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薗木異世界総合法律事務所  作者: 園木まさ
第4章 廣田総合法律事務所の日常②

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第18話 異世界法律相談は儲からない??

「うーん。なかなかオーランさんの後は異世界相談来ないですねぇ」


 今日は午後から、共同受任しているある労働事件の打合せがあり、廣田総合法律事務所の近くにあるとある法律事務所に出向いていた。今はその帰り道だ。時刻はもう夕方の4時を回っている。廣田先生のインターン生の城石さんは、凄腕エルフオーランさんの離婚相談以降、すっかりおれの仕事に付いてくることが多くなった。そもそも、廣田先生からも「薗木くんの仕事を見るように」と勧められていたらしいのだが、どうも「異世界相談」がお目当てのように感じられる。

 最近は廣田先生から「今日、ぼくの仕事見てみる?」なんてせっかく声かけてもらっていたのに、「いえ、今日も薗木先生に付いていきます」と言って、わざわざ断っておれに付いてきている。「薗木くん、モテモテだねぇ」なんて廣田先生からはいじられている。でも、廣田先生の方が、実はちょっとしょんぼり寂しがっているのかもしれない。


「異世界かどうかに関わりなく、相談者っていうのは自分で選べるわけじゃないからね。どんな人がどんな相談に来るかは、こちらから希望できるもんじゃないし、こればっかりはご縁だからね」

「そうですよね。それはわかります。でも、私のインターン期間中にもう1件くらい、異世界相談来るかなぁ」

「それはわからないね」


 城石さんのインターン期間は3週間らしい。つまり、今週いっぱいで終わるということのようだ。今日は水曜日なので、今日を抜かせば、あと2日しかない。その間にまた「異世界」からの相談者は現れるだろうか。いや、そもそもこれまで来てくれた不思議なふたり、マリンダさんとオーランさんが本当に異世界から来た人たちであるということについて確実な物証等はないわけだけれど……

「そういえば、今更ですけど、先生、異世界相談の時って、相談料もらってないんですか?」

「え、どうして?」

「だって、これまで他の『普通の』相談者の法律相談対応のときは、だいたい30分5000円と消費税金額、いただいているじゃないですか。収入が少ない人の相談のときは法テラス相談対応でしたけれど」

「うん」


 「法テラス」というのは、「日本司法支援センター」の通称だ。国によって平成18年ころに設立された機関で、収入や保有資産が一定水準を下回る人たちも司法サービスが受けられる仕組みが整えられている。弁護士目線で見れば、収入基準等を満たす相談者の相談を受けた場合、相談料が法テラスから支払われ、相談者からは直接頂かないということになる。相談者からすれば、実質無料相談を受けられるというわけだ。同じ相談は3回までという回数制限はあるが、色々な人にとって、便利な仕組みである。実際に何かしらの案件を法テラスの仕組みを利用して依頼された場合、法テラスから弁護士に費用が支払われ、依頼者は法テラスに毎月一定額を償還していくこととなる。


「異世界相談は、無料でいいんですか?」

「そうだねぇ……」

 そうか。城石さんは、マリンダさんの相談には同席していなかったから、「ギロ」とか「ゴルド」とかいう謎の通貨のことを知らないのか。

「相談料、いくらって、請求する?」

「え、うんと、あ、そうか、もしかして」

「そう。『30分5000円です』って言って、『円』でお金持っていると思う?」

「いや、何か、持っていらっしゃらない気がしますね」

「そうでしょ。だから……言えないよね」

「確かに……でも、そう考えると、先生、『異世界相談』の方がいらしても、全然儲からないですね」

「うん。確かに、この仕事をしていると「採算度外視」で動かないといけないこともあるといえばあるんだけどね」

「『社会的意義』、みたいなことですか?」

「うん、まあ、そうだね。でも、若手弁護士としては、経営的なところや経済的なところも考えないといけないというのが現実的な話ではあるね」

「うーん、そうですよね。そう考えると、『異世界法律相談』は、先生的にはあんまり歓迎しない感じですかね?」

「うーん。どうかなぁ」

 確かに、マリンダさんとオーランさんの法律相談は、不思議な経験だった。経験値を積むという意味では、ありな気がしている。しかし、経営的なところで考えると、確かにあまり儲からない……いや、「儲けようがない」ってところか……


「あ、でも、そういえば……」

「え?」

「実は全く何ももらっていないわけじゃないんだった」

「え、そうなんですか?」

「うん。オーランさんの前の魔族の方の相談があったんだけど、その方から後日、御礼ということで林檎みたいな果物が届いたんだよ」

「あ、それって、事務所の冷蔵庫に入っていたやつですか?」

「あ、うん。そうそう」

「なんか不思議な色の林檎でしたよね。赤は赤なんだけど、今まで見たことのない鮮やかな赤というか」

「何か、血の色みたいな、ね……食べていいもんかどうか検証しようもないから、ずっと冷蔵庫に入れっぱなしだった……」

「あ、そういえば、廣田先生が……」

「え、先生がどうかしたの?」

「ずっと冷蔵庫に入っていて誰も食べないし、もったいないから、『ぼくが食べちゃおっかなぁ』って、言っていたような……」

「うん?えええ!!??」


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