろうか。

「飛竜タイプのドラゴンなんて、いくらすると思っているんですか。ぼくは庶民なんで、もちろん陸上タイプですよ」

「あ、そ、そうなんですね。失礼しました」

 ああ、そういうことなのか。ノモイさんの世界の陸上タイプドラゴンがこちらの世界の車なのだとすると、飛竜、つまり空を飛ぶドラゴンは「自家用ヘリコプター」とか「自家用ジェット」みたいなもんか。確かにそんなのは、超一流アスリートとか、超金持ちが持っているイメージだ。自家用ヘリコプターの安いのでさえ、5000万円以上はかかると聞いたことがある。それに、維持費も一般の車のそれと比べたら破格だろう。あ、でもドラゴンの場合、餌はもしかしたら一緒か?維持費は、あんまり変わらないのか?


「いや、ぼくも商売で成功して、いつかは飛竜タイプのドラゴンを手に入れたいですけどね」

「あ、ノモイさんは、何か御商売をされているんですか」

 そういえば、最初に「商人」と名乗っていたな。どんな商売をしているのだろうか。

「はい。商人として色々な商品を扱っていますよ。まだまだ小さなお店ですが、最近ちょっと『面白い商材』が手に入りましてね。これは結構売れるような気がするんですよ。商人の『カン』ってやつですかね」

「そうなんですか。ちなみに、どんな商材ですか」

「そうですね。絶対に他には言わないで下さいよ」

「ええ。私、職務上「守秘義務」を負っていますので。誰にも言いませんよ」

「先生は、お肌の悩みとか、ありますか?」

「え、お肌ですか?いや、今は、あんまりないかなぁ」

 ついさっき、プニョンさんから届いた「触れる者全てを癒す(エクストリームキュア)肌(スキン)」の顔パックを使って、今、肌は絶好調だ。いや、それはたまたまなんだけど……10代の頃はニキビなんかで年相応にそれなりに悩んでいたこともあるけれど、30代にもなってくると、むしろニキビはあまりできなくなってきて、顔の油分も減ってきている気がする。正直、そういうところであまり悩まなくなったのも、年を感じる部分だ。今は、あまりお肌のことで悩んではいないかな。

「そうですね。男性だとお肌の悩みなんて、あんまりないと思いますが、やっぱり女性はお肌の悩み、年齢に関わりなくあると思うんですよ」

「ああ、女性は確かにそうでしょうね」

 それはそうだろう。先日もインターン生の城石さんが司法試験受験で溜まったストレスなどで肌荒れがひどいと悩んでいた。

「そういうお肌の悩みを一発で解消できるものがあるってなったら、それってすごい売れると思いませんか?」

「え、ええ、まあ……」

 ええっと、それってもしかして……

「1000年に一度生まれるかどうかというスライム族の中でも極めて珍しい「触れる者全てを癒す(エクストリームキュア)肌(スキン)」ってのを持ったスライムと出会ったんですよ」

「そ、そうなんですか」

「そして、そのスライムと一緒に、そのスライムから薄皮を切り出して作った顔に貼り付けるパックのようなものを開発したんです!」


 やっぱりぃぃぃいいいいいい!!!


 話の流れからして、もしかしてそうかもしれないと何となく予感はしていたが、やっぱりそういうことなのか!1000年に一度生まれるかどうかのスライム族なんてのがそんなにたくさん、というか、プニョンさん以外にいるはずがないから、ノモイさんの言うスライムは間違いなくプニョンさんのことだろう。そして、プニョンさんの手紙の中に書いてあった商人というのが、ノモイさんのことだったってことだ!

 いや、待てよ、ということは……さっきおれが顔に貼り付けたのは、プニョンさんから切り出した薄皮ってことか……

 すごく気もち良かったし、効果は抜群だったんだけど、何かやだな……

 でも、そんな薄皮切り出しまくっていたら、プニョンさん、大丈夫なのか?


「そ、そんなに薄皮っていうのを切り出して、そのスライムさんは大丈夫なんでしょうか」

「あ、はい。『薄皮』なので、別にそれを切り出したから痛いとか、そういうのはないらしいです。そして、その薄皮は1日寝ればすぐ元に戻るらしいんですよ!一日に作れるのは、だいたい4~5枚くらいですね」

「そ、そうですか。ちなみに、それ1枚をいくらくらいで売るんですか?」

「実は新開発なんで、まだ本格的に値段は決めていないのですが、あれだけの効果があるものです。きっとそれなりの金額でも売れるはずと、ぼくは見てます。だいたい1枚あたり5000ゴルドくらいでしょうかね」

「ご、5000ゴルド???1枚でですか??」

 ええっと、確か、マリンダさんのとき試算したハンバーガ―理論によると、あちらの世界で、ハンバーガーみたいなものはだいたい20ゴルドで売られているとのことだった。こちらの世界でだいたい200円と考えると、1ゴルドは10円くらいという試算だったはずだ。ということは、あのプニョンさんの薄皮を切り出して作ったというパックは、1枚あたり……5万円!?

「はい。お肌に悩む貴族のお金持ちなんかからすれば、きっといくらでもほしいんじゃないかと思いますよ」

「な、なるほど……」


 どこの世界でも、商売をするには「どこで誰に何を売るのか」が大事ということか。確かに、1000年に一度しか生まれないスライムというだけで希少性は高い。その希少性の高い、他に類をみない商材だからこそ、変に安売りせず、お金持ちに高付加価値で高額で売る、ということか。ノモイさん、確かに商売上手みたいだな。でも、プニョンさんの薄皮と思うと……ちょっと気持ち悪いけど……そこは売るときは伏せておけば問題ないのか?確か化粧品は、薬機法で成分表示がある程度義務付けられていた気がするけど……異世界ではそんな法律はないのか???


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【参考条文;薬機法(正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)】

(直接の容器等の記載事項)

第61条 化粧品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。

一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所

二 名称

三 製造番号又は製造記号

四 厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品にあつては、その成分の名称

五 厚生労働大臣の指定する化粧品にあつては、その使用の期限

六 第42条第2項の規定によりその基準が定められた化粧品にあつては、その基準において直接の容器又は直接の被包に記載するように定められた事項

七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 それに、さっきのパック、確か10枚入っていたよな。ということは、あれだけで約50万円分ということか!すごい高価な御礼だったんだな。エルフのオーランさんの「金」に比べて安くて残念に思ってしまったこと、ますます反省しないといけないな……

 いや、でも、金に比べると……

 いや、もう……そろそろこれで悩むのをやめよう……


「それと、先生のことを紹介してくれたの、そのスライムなんですよ」

「そういうことですか!」

「はい。ぼくがドラゴンの事故に遭ってしまって、困っていると『先生のところに相談にいくといいぷにゅ』って言ってくれたんです」

 その語尾……やっぱり、プニョンさんで間違いなさそうだ。

あっちの世界で、おれのこと広めてくれているのか。


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