↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第6章 廣田総合法律事務所の日常③

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/47

第30話 金と謎の顔パック???

 インターン生の城石さんがいなくなり、廣田総合法律事務所は、いつも通り、廣田先生と事務員の松井さんとおれの3人の日常を取り戻した。廣田先生から独立開業を促されているということもあり、おれには行ってみたいところがあった。そう。貴金属買取店だ。オーランさんから相談の、『結婚を長続きさせる秘宝』の御礼ということで贈られた「金」らしきものが本当にホンモノなのかを確かめるためだ。

 「金」の買取査定なんて、人生で初めてだ。そりゃそうか。

 現物の「金」なんて、普通手に入るものではない。


「……刻印がありませんね」

「やっぱり、まずいですか?」

「いえ。刻印がないから金ではない、ということではありません。ただ、どこの精錬業者が製造したものか分かりませんので、少し調べさせてください」

 店員さんも、少々珍しいようで困惑している。店の奥の方に行って、何やら色々な検査らしきことをしている。やっぱりダメか……?

 しばらくして、店員さんが戻って来た。

「ど、どうですか?」

「お客さん、これ、どこで手に入れたんですか?」

「ええっと、知人から頂いたものでして、入手経路はよくわかりませんね」

「え、これ、もらったんですか?」

「はい」

「いや、ほぼ間違いなくホンモノですよ。ホンモノ。そして、173グラムなので、現在の金相場だと買取価格は、1グラム2万2621円だから……」

 店員さんが電卓をはじく。

「391万3433円!になりますね」

「うおお!」

 マジか……先日事務所で暫定計算した時よりも高額になっているじゃないか。

 金相場は今上り調子なのか?

 これは独立開業資金になりそうだぞ。急に、独立開業が現実味を帯びてくる。

 いや、しかし、今相場が上り調子なら、もうちょっと待った方がいいのか?

 急に変な欲も出てくる。


「ただ……変なんですよね」

「え、何がです?」

 店員さんが首をかしげている。

 やっぱり偽物の可能性があるのか?

 弁護士が偽物の金を握らされて気持ちがはしゃいでいたとなると、ちょっと恥ずかしい。

「これだけ純度が高い金なら、普通は精錬した業者なりブランドなり、何らかの刻印があるんです。でも、これは何もない。なんでですかね?」

「いや、それは、私も頂いたものなので……」

 そりゃそうだよね。異世界産だからね!

 というのはもちろん胸の内に閉まっておいた。

「どうします?今日もう売る手続きしますか?」

「あ、いえ、それはまた後日で……ちょっと考えさせてください」

 ホンモノの金だとわかると、急に怖くなる。

 だ、誰かに見られたりしていないだろうか。お、襲われたら大変だ!

 いつも以上、いや、人生で初めてくらい周囲に警戒をしながら……

 事務所への帰り道が随分と長く感じられるのだった。


「ふう。帰り着いたぁ」

「おや、おかえりなさい。薗木くん。ぼくはもう帰るからね。もう松井さんも帰っちゃったから」

「あ、はい。お疲れ様でした」

「何を焦った顔しているの?」

「え、いや、ちょっとですね。ははははは」

「ふぅん」

 大金を懐に忍ばせていると、無駄に警戒心が強くなる。

「それじゃあ、最後、戸締りよろしくね」

「はい。わかりました」


 廣田先生が帰宅すると、事務所にひとりということになった。それはそれで急にまた怖くなる。「コレ」は、ひとまず事務所の金庫に保管することにした。

 自分の執務室に戻ると、机の上に木箱が置かれていた。

「あ、これは……」

 この「木箱」のパターンはもう何度か経験している。きっと異世界の相談者からの御礼が届いているんだ。最後に相談を受けたのは、スライムのプニョンさんだった。プニョンさんから、何かが届いたに違いない。オーランさんからの御礼が「大金」だったと知った後なので、「もしや?」というものすごい期待感に胸が膨らむ。今回の木箱の大きさも、オーランさんたちから届いたものとだいたい同じくらいのサイズ感だ。こ、これは期待していいんじゃないか??


 例によって、工具で打ちつけられた釘を取り外す。期待感から急ぎたくなる気もちを抑えつつ、開いてみると、そこには、不思議な青いゼリー状の手のひらサイズの「何か」が入っていた。

「な、なんだこれ??」

 ひらりと紙が1枚落ちる。プニョンさんからの手紙か?


「べんごし そのさ まきと へ

 

 こないだは、ぼくは、そうだんをきいてくれて、おりがとう。

 せんせーに、いわわたとおり、ぼくは、まおーぐんにはもどりませでした。

 まおーぐんにもどらないでいると、ゆーしゃが、ぼくはいいやつだ、と、にんげんたちにおしえてました。

 ぼくは、にんげんたちと、けこうなかよくなりました。

 それで、あるにんげんと、しょーばいというのお、はじめました。

 ぼくのえくすとりーむきあすきんが、すごいというのです。

 これをうれば、もーかるらしです。

 こないだのおれいにあげます。

 もらってください。

かおにはっつけてつかいす。                        」


 何だか、幼稚園生が書いたみたいな文字だな……誤字脱字も多いし。

 プニョンさん、そういえば声も妙に可愛らしかったし、人間で言えば幼稚園生くらいだったのか?そうだとすると、そもそも中学校を卒業する年齢までの児童を働かせるのは原則禁止(労働基準法56条1項)だから、魔王軍で働かせていたこと自体が法律上問題じゃないか?まあ、日本であれば、だけど……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【参考条文:労働基準法】

第56条 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 内容からすると、要するに、魔王軍に戻らず、勇者にあっせんしてもらって、人間たちと仲良くなった。そして、商売人の誰かと一緒になって、「触れる者全てを癒す(エクストリームキュア)肌(スキン)」から何かしら顔に貼り付ける物を商品化することに成功し、商売を始めた。そういうことか。

「プニョンさん、『解雇』からの新たな一歩を踏み出したんだな」

 そう思うと、少し感慨深い。

 

 改めてゼリー状の何かを見てみる。化粧品でよくある顔パックに似ている。

 うーん……

 いや……

 そう思ってはいけないというのは道徳観的に、理性ではわかっている……

 もちろんわかってはいるのだけれど……


「金に比べたら……」


 期待感が大きかった分だろうか……

 何となくがっかり感が半端ない……

 御厚意で頂いたものの価値を比べるなんて、もっての他だ。

 そんなことはわかっているのだが……

 うーん。おれは、いけない人間だ……


 いや、待てよ……

 この顔パック、実はものすごいのかもしれない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。