第31話 異世界から来た……人間???
「とりあえず使ってみるか……」
どうやら顔パックらしきものは10枚程度入っているようだ。青いゼリー状で、少々ヌメヌメしている。見た感じは少々気持ち悪い。
1枚を広げて、メガネを外し、顔に貼り付けてみる。
「ぬ、お、ああ、ああぁぁ……」
な、なんという心地よさ!
そうだった!最初のプニョンさんに触った時と同じ!ちょっとヒンヤリしていて、得も言われぬ気持ちよさだった。それを顔に当てると、手で触った時と比べようがない程の心地よさ!
あ、思い返せば、城石さんも「触れる者全てを癒す《エクストリームキュア》肌」を体験して、司法試験で傷つき、疲れ果て、荒れ果てた(そこまでは言ってなかったか……?)肌が回復したと言って、喜んでいたではないか!
思わず、自分の肌を触ってみる。
「!!!」
何という艶やかな肌!こんな肌感になったのは、いつ以来だ?記憶にないぞ!
す、すごい顔パックだ!!!
でも
でも、
でも……
先ほど金庫に入れたアレに比べると……
顔の素肌のサッパリ感、ツヤツヤ感に反して、なぜか心は罪悪感に近いザラザラした気もちに苛まれるのだった……
コンコンコン
顔がサッパリツヤツヤになったところで、何か音がする。事務所の玄関の方からだ。また来客だろうか。
「ごめんくださーい。どなたかいらっしゃいますかぁ?」
玄関の方から声もする。間違いなく誰か来ている。
そして、このパターンはもしや……
法律事務所というのは、あまり飛び込みでいきなりお客さんがやってくることは多くない。弁護士自身、裁判所に行ったり、外出することも多く、基本は電話等での連絡があって、日程を合わせて予約をしてもらい、その日、その時間に来ていただいて、相談や打ち合わせをする、というのが通常の流れだ。
何の予約もなくいきなりの来訪、そして、事務所におれひとりだけ……今までの異世界からの来訪者は、このパターンが多かった。今回も正にこのパターンに当てはまる。
玄関の方に向かってみる。
今度は、どんな人、いや、人ですらない人が来ていることも考えられる。
「あ、先生ですか?」
「はい。ご予約等はされていますか?」
「いえ、予約はしていないのですが、ここに来たら相談が受けられると聞きまして」
「はい。法律相談ご希望ということですね。では、こちらにどうぞ」
突然来訪したその人を相談部屋に案内する。
うん。間違いなく……普通の人のように見える。
今までの異世界からの来訪者のようなツノとか、長い耳とかはない。ましてスライムとか、人間ではない何かということでもなさそうだ。
「私、弁護士の薗木真人といいます。今日はよろしくお願い致します」
「はい。私はノモイといいます。よろしくお願いします」
「ノモイ」さんというのか。あまり聞きなじみのない名前だが、漢字で書くと「野茂井」だろうか。改めて相談部屋でノモイさんを観察してみると、年齢は40代くらいか。やはり、パッと見た限りでは、異世界から来た事がうかがい知れる何かしらの「特徴」はなさそうだ。これは、普通に飛び込み相談が入ったのか?それはそれで珍しいことではあるのだけれど……
いや、もしかしたら人間に何者かが変装しているパターンもあり得るか?
もう、ストレートに質問してみるか。
「つかぬことをおうかがいしますが……ノモイさんは、人間……ですよね」
「え、どうしてですか?」
「あ、いや、このところうちの事務所、人間のような人間じゃない方もいらっしゃることがありまして……」
しまった、やっぱり尋ね方があまりにも変か。普通の人だったら、「あなたは人間ですか?」なんて尋ねられたら驚くし、失礼な質問になってしまう。
「ああ、そういうことですか」
え、それで納得できるの?
「私は間違いなく人間ですので、その点はご安心下さい」
「あ、そうでしたか。大変失礼な質問をしました。申し訳ありません」
「いえいえ、今時は、色んな種族がいますからね」
「そ、そうですよね」
色んな種族……そうなのか?
「すみません。本題に入りますね。今日はどういったご相談ですか」
「はい。実は、事故があったんです」
「あ、事故ですね。交通事故でしょうか」
「コーツ―ジコ?ええっと、うちのドラゴンがぶつけられたんです」
「ん?ドラゴン?車の名前、ですか?」
「え、クルマ?いや、うちは商人をしているんですけど、配達とか荷物の運搬にドラゴンを使うんですよ。そのドラゴンが別のドラゴンにぶつけられて、商品がぐちゃぐちゃになっちゃったんですよ」
「ああ、そういう……」
なるほど。そうきたか……
今回は、異世界から来た「人間のノモイさん」のご相談、ということのようだ。




